歴史書

使徒言行録

ΠΡΑΞΕΙΣ ΑΠΟΣΤΟΛΩΝ

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第1章

1:1テオフィロさま、私は前の書で、イエスが行い始め、また教え始められたことをすべて記しました。

1:2ご自分で選んだ使徒たちに聖霊を通して指示を与え、天に上げられた日までのことです。

1:3イエスは苦しみを受けた後、多くの確かな証拠によって、ご自分が生きていることを彼らに示されました。四十日にわたって彼らに現れ、神の王国について話されたのです。

1:4彼らと共にいるとき、こう命じられました。「エルサレムを離れず、父の約束を待ちなさい。あなたがたはその約束を私から聞いた。1

1:5というのも、ヨハネは水で洗礼を授けたが、あなたがたは、もう何日もたたないうちに聖霊によって洗礼を受ける。」

1:6そこで、集まった者たちはイエスに尋ねた。「主よ、今こそイスラエルに王国を回復してくださるのですか。」

1:7イエスは言われた。「父がご自分の権限で定められた時や時期を知ることは、あなたがたの領分ではない。

1:8しかし、聖霊があなたがたに臨むと、あなたがたは力を受ける。そして、エルサレムでも、ユダヤ全土とサマリアでも、地の果てに至るまで、私の証人となる。」

1:9こう言われた後、彼らの見ている前でイエスは上げられ、雲がイエスを迎え取り、彼らの目から見えなくした。

1:10イエスが去って行く間、彼らが天を見つめていると、見よ、白い衣を着た二人の人がそばに立っていた。

1:11二人は言った。「ガリラヤの人たち、なぜ天を見上げたまま立っているのか。あなたがたから離れて天に上げられたこのイエスは、天へ行かれるのをあなたがたが見たのと同じように、来られる。」

1:12それから彼らは、オリーブ園と呼ばれる山からエルサレムに戻った。その山はエルサレムに近く、安息日の道のりほどの所にある。

1:13町に入ると、滞在していた階上の部屋へ上がった。ペトロ、ヨハネ、ヤコブ、アンデレ、フィリポ、トマス、バルトロマイ、マタイ、アルファイの子ヤコブ、熱心者シモン、ヤコブの子ユダである。2

1:14この人たちは皆、女たち、イエスの母マリア、イエスの兄弟たちと共に、心を合わせて祈り続けていた。

1:15そのころ、ペトロが兄弟たちの中で立って言った。そこにはおよそ百二十人が集まっていた。

1:16「兄弟たち、イエスを捕らえた者たちの案内役となったユダについて、聖霊がダビデの口を通して前もって語られた聖書の言葉は、実現しなければなりませんでした。

1:17ユダは私たちの一人に数えられ、この奉仕の分け前を受けていたからです。」

1:18この人は不正の報酬で土地を手に入れたが、頭から倒れ、体が真ん中から裂けて、内臓がすべて流れ出た。

1:19このことがエルサレムの住民すべてに知れ渡り、その土地は彼ら自身の言葉でハケルダマ、すなわち「血の土地」と呼ばれるようになった。3

1:20「詩編の書に、『その住まいは荒れ果て、住む者がいなくなれ』、また、『その監督の務めは、ほかの者が受けよ』と書かれているからです。

1:21ですから、主イエスが私たちの間で行き来された期間を通して、私たちと行動を共にした男たちの中から、

1:22一人が、私たちと共に主の復活の証人にならなければなりません。それは、主がヨハネの洗礼から始めて、私たちのもとから上げられた日に至るまでの期間です。」

1:23そこで二人を立てた。ユストとも呼ばれるバルサバというヨセフと、マティアである。

1:24そして祈って言った。「すべての人の心をご存じの主よ、この二人のうち、あなたが選ばれた一人をお示しください。

1:25この奉仕と使徒の務めの地位を、その人が受けるためです。ユダはこの務めから離れ、自分の場所へ行ってしまいました。」

1:26二人のためにくじを投じると、マティアに当たった。こうして彼は十一人の使徒に加えられた。

第2章

2:1五旬祭の日が来ると、皆が同じ場所に集まっていた。

2:2突然、激しい風が吹きつけるような音が天から起こり、彼らの座っていた家全体を満たした。

2:3すると、火のような舌が分かれて現れ、一人ひとりの上にとどまった。

2:4皆が聖霊に満たされ、霊が語らせるままに、ほかの言葉で話し始めた。4

2:5エルサレムには、天下のあらゆる国から来た、敬虔なユダヤ人が住んでいた。

2:6この音がすると、大勢の人が集まって来て、戸惑った。一人ひとりが、彼らの話すのを自分の言葉で聞いたからである。

2:7人々は驚き、あっけに取られて言った。「見ろ、話しているこの人たちは皆、ガリラヤ人ではないか。

2:8それなのに、どうして私たちはそれぞれ、生まれたときからの自分の言葉で聞いているのだろう。

2:9私たちは、パルティア人、メディア人、エラム人、また、メソポタミア、ユダヤ、カッパドキア、ポントス、アジア、

2:10フリギア、パンフィリア、エジプト、キレネに近いリビアの地方に住む者、そして滞在中のローマ人、

2:11ユダヤ人も改宗者も、クレタ人もアラビア人もいる。その私たちは、彼らが私たちの言葉で神の偉大な働きを語るのを聞いている。」

2:12皆が驚き、当惑しながら、互いに言った。「これはいったい、どういうことなのか。」

2:13しかし、ほかの人たちはあざけって、「甘いぶどう酒をたっぷり飲んだのだ」と言った。

2:14ペトロは十一人と共に立ち、声を張り上げて人々に語った。「ユダヤの人たち、またエルサレムに住むすべての人たち、これを知っていただきたい。私の言葉に耳を傾けてください。

2:15この人たちは、あなたがたが考えているように酔っているのではありません。今は朝の九時ごろなのですから。5

2:16そうではなく、これは、預言者ヨエルを通して語られたことなのです。

2:17『終わりの日々に、こうなる、と神は言われる。私はすべての人に私の霊を注ぐ。あなたがたの息子も娘も預言し、若者は幻を見、老人は夢を見る。

2:18その日々には、私の男の奴隷にさえ、女の奴隷にさえ、私の霊を注ぐ。彼らも預言する。

2:19私は上の天に不思議な業を、下の地にしるしを示す。血、火、立ちのぼる煙である。

2:20主の大いなる輝かしい日が来る前に、太陽は闇に、月は血に変わる。

2:21そして、主の名を呼び求める者は、誰でも救われる。』6

2:22イスラエルの人たち、この言葉を聞いてください。ナザレのイエスは、力ある業、不思議な業、しるしによって、神があなたがたに対して証しされた人です。神がこの方を通してあなたがたの間でそれらを行われたことは、あなたがた自身が知っています。

2:23この方は、神の定めた計画と予知に従って引き渡されました。あなたがたは、律法を持たない者たちの手を借りてこの方を十字架につけ、殺したのです。7

2:24しかし神は、死の苦しみを解き、この方を復活させられました。この方が死に捕らわれ続けることは、不可能だったからです。

2:25ダビデは、この方についてこう言っているからです。『私はいつも主を目の前に見ていた。私が揺るがされないように、主は私の右におられる。

2:26それゆえ、私の心は喜び、私の舌は歓喜した。私の肉体も、希望のうちに憩う。

2:27あなたは私の命を陰府に捨て置かず、あなたに忠実な者が腐敗を見ることをお許しにならないからだ。

2:28あなたは命の道を私に知らせてくださった。御前で私を喜びに満たしてくださる。』8

2:29兄弟たち、先祖ダビデについては、率直に言うことができます。彼は死んで葬られ、その墓は今日まで私たちの間にあります。

2:30それで、ダビデは預言者であり、神が誓って、彼の子孫の一人をその王座に着かせると約束されたことを知っていたので、

2:31先を見通し、キリストの復活について語ったのです。その方は陰府に捨て置かれず、その肉体は腐敗を見なかった、と。

2:32このイエスを神が復活させられたのです。私たちは皆、その証人です。

2:33この方は神の右に高く上げられ、父から約束の聖霊を受けて、今あなたがたが見聞きしている、この霊を注がれました。9

2:34ダビデが天に上ったわけではありません。彼自身がこう言っています。『主は私の主に言われた。私の右に座れ。

2:35私があなたの敵を、あなたの足台とするまで。』

2:36ですから、イスラエルの家全体は、確かに知ってください。あなたがたが十字架につけたこのイエスを、神は主ともキリストともされたのです。」

2:37人々はこれを聞いて胸を刺され、ペトロとほかの使徒たちに言った。「兄弟たち、私たちはどうすればよいのですか。」

2:38ペトロは答えた。「悔い改めなさい。そして、罪を赦していただくために、一人ひとりがイエス・キリストの名によって洗礼を受けなさい。そうすれば、聖霊の贈り物を受けます。

2:39この約束は、あなたがたにも、あなたがたの子どもたちにも、遠くにいるすべての人々にも、すなわち、私たちの神である主がお呼びになる人々なら誰にでも、向けられているからです。」

2:40彼は、ほかにも多くの言葉で厳かに証言し、「この曲がった世代から救われなさい」と勧めた。

2:41彼の言葉を受け入れた人たちは洗礼を受け、その日におよそ三千人が加えられた。

2:42彼らは、使徒たちの教えと、交わり、パンを裂くことと祈りに、ひたすら励んでいた。

2:43すべての人に恐れが生じ、使徒たちを通して、多くの不思議な業としるしが行われていた。

2:44信じる者たちは皆、共に集まり、すべてのものを共有していた。

2:45所有物や財産を売り、誰かに必要が生じるたび、その必要に応じて皆に分配していた。

2:46日ごとに心を合わせて、たゆまず神殿に通い、家々でパンを裂き、喜びと飾り気のない心で食事を共にし、

2:47神を賛美して、民全体から好意を寄せられていた。主は、救われる人々を日ごとにその集まりへ加えておられた。

第3章

3:1ペトロとヨハネは、祈りの時刻である午後三時ごろ、神殿へ上って行くところだった。10

3:2生まれつき足の不自由な男が、運ばれて来るところだった。神殿に入る人々から施しを求めるため、「美しい門」と呼ばれる神殿の門のそばに、毎日置かれていた人だった。

3:3彼は、ペトロとヨハネが神殿に入ろうとしているのを見て、施しを求めた。

3:4ペトロはヨハネと共に彼をじっと見て、「私たちを見なさい」と言った。

3:5彼は、何かもらえると思い、二人に目を向けた。

3:6ペトロは言った。「銀も金も私にはない。だが、私にあるものをあなたに与える。ナザレのイエス・キリストの名によって、歩きなさい。」

3:7そして右手を取って起こした。すると、たちまちその足とくるぶしが強くなった。

3:8彼は跳び上がって立ち、歩き始めた。歩き、跳びはね、神を賛美しながら、二人と共に神殿に入った。

3:9民は皆、彼が歩き、神を賛美しているのを見た。

3:10そして、神殿の「美しい門」で施しを求めて座っていた人だと気づき、その身に起こったことのゆえに、驚きと、我を忘れるほどの思いに満たされた。

3:11彼がペトロとヨハネをつかんで離さずにいると、民は皆、ひどく驚き、「ソロモンの柱廊」と呼ばれる所で、彼らのもとに駆け集まった。

3:12これを見たペトロは民に語った。「イスラエルの人たち、なぜこのことに驚くのですか。なぜ私たちを見つめるのですか。まるで私たち自身の力や敬虔さで、この人を歩かせたかのように。

3:13アブラハム、イサク、ヤコブの神、私たちの先祖の神が、ご自分のしもべイエスに栄光をお与えになったのです。ところがあなたがたは、この方を引き渡し、ピラトが釈放すると決めていたのに、その面前で拒みました。

3:14あなたがたは聖なる正しい方を拒み、殺人者を自分たちのために釈放してもらうように求め、

3:15その一方で、命の導き手を殺しました。しかし、神はこの方を死者の中から起こされました。私たちはその証人です。11

3:16その方の名を信じる信仰によって、その名が、あなたがたの見て知っているこの人を強くしたのです。その方を通しての信仰が、あなたがたすべての前で、この完全な健やかさを彼に与えたのです。

3:17さて、兄弟たち、あなたがたが知らずに行ったことは分かっています。あなたがたの指導者たちも同じです。

3:18しかし神は、ご自分のキリストが苦しむことを、すべての預言者の口を通して前もって告げておられ、その言葉を、このように実現されたのです。

3:19ですから、悔い改め、立ち返りなさい。あなたがたの罪が消し去られるためです。

3:20それは、主の御前から安らぎの時が訪れ、主が、あなたがたのためにあらかじめ選ばれたキリスト、イエスを遣わしてくださるためです。

3:21この方は、神が、古くからのご自分の聖なる預言者たちの口を通して語られたすべてのことの回復の時まで、天に迎えられていなければなりません。12

3:22モーセは言いました。『神である主は、あなたがたの兄弟たちの中から、私のような預言者を、あなたがたのために立てられる。その人があなたがたに語ることすべてについて、その人に聞き従いなさい。

3:23その預言者に聞き従わない者は、誰でも民の中から滅ぼし絶やされる。』

3:24また、サムエルをはじめ、その後に続く預言者たちのうち、語った者は皆、この日々を告げ知らせました。

3:25あなたがたは、預言者たちの子であり、神があなたがたの先祖と結ばれた契約の子です。神はアブラハムに、『あなたの子孫によって、地上のすべての氏族が祝福される』と言われました。

3:26神は、ご自分のしもべを立て、まずあなたがたのもとに遣わされました。このしもべが、あなたがた一人ひとりを、その悪い行いから離れさせることによって、あなたがたを祝福するためです。」

第4章

4:1二人が民に話していると、祭司たち、神殿の警備隊長、サドカイ派の人々が二人のところへやって来た。

4:2二人が民を教え、イエスにおける、死者の中からの復活を告げ知らせていたので、腹を立てたのである。

4:3彼らは二人を捕らえ、すでに夕方だったので、翌日まで拘禁した。

4:4しかし、その言葉を聞いた多くの人が信じ、男の数はおよそ五千人となった。

4:5翌日、彼らの指導者たち、長老たち、律法学者たちがエルサレムに集まった。

4:6大祭司アンナス、カイアファ、ヨハネ、アレクサンドロス、そして大祭司の家系に属する者も皆、いた。

4:7彼らは二人を真ん中に立たせて尋ねた。「お前たちは、どんな力で、あるいは誰の名によって、このことを行ったのか。」

4:8そのとき、ペトロは聖霊に満たされて言った。「民の指導者たち、長老たち、

4:9病んでいた人への善い行いについて、この人が何によって救われたのかを、今日、私たちが調べられているのなら、

4:10あなたがたすべてと、イスラエルの民すべてに知っていただきたい。あなたがたが十字架につけ、神が死者の中から起こされた、ナザレのイエス・キリストの名によって、その方によって、この人は今、健やかな体であなたがたの前に立っています。

4:11このイエスこそ、家を建てるあなたがたに軽んじられた石であり、隅のかしら石となった方です。

4:12ほかの誰にも救いはありません。天の下には、人々の間に与えられ、私たちがそれによって救われなければならない名は、ほかにないからです。」

4:13彼らはペトロとヨハネの大胆さを見て、学問のない普通の人だと分かり、驚いた。そして、二人がイエスと一緒にいた者だと気づいた。13

4:14また、癒やされた人が二人と一緒に立っているのを見て、何も言い返せなかった。

4:15そこで、二人に議会の外へ出るよう命じ、互いに相談した。

4:16「この者たちをどうしたものか。彼らを通して著しいしるしが起こったことは、エルサレムの住民すべてに明らかであり、否定できない。

4:17だが、これ以上民の間に広がらないように、今後は誰にもこの名によって話さないよう、脅しておこう。」

4:18そして二人を呼び戻し、イエスの名によって話したり教えたりすることを、一切禁じた。

4:19しかしペトロとヨハネは答えた。「神に聞き従うよりも、あなたがたに聞き従うほうが、神の前に正しいかどうか、判断してください。

4:20私たちは、見たこと、聞いたことを、話さずにはいられません。」

4:21彼らはさらに脅したうえで、二人を釈放した。民のことがあって、罰する方法を見つけられなかったのである。皆が、起こったことのゆえに神に栄光を帰していたからである。

4:22この癒やしのしるしが起こった人は、四十歳を過ぎていたのである。

4:23釈放された二人は仲間のもとへ戻り、祭司長たちと長老たちの言ったことを、すべて報告した。

4:24仲間たちはそれを聞くと、心を合わせて神に向かって声を上げた。「主人である方よ、あなたは天と地と海、そしてそこにあるすべてのものを造られました。

4:25あなたは聖霊によって、私たちの父祖であり、あなたのしもべであるダビデの口を通して、こう言われました。『なぜ諸国の民は騒ぎ立ち、諸民族はむなしいことを企んだのか。14

4:26地上の王たちは立ち構え、指導者たちは一つに集まった。主に逆らい、そのキリストに逆らって。』

4:27実際、あなたが油を注がれた聖なるしもべイエスに逆らって、この町で、ヘロデとポンティオ・ピラトが、異邦人とイスラエルの民と共に集まりました。

4:28あなたの御手とご計画が、起こるようにと前もって定めたことを、行うためでした。

4:29今、主よ、彼らの脅しに目を留め、あなたの奴隷たちが、まったく大胆に御言葉を語れるようにしてください――

4:30あなたが癒やしのために御手を伸ばし、あなたの聖なるしもべイエスの名によって、しるしと不思議な業が起こる中で。」

4:31彼らが祈り終えると、集まっていた場所が揺れ、皆が聖霊に満たされ、神の言葉を大胆に語り続けた。

4:32信じた人々の群れは、心も思いも一つだった。自分の持ち物を自分だけのものと言う者は一人もなく、すべてを共有していた。

4:33使徒たちは大きな力をもって、主イエスの復活を証言していた。また、大きな恵みが彼らすべての上にあった。

4:34実際、彼らの中には、困窮する者が一人もいなかった。土地や家を持つ者は皆、それらを売っては、売った代金を持って来て、

4:35使徒たちの足もとに置いていたからである。それは、それぞれの必要に応じて分配されていた。

4:36使徒たちからバルナバ、訳せば「励ましの子」と呼ばれていたヨセフは、キプロス出身のレビ人だった。

4:37彼は、持っていた畑を売り、その金を持って来て、使徒たちの足もとに置いた。

第5章

5:1ところが、アナニアという男が、妻サフィラと共に土地を売った。

5:2妻も承知のうえで代金の一部をひそかに自分のものとし、代金のうち一部だけを持って来て、使徒たちの足もとに置いた。

5:3ペトロは言った。「アナニア、なぜサタンに心を満たされ、お前は聖霊を欺き、土地の代金の一部をひそかに自分のものとしたのか。

5:4売らずに残っていた間は、お前のものだったではないか。売った後でも、その金はお前の自由にできたではないか。どうしてこんなことを心に決めたのか。お前は人間に偽ったのではなく、神に偽ったのだ。」

5:5この言葉を聞くと、アナニアは倒れて息絶えた。聞いていたすべての人に、大きな恐れが生じた。

5:6若者たちは立ち上がり、遺体を包んで運び出し、葬った。

5:7三時間ほどたつと、何が起こったか知らないまま、妻が入って来た。

5:8ペトロは彼女に尋ねた。「言いなさい。お前たちが土地を売ったのは、これだけの金額だったのか。」彼女は答えた。「はい、それだけです。」

5:9ペトロは言った。「どうして二人で示し合わせ、主の霊を試したのか。見よ、お前の夫を葬った者たちの足が、戸口に来ている。彼らがお前も運び出すことになる。」

5:10彼女はたちまちペトロの足もとに倒れ、息絶えた。若者たちは入って来て、彼女が死んでいるのを見つけると、運び出し、夫のそばに葬った。

5:11教会全体と、これを聞いたすべての人に、大きな恐れが生じた。

5:12使徒たちの手を通して、民の間に多くのしるしと不思議な業が行われていた。皆が心を合わせて、ソロモンの柱廊に集まっていた。

5:13ほかの人々は、誰もあえて彼らの仲間に加わろうとはしなかった。しかし、民は彼らを尊敬していた。

5:14それどころか、主を信じる男女の群れは、ますます加えられていった。

5:15そのため人々は、病人を大通りにまで運び出し、小さな寝台や寝床に寝かせた。ペトロが通りかかるとき、せめてその影だけでも、病人の誰かにかかるようにと願ったのである。

5:16エルサレム周辺の町々からも大勢が集まって来て、病人や汚れた霊に苦しめられている者たちを連れて来た。その人たちは皆、癒やされた。

5:17すると大祭司と、その仲間すべて、すなわちサドカイ派の者たちが、ねたみに満たされて立ち上がり、

5:18使徒たちを捕らえ、公の牢に入れた。

5:19しかし、夜、主の御使いが牢の扉を開き、彼らを連れ出して言った。

5:20「行って神殿に立ち、この命についての言葉を、すべて、民に語りなさい。」

5:21彼らはそれを聞くと、夜明けごろ神殿に入り、教え始めた。一方、大祭司と仲間たちは到着し、議会とイスラエルの子らの長老会全体を招集して、使徒たちを連れて来させるため、牢に人を遣わした。

5:22だが、下役たちが行ってみると、牢に彼らはいなかった。戻ってこう報告した。

5:23「牢は厳重に閉ざされ、番人たちも扉の前に立っているのを確かめました。しかし、開けてみると、中には誰も見当たりませんでした。」

5:24この報告を聞くと、神殿の警備隊長と祭司長たちは、使徒たちのことで、この事態がどうなるのか、途方に暮れた。

5:25そこへ一人が来て告げた。「ご覧ください。あなたがたが牢に入れた者たちは、神殿に立って、民を教えています。」

5:26そこで警備隊長は下役たちと共に行き、彼らを連れて来た。ただし、暴力は使わなかった。民に石を投げられるのを恐れたからである。

5:27彼らを連れて来て議会に立たせると、大祭司が問いただした。

5:28「この名によって教えるなと、厳しく命じたはずだ。それなのに、見よ、お前たちはエルサレムを自分たちの教えで満たした。そのうえ、この者の血の責任を、私たちに負わせようとしている。」

5:29ペトロと使徒たちは答えた。「人間に従うより、神に従わなければなりません。

5:30私たちの先祖の神は、あなたがたが木に掛けて殺したイエスを、起こされました。

5:31神はこの方を、導き手、救い主として、ご自分の右に高く上げられました。イスラエルに悔い改めと罪の赦しを与えるためです。15

5:32私たちはこれらの出来事の証人です。神が、ご自分に従う者たちに与えられた聖霊も、証人です。」

5:33彼らはこれを聞くと、激怒して、使徒たちを殺そうと考えた。

5:34しかし、議会の中で、ガマリエルというファリサイ派の人が立ち上がった。民すべてに尊敬される律法の教師である。彼は、使徒たちをしばらく外に出すよう命じ、

5:35こう言った。「イスラエルの人たち、この者たちに何をしようとしているのか、自分自身のために、よく気をつけなさい。

5:36というのも、以前、テウダスが立ち上がり、自分は何者かであると言い、四百人ほどの男が彼につきました。しかし彼は殺され、従っていた者たちは皆、散り散りになり、跡形もなくなりました。

5:37その後、登録の時期に、ガリラヤのユダが立ち上がり、人々を離反させて自分に従わせました。彼も滅び、従っていた者たちは皆、散らされました。

5:38ですから、今、あなたがたに言います。この者たちから手を引き、放っておきなさい。(なぜなら、この計画や働きが人間から出たものなら、覆されますが、

5:39神から出たものなら、あなたがたには彼らを覆せないからです。)あなたがたが、神と戦う者とさえ判明することのないように。」彼らはガマリエルの言葉に従った。

5:40そして使徒たちを呼び入れ、打ちたたいて、イエスの名によって語るなと命じ、釈放した。

5:41使徒たちは、その名のために辱めを受けるに値する者とされたことを喜びながら、議会から出て行った。

5:42そして毎日、神殿でも家々でも、イエスこそキリストであると、教えることも、良い知らせを伝えることも、やめなかった。

第6章

6:1そのころ、弟子たちが増えるにつれて、ギリシア語を話す者たちから、ヘブライ語を話す者たちに対して不平が起こった。自分たちのやもめが、日々の世話で見過ごされていたからである。16

6:2十二人は弟子たち全体を呼び集め、言った。「私たちが神の言葉をおろそかにして、食卓の世話をするのは、適切ではありません。

6:3そこで、兄弟たち、あなたがたの中から、評判が良く、霊と知恵に満ちた七人の男を選んでください。私たちは彼らに、この務めを任せます。

6:4私たちは祈りと、御言葉に仕えることに専念します。」

6:5この提案は集まった皆に喜ばれた。彼らは、信仰と聖霊に満ちた人ステファノ、フィリポ、プロコロ、ニカノル、ティモン、パルメナ、そしてアンティオキア出身の改宗者ニコラオを選び、

6:6使徒たちの前に立たせた。使徒たちは祈り、彼らの上に手を置いた。

6:7神の言葉は広がり続け、エルサレムの弟子たちの数は大きく増えた。多くの祭司たちも、信仰に従うようになった。

6:8ステファノは恵みと力に満ち、民の間で大きな不思議な業としるしを行っていた。

6:9すると、「解放奴隷の」と呼ばれる会堂に属する者や、キレネ人、アレクサンドリア人、キリキアとアジア出身の者たちの中から、何人かが立ち上がり、ステファノと論争した。17

6:10しかし彼らは、彼がそれによって語っていた知恵と霊とに、対抗できなかった。

6:11そこで人々をひそかにそそのかして、「私たちは、彼がモーセと神を冒瀆する言葉を語るのを聞いた」と言わせた。

6:12彼らは民、長老たち、律法学者たちを扇動し、押しかけてステファノを捕らえ、議会に連れて行った。

6:13そして偽証人たちを立てた。彼らは言った。「この男は、聖なる場所と律法に逆らう言葉を、絶えず語っています。

6:14というのも私たちは、このナザレのイエスがこの場所を壊し、モーセが私たちに伝えた慣習を変える、と彼が言うのを聞いたからです。」

6:15議会に座っていた者たちは皆、彼を見つめ、その顔が御使いの顔のようであるのを見た。

第7章

7:1大祭司が尋ねた。「そのとおりなのか。」

7:2ステファノは言った。「兄弟たち、父たち、聞いてください。栄光の神は、私たちの父アブラハムが、ハランに住む前、メソポタミアにいたときに現れ、

7:3『あなたの土地と親族を離れ、私があなたに示す土地へ来なさい』と言われました。

7:4そこで、彼はカルデア人の土地を出て、ハランに住みました。そして父が死んだ後、神は彼をそこから、あなたがたが今住むこの土地へ移されました。

7:5神はそこで、足を置くほどの相続地さえ、彼にお与えになりませんでした。しかし、まだ子どもがいなかったのに、その土地を彼と、その後の子孫に、所有地として与えると約束されました。

7:6神はこう語られました。『彼の子孫は他国の土地に身を寄せて暮らし、人々は彼らを奴隷にして、四百年の間、苦しめる。

7:7だが、彼らが奴隷として仕える国民を、私は裁く』と神は言われました。『その後、彼らは出て来て、この場所で私に仕える。』

7:8また神は、割礼の契約を彼に与えられました。こうして、彼はイサクをもうけ、八日目に割礼を施しました。イサクはヤコブを、ヤコブは十二人の族長をもうけました。18

7:9族長たちはヨセフをねたんで、エジプトへ売りました。しかし、神は彼と共におられ、

7:10あらゆる苦難から彼を救い出し、エジプトの王ファラオの前で、好意を得させ、知恵を与えられました。ファラオは彼を、エジプトと自分の家全体を治める者にしました。19

7:11その後、エジプトとカナンの全土に飢饉と大きな苦難が起こり、私たちの先祖は食料を見つけられませんでした。

7:12ヤコブは、エジプトに穀物があると聞き、最初に、私たちの先祖を遣わしました。

7:13二度目には、ヨセフが兄弟たちに自分の身を明かし、ヨセフの一族のことがファラオに知られました。

7:14ヨセフは人を遣わし、父ヤコブと親族全体、七十五人を呼び寄せました。20

7:15ヤコブはエジプトへ下り、そこで彼も、私たちの先祖も死にました。

7:16彼らはシケムへ移され、アブラハムが銀を払って、シケムのハモルの子らから買った墓に納められました。21

7:17神がアブラハムに約束されたことの実現する時が近づくにつれて、民はエジプトで増え、数を増していきました。

7:18それは、ヨセフを知らない別の王が、エジプトを治める者として立つまで続きました。

7:19その王は私たちの民族を狡猾に扱い、先祖たちを苦しめ、自分たちの赤子を捨てさせて、生かしておかないようにしました。

7:20そのころモーセが生まれました。神の目に美しい子で、三か月の間、父の家で育てられました。

7:21やがて捨てられると、ファラオの娘が拾い上げ、自分の子として育てました。

7:22モーセはエジプト人のあらゆる知恵を学び、言葉にも行いにも力のある者でした。

7:23四十歳になろうとしたとき、彼は、自分の兄弟であるイスラエルの子らを訪ねようと思い立ちました。

7:24そして、一人が不当に扱われているのを見て助けに入り、エジプト人を打ち倒して、苦しめられていた者のために仕返しをしました。

7:25彼は、自分の手を通して神が彼らに救いを与えておられることを、兄弟たちは理解すると思っていました。しかし、彼らは理解しませんでした。

7:26翌日、彼は争っている者たちのところへ来て、仲直りさせようとしました。『皆さん、あなたたちは兄弟です。なぜ互いを不当に扱うのですか』と言ったのです。

7:27しかし、隣人を不当に扱っていた者は、彼を押しのけて言いました。『誰がお前を、俺たちの支配者や裁判官にしたのか。

7:28昨日エジプト人を殺したように、俺も殺すつもりか。』

7:29この言葉を聞いて、モーセは逃げ、ミディアンの土地に身を寄せて暮らし、そこで二人の息子をもうけました。

7:30四十年が過ぎると、シナイ山の荒れ野で、燃える柴の炎の中に、御使いが彼に現れました。

7:31モーセはそれを見て、その光景に驚きました。よく見ようと近づくと、主の声がしました。

7:32『私はあなたの先祖の神、アブラハム、イサク、ヤコブの神である。』モーセは震え上がり、よく見ようとする勇気がありませんでした。

7:33主は言われました。『足の履物を脱ぎなさい。あなたの立っている場所は、聖なる土地だからだ。

7:34私は、エジプトにいる私の民の苦しみを、確かに見た。そのうめきを聞いて、彼らを救い出すために下って来た。さあ、来なさい。あなたをエジプトへ遣わそう。』

7:35このモーセを、人々は『誰がお前を支配者や裁判官にしたのか』と言って拒みました。しかし、神はこの人を、柴の中で彼に現れた御使いの助けによって、支配者、また救い出す者として遣わされたのです。

7:36この人が、エジプトの地、紅海、そして荒れ野で四十年にわたり、不思議な業としるしを行い、彼らを導き出しました。

7:37このモーセこそ、イスラエルの子らに、『神は、あなたがたの兄弟たちの中から、私のような預言者を、あなたがたのために立てられる』と言った人です。

7:38この人こそ、荒れ野の集会で、シナイ山において彼に語る御使いと、私たちの先祖と共にいた人です。そして、私たちに与えるために、生きた託宣を受けたのです。22

7:39しかし、私たちの先祖はこの人に従おうとせず、押しのけて、心をエジプトへ向け、

7:40アロンに言いました。『私たちに先立って進む神々を造ってくれ。エジプトの地から私たちを導き出した、あのモーセがどうなったのか、分からないのだから。』

7:41そのころ彼らは子牛を造り、その偶像にいけにえを献げ、自分たちの手の業を喜びました。

7:42そこで神は向きを転じ、彼らを、天の万象に仕えるままに引き渡されました。預言者たちの書にあるとおりです。『イスラエルの家よ、荒れ野で四十年の間、ほふった獣やいけにえを、私に献げたというのか。

7:43お前たちは、モロクの幕屋と、神ライファンの星を担いだ。拝むために自分たちで造った像を。私はお前たちを、バビロンのかなたへ移す。』23

7:44私たちの先祖には、荒れ野で証しの幕屋がありました。モーセに語られた方が、彼の見た型に従って造るように命じられたものです。

7:45私たちの先祖はそれを受け継ぎ、神が彼らの前から追い払われた諸国の民の土地を占める際、ヨシュアと共に持ち込みました。その幕屋は、ダビデの時代までそこにありました。24

7:46ダビデは神の前に恵みを受け、ヤコブの神のために住まいを見つけたいと願いました。

7:47そして、ソロモンがその方のために家を建てました。

7:48しかし、いと高き方は、人の手で造ったものの中には住まわれません。預言者はこう言っています。

7:49『天は私の王座、地は私の足台。お前たちは、私のためにどんな家を建てるというのか、と主は言われる。私の休む場所はどこにあるというのか。

7:50これらすべてを造ったのは、私の手ではないか。』

7:51頑なで、心と耳に割礼を受けていない人たち、あなたがたはいつも聖霊に逆らっています。あなたがたの先祖がしたように、あなたがたもしているのです。

7:52あなたがたの先祖が迫害しなかった預言者が、誰かいたでしょうか。彼らは、正しい方の到来を前もって告げた者たちを殺しました。そして今、あなたがたは、その方を裏切り、殺した者になりました。

7:53あなたがたは、御使いたちを通して定められた律法を受けながら、守らなかったのです。」

7:54人々はこれを聞くと、心の底から激怒し、ステファノに向かって歯ぎしりした。

7:55しかし、聖霊に満ちていた彼は、天を見つめ、神の栄光と、神の右に立っておられるイエスを見て、

7:56言った。「見よ、天が開き、人の子が神の右に立っておられるのが見える。」

7:57すると人々は大声で叫び、自分の耳をふさぎ、一斉に彼に襲いかかった。

7:58彼を町の外へ追い出し、石を投げつけた。証人たちは、自分の上着を、サウロという若者の足もとに置いた。

7:59彼らが石を投げつける間、ステファノは呼び求めて言った。「主イエスよ、私の霊をお受けください。」

7:60そしてひざまずき、大声で叫んだ。「主よ、この罪を彼らに負わせないでください。」そう言うと、眠りについた。

第8章

8:1サウロは、ステファノの殺害に同意していた。その日、エルサレムの教会に対して大きな迫害が起こった。使徒たち以外は皆、ユダヤとサマリアの各地に散らされた。

8:2敬虔な人々がステファノを葬り、彼のために深く嘆き悲しんだ。

8:3しかし、サウロは教会を荒らしていた。家々に入り、男も女も引きずり出して、牢に引き渡した。

8:4散らされた人々は、御言葉の良い知らせを伝えながら、各地を巡った。

8:5フィリポはサマリアの町へ下り、そこの人々にキリストを宣べ伝えた。

8:6群衆は、話を聞き、フィリポが行うしるしを見て、皆一緒に、フィリポの語ることに注意を向けた。

8:7汚れた霊に取りつかれていた多くの人から、霊が大声で叫びながら出て行き、また、体の麻痺した人や、足の不自由な人も多く癒やされたからである。25

8:8その町には、大きな喜びが起こった。

8:9この町には、以前からシモンという男がいた。魔術を行ってサマリアの民を驚かせ、自分は何か偉大な者だと言っていた。

8:10小さな者から大きな者まで、皆が彼に注目し、「この人こそ、『大いなる力』と呼ばれる神の力だ」と言っていた。

8:11長い間、その魔術で驚かされてきたので、人々は彼に注目していたのである。

8:12しかし、神の王国とイエス・キリストの名について良い知らせを伝えるフィリポを信じると、男も女も洗礼を受けた。

8:13シモン自身も信じ、洗礼を受けた後はフィリポに付き従っていた。そして、しるしや大きな力ある業が起こるのを見て、驚いていた。

8:14エルサレムにいた使徒たちは、サマリアが神の言葉を受け入れたと聞くと、ペトロとヨハネを彼らのもとに遣わした。

8:15二人は下って行き、彼らが聖霊を受けるようにと祈った。

8:16聖霊はまだ、彼らの誰にも臨んでおらず、主イエスの名に入る洗礼を受けているだけだったからである。

8:17そこで二人が彼らの上に手を置くと、彼らは聖霊を受けた。

8:18シモンは、使徒たちが手を置くことで霊が与えられるのを見て、二人に金を差し出し、

8:19言った。「私にもこの権限をください。私が手を置く人が、聖霊を受けるようにするためです。」

8:20しかしペトロは言った。「お前の金は、お前と共に滅びるがよい。神の贈り物を、金で手に入れられると思ったからだ。

8:21この事柄に、お前の分も取り分もない。お前の心は、神の前にまっすぐではないからだ。

8:22だから、お前のこの悪を悔い改め、お前の心に抱いた企みがお前に赦されるかもしれないと願って、主に祈りなさい。

8:23というのも、私には、お前が苦い胆汁の中にいて、不正の鎖につながれているのが見えるからだ。」

8:24シモンは答えた。「あなたがたの言われたことが何一つ私に起こらないように、あなたがたこそ、私のために主に祈ってください。」

8:25二人は主の言葉を厳かに証言し、語った後、エルサレムへ戻って行った。その道すがら、サマリア人の多くの村で良い知らせを伝えた。

8:26主の御使いはフィリポに言った。「立って、エルサレムからガザへ下る道を目指し、南へ行きなさい。」そこは人けのない道である。26

8:27フィリポは立って出かけた。すると、見よ、エチオピア人の宦官がいた。エチオピア人の女王カンダケの高官で、その財宝すべてを管理する人だった。彼は礼拝のためエルサレムへ来て、

8:28帰る途中だった。自分の車に座り、預言者イザヤの書を読んでいた。

8:29霊がフィリポに言った。「近づいて、あの車のそばに付いて行きなさい。」

8:30フィリポは走り寄り、彼が預言者イザヤの書を読んでいるのを聞いて、尋ねた。「読んでおられることが、分かりますか。」

8:31彼は答えた。「誰かが導いてくれなければ、どうして分かるでしょう。」そしてフィリポに、乗って一緒に座るように勧めた。

8:32彼が読んでいた聖書の箇所は、こうだった。「彼は羊のように、ほふり場へ連れて行かれた。毛を刈る者の前で黙る小羊のように、彼は口を開かない。

8:33低くされたとき、彼の裁きは取り去られた。彼の世代について、誰が語れようか。彼の命は地から取り去られるのだから。」27

8:34宦官はフィリポに尋ねた。「教えてください。預言者は、誰についてこう言っているのでしょう。自分自身ですか、それとも、ほかの誰かですか。」

8:35フィリポは口を開き、この聖書の箇所から始めて、イエスの良い知らせを彼に伝えた。

8:36道を進んで行くと、水のある所に来た。宦官は言った。「ここに水があります。私が洗礼を受けるのを妨げるものは、何でしょう。」28

8:38彼は車を止めるよう命じ、フィリポと宦官の二人とも水の中へ下りた。フィリポは彼に洗礼を授けた。

8:39二人が水から上がると、主の霊がフィリポを連れ去った。宦官はもう彼を見なかった。喜びながら自分の道を進んで行ったのである。

8:40フィリポはアゾトに現れ、そこから巡り歩き、カイサリアに着くまで、すべての町で良い知らせを伝えた。

第9章

9:1一方サウロは、なおも主の弟子たちに対する脅しと殺意を息づかせ、大祭司のところへ行き、

9:2ダマスコの会堂あての手紙を求めた。この道に属する者を見つけたら、男でも女でも縛って、エルサレムへ連れて来るためである。

9:3旅をしてダマスコに近づくと、突然、天からの光が、彼の周囲を照らした。

9:4彼は地に倒れ、「サウル、サウル、なぜ私を迫害するのか」と、自分に語る声を聞いた。

9:5彼は尋ねた。「主よ、あなたはどなたですか。」その方は答えた。「私は、お前が迫害しているイエスだ。

9:6さあ、立って町に入りなさい。お前のなすべきことが告げられる。」

9:7同行していた男たちは、声は聞こえるのに誰も見えず、言葉を失って立っていた。29

9:8サウロは地から起き上がったが、目を開いても何も見えなかった。人々は彼の手を引き、ダマスコへ連れて行った。

9:9彼は三日間、目が見えず、食べることも飲むこともしなかった。

9:10ダマスコには、アナニアという弟子がいた。主が幻の中で、「アナニア」と呼ばれた。彼は答えた。「はい、主よ、ここにおります。」

9:11主は言われた。「立って、『まっすぐ』と呼ばれる通りへ行き、ユダの家で、タルソス出身のサウロという者を訪ねなさい。というのも、見よ、彼は祈っている。

9:12そして幻の中で、アナニアという人が入って来て、再び見えるようにと自分に手を置いてくれるのを見た。」

9:13アナニアは答えた。「主よ、この人がエルサレムで、あなたの聖なる者たちにどれほどの害を加えたか、多くの人から聞いています。

9:14ここでも、あなたの名を呼び求める者すべてを縛る権限を、祭司長たちから受けています。」

9:15しかし主は言われた。「行きなさい。この者は、異邦人、王たち、イスラエルの子らの前に、私の名を運ぶために、私が選んだ器なのだ。

9:16実際、私の名のために、どれほど苦しまなければならないか、私が彼に示す。」

9:17アナニアは出かけてその家に入り、サウロの上に手を置いて言った。「兄弟サウル、あなたが来る途中、道であなたに現れたイエス、主が、私を遣わされました。あなたが再び見えるようになり、聖霊に満たされるためです。」

9:18するとすぐ、目からうろこのようなものが落ち、再び見えるようになった。彼は立って洗礼を受け、

9:19食事を取って力を回復した。その後、ダマスコの弟子たちと数日間を過ごし、

9:20すぐに会堂で、イエスこそ神の子であると宣べ伝えた。

9:21聞いた者たちは皆、驚いて言った。「この名を呼び求める者たちをエルサレムで滅ぼしていたのは、この男ではないか。ここへも、まさに彼らを縛って祭司長たちのもとへ連れて行くために、来ていたのではないか。」

9:22しかしサウロは、ますます力を増し、イエスこそキリストであると論証して、ダマスコに住むユダヤ人たちを困惑させた。

9:23かなりの日数が過ぎると、ユダヤ人たちは彼を殺そうと相談した。

9:24だが、その企みはサウロに知られた。彼らは、彼を殺そうと、昼も夜も城門を見張っていた。

9:25そこで、彼の弟子たちは夜の間に彼を連れ出し、籠に入れ、城壁を通してつり下ろした。

9:26エルサレムに着くと、彼は弟子たちの仲間に加わろうとした。しかし皆、彼を恐れ、本当に弟子なのだとは信じなかった。

9:27そこでバルナバが彼を引き受け、使徒たちのもとへ連れて行った。そして、サウロが道で主を見たこと、主が彼に語られたこと、また彼がダマスコでイエスの名によって大胆に語ったことを、彼らに説明した。

9:28サウロは彼らと共にエルサレムで行き来し、主の名によって大胆に語り、

9:29ギリシア語を話すユダヤ人たちと話し合い、論争した。しかし、彼らはサウロを殺そうとした。30

9:30兄弟たちはそれを知ると、彼をカイサリアへ連れて下り、タルソスへ送り出した。

9:31こうして、ユダヤ、ガリラヤ、サマリアの全域の教会は、平穏を保ちながら建て上げられていった。主を畏れて歩み、聖霊の励ましを受けて、数を増していった。

9:32ペトロは皆の間を巡り歩き、リダに住む聖なる者たちのところへも下って行った。

9:33そこで、アイネアという人を見つけた。体が麻痺して、八年間、寝床に横たわっていた人である。

9:34ペトロは言った。「アイネア、イエス・キリストがいまあなたを癒やしてくださる。起きて、自分の床を整えなさい。」彼はすぐに起き上がった。

9:35リダとシャロンに住む人々は皆、彼を見て、主に立ち返った。

9:36ヨッパには、タビタという女の弟子がいた。その名は訳すとドルカスという。彼女は善い行いと施しを数多く行っていた人だった。

9:37そのころ、彼女は病気になり、死んだ。人々は遺体を洗い、階上の部屋に安置した。

9:38リダはヨッパに近かったので、弟子たちは、ペトロがそこにいると聞くと、二人の男を遣わして、「どうか、ためらわずに私たちのところへ来てください」と頼んだ。

9:39ペトロは立って彼らと共に行った。到着すると、彼らは階上の部屋へ案内した。やもめたちは皆、泣きながらペトロのそばに立ち、ドルカスが一緒にいた間に作っていた下着や上着を見せた。

9:40ペトロは皆を外に出し、ひざまずいて祈った。そして遺体のほうを向き、「タビタ、起きなさい」と言った。彼女は目を開き、ペトロを見ると、起きて座った。

9:41ペトロは手を貸して彼女を立たせ、聖なる者たちとやもめたちを呼び、生きている彼女を引き合わせた。

9:42このことはヨッパ全体に知れ渡り、多くの人が主を信じた。

9:43ペトロは、その後かなりの日々を、ヨッパで、シモンという皮なめし職人のところに滞在した。

第10章

10:1カイサリアに、コルネリオという人がいた。「イタリア隊」と呼ばれる部隊の百人隊長だった。

10:2敬虔な人で、家の者すべてと共に神を畏れ、民に多くの施しをし、絶えず神に祈っていた。

10:3ある日の午後三時ごろ、彼は幻の中で、神の御使いが自分のところへ来て、「コルネリオ」と呼ぶのを、はっきり見た。31

10:4彼は御使いを見つめ、恐れながら言った。「主よ、何でしょうか。」御使いは言った。「あなたの祈りと施しは、神の前に上り、覚えられている。

10:5今、ヨッパに人を遣わし、ペトロとも呼ばれるシモンを招きなさい。

10:6彼は皮なめし職人のシモンの家に泊まっている。その家は海辺にある。」

10:7語りかけていた御使いが去ると、コルネリオは家の奴隷二人と、いつも身近に仕える者たちのうち、敬虔な兵士一人を呼び、

10:8すべてを説明して、ヨッパへ遣わした。

10:9翌日、彼らが旅をして町に近づいたころ、ペトロは祈るため、正午ごろ屋上へ上がった。32

10:10空腹になり、何か食べたいと思った。人々が食事の準備をしている間、彼は我を忘れた状態になり、

10:11天が開き、大きな布のような入れ物が、四隅で吊り下ろされて地上へ下りて来るのを見た。

10:12その中には、地上のあらゆる四つ足の獣、這うもの、空の鳥がいた。

10:13そして声がした。「ペトロ、立って、ほふって食べなさい。」

10:14ペトロは言った。「主よ、とんでもありません。私は、汚れたものや清くないものを、一度も食べたことがありません。」

10:15声は再び、二度目に言った。「神が清くされたものを、あなたが汚れたものとしてはならない。」

10:16これが三度起こり、すぐに入れ物は天へ上げられた。

10:17ペトロが、自分の見た幻はいったい何を意味するのかと考えあぐねていると、見よ、コルネリオから遣わされた男たちが、シモンの家を尋ね当て、門の前に立った。

10:18彼らは声をかけ、ペトロとも呼ばれるシモンが、ここに泊まっているかと尋ねた。

10:19ペトロが幻について考え続けていると、霊が言った。「見よ、あなたを捜している人たちがいる。

10:20立って下へ降り、ためらわずに一緒に行きなさい。私が彼らを遣わしたのだ。」

10:21ペトロは男たちのところへ降りて行き、言った。「あなたがたの捜しているのは私です。どのような用件で来られたのですか。」

10:22彼らは答えた。「百人隊長コルネリオは、正しい人で、神を畏れ、ユダヤの民全体から良い評判を得ています。聖なる御使いから、あなたを自分の家に招き、あなたのお言葉を聞くようにと告げられました。」

10:23ペトロは彼らを招き入れて泊めた。翌日、立って彼らと共に出発した。ヨッパの兄弟たちの何人かも同行した。

10:24その翌日、カイサリアに入った。コルネリオは、親族と親しい友人たちを呼び集め、ペトロたちを待っていた。

10:25ペトロが入って来ると、コルネリオは出迎え、その足もとにひれ伏して拝んだ。

10:26しかしペトロは彼を起こし、「立ってください。私自身も、人間です」と言った。

10:27そして、彼と話しながら中に入り、多くの人が集まっているのを見て、

10:28言った。「ユダヤ人が異国の人と交わったり、近づいたりすることは、許されないと、あなたがた自身がご存じです。しかし神は、誰についても、汚れた人、清くない人と言ってはならないと、私に示してくださいました。33

10:29ですから、招かれたとき、異議を唱えずに来ました。そこで伺います。どういう理由で、私を招かれたのですか。」

10:30コルネリオは言った。「三日前の、今と同じ時刻、午後三時ごろに、私は家で祈っていました。すると、見よ、輝く衣を着た人が目の前に立ち、34

10:31言いました。『コルネリオ、あなたの祈りは聞かれ、あなたの施しは神の前に覚えられた。

10:32そこでヨッパへ人を遣わし、ペトロとも呼ばれるシモンを招きなさい。彼は海辺にある、皮なめし職人シモンの家に泊まっている。』

10:33それで、すぐにあなたのもとへ人を遣わしました。よくおいでくださいました。今、私たちは皆、神の前にいます。主があなたに命じられたことを、すべて聞くためです。」

10:34ペトロは口を開いて言った。「神は人を分け隔てなさらないと、本当によく分かりました。

10:35どの国の人であっても、神を畏れ、正しいことを行う者は、神に受け入れられるのです。

10:36神は、イスラエルの子らに御言葉を送り、イエス・キリストを通して平和の良い知らせを告げられました。このイエスこそ、すべての者の主です。

10:37あなたがたは、ユダヤ全土に起こったことを知っています。ヨハネの宣べ伝えた洗礼の後、ガリラヤから始まったことです。

10:38それは、ナザレ出身のイエスについてです。神は聖霊と力をもって、この方に油を注がれました。この方は巡り歩き、善いことを行い、悪魔に虐げられていたすべての人を癒やされました。神がこの方と共におられたからです。35

10:39私たちは、ユダヤ人の地方とエルサレムで、この方が行われたすべてのことの証人です。人々はこの方を木に掛けて殺しました。

10:40しかし神は、三日目にこの方を起こし、その姿を現させてくださいました。

10:41民全体にではなく、神が前もって選んだ証人たち、すなわち私たちにです。私たちは、この方が死者の中から復活された後、この方と共に食べ、共に飲みました。

10:42この方は私たちに命じられました。民に宣べ伝え、この方こそ、生きている者と死んだ者との裁判官として神に定められた方だと、厳かに証言するように、と。36

10:43預言者たちは皆、この方を信じる者は誰でも、その名を通して罪の赦しを受けると、この方について証言しています。」

10:44ペトロがまだこれらの言葉を語っているうちに、御言葉を聞いていたすべての人の上に、聖霊が臨んだ。

10:45ペトロに同行していた、割礼を受けた信者たちは皆、聖霊の贈り物が異邦人にも注がれたことに驚いた。

10:46彼らがさまざまな言葉で語り、神をたたえるのを聞いたからである。そこでペトロは言った。37

10:47「私たちと同じように聖霊を受けたこの人たちが洗礼を受けないように、水を拒める人がいるでしょうか。」

10:48そして、イエス・キリストの名によって洗礼を受けるよう命じた。その後、人々は彼に、数日間とどまってほしいと頼んだ。

第11章

11:1ユダヤ各地にいた使徒たちと兄弟たちは、異邦人も神の言葉を受け入れたと聞いた。

11:2ペトロがエルサレムへ上ると、割礼を受けた人々の側の者たちが彼に異議を唱えて、

11:3言った。「あなたは割礼を受けていない男たちのところへ入り、一緒に食事をした。」

11:4ペトロは初めから順を追って、彼らに説明した。

11:5「私はヨッパの町で祈っていました。すると、我を忘れた状態で幻を見ました。大きな布のような入れ物が、四隅をつられて天から下り、私のところまで来たのです。

11:6それを見つめてよく見ると、地上の四つ足の獣、野獣、這うもの、空の鳥が見えました。

11:7また、私に語る声が聞こえました。『ペトロ、立って、ほふって食べなさい。』

11:8私は言いました。『主よ、とんでもありません。汚れたものや清くないものが、私の口に入ったことは一度もありません。』

11:9すると、再び天から声が答えました。『神が清くされたものを、あなたが汚れたものとしてはならない。』

11:10これが三度起こり、すべてが再び天へ引き上げられました。

11:11ちょうどそのとき、カイサリアから私のもとへ遣わされた三人の男が、私たちのいた家に着きました。

11:12霊は私に、少しも分け隔てせずに、彼らと共に行くように言われました。ここにいる六人の兄弟たちも私に同行し、私たちはその人の家に入りました。

11:13その人は、御使いが家の中に立ち、こう言うのを見たと、私たちに知らせました。『ヨッパへ人を遣わし、ペトロとも呼ばれるシモンを招きなさい。

11:14彼があなたに言葉を語り、それによって、あなたも家の者すべても救われる。』

11:15私が話し始めると、初めに私たちに臨んだのと同じように、彼らの上にも聖霊が臨みました。

11:16そのとき私は、主が『ヨハネは水で洗礼を授けたが、あなたがたは聖霊によって洗礼を受ける』と言われたことを、思い出しました。

11:17ですから、主イエス・キリストを信じた私たちに与えられたのと同じ贈り物を、神が彼らにも与えられたのなら、神を妨げることができるほど、私は何者だったというのでしょう。」

11:18彼らはこれを聞くと、静まり、神に栄光を帰して言った。「それなら、神は異邦人にも、命に至る悔い改めをお与えになったのだ。」

11:19ステファノのことで起こった苦難によって散らされた人々は、フェニキア、キプロス、アンティオキアまで進んだが、ユダヤ人以外には誰にも御言葉を語らなかった。

11:20しかし、その中にキプロスとキレネ出身の人々がいた。彼らはアンティオキアに来ると、ギリシア語を話す人々にも語り、主イエスについての良い知らせを伝えた。38

11:21主の御手が彼らと共にあり、多くの人が信じて、主に立ち返った。

11:22この人々についての知らせが、エルサレムの教会の耳に入り、教会はバルナバをアンティオキアまで遣わした。

11:23彼は到着して神の恵みを見ると、喜び、心を定めて主にとどまり続けるよう、皆に勧めた。

11:24彼は善い人で、聖霊と信仰に満ちていたからである。こうして、かなりの人々が主に加えられた。

11:25バルナバは、サウロを捜すためにタルソスへ行き、

11:26見つけると、アンティオキアへ連れて来た。二人は丸一年、教会に集まり、かなりの人々を教えた。弟子たちが初めて「キリスト者」と呼ばれたのは、アンティオキアであった。

11:27そのころ、預言者たちがエルサレムからアンティオキアへ下って来た。

11:28その一人、アガボが立ち、霊によって、全世界に大きな飢饉が起こると示した。その飢饉はクラウディオの時に起こった。

11:29弟子たちは一人ひとり、それぞれの余裕に応じて、ユダヤに住む兄弟たちへ、奉仕として援助を送ることに決めた。

11:30そして実行し、バルナバとサウロの手を通して、長老たちへ送った。

第12章

12:1そのころ、ヘロデ王は、教会の何人かを苦しめようと手をかけた。

12:2そして、ヨハネの兄弟ヤコブを剣で殺した。

12:3それがユダヤ人たちに喜ばれるのを見ると、さらにペトロも捕らえた。時は、除酵祭の日々であった。

12:4彼を捕らえて牢に入れ、四人一組の兵士四組に引き渡して見張らせた。過越祭の後、民の前に引き出すつもりだった。

12:5こうしてペトロは牢に監禁されていたが、教会は彼のために、ひたすら神に祈っていた。

12:6ヘロデが彼を引き出そうとしていた、その夜、ペトロは二本の鎖につながれ、二人の兵士の間で眠っていた。番人たちも戸口の前で牢を守っていた。

12:7すると、見よ、主の御使いが現れ、光が牢の部屋を照らした。御使いはペトロの脇をたたいて起こし、「急いで立ちなさい」と言った。鎖が彼の手から落ちた。

12:8御使いは言った。「帯を締め、履物を履きなさい。」ペトロはそのとおりにした。御使いはさらに言った。「上着をまとい、私について来なさい。」

12:9ペトロは外へ出てついて行ったが、御使いを通して起こっていることが現実だとは分からず、幻を見ているのだと思っていた。

12:10第一、第二の見張りを通り過ぎ、町に通じる鉄の門に来ると、門は二人のためにひとりでに開いた。二人が外へ出て、一つの通りを進むと、御使いはすぐに彼から離れた。

12:11ペトロは我に返って言った。「今、本当に分かった。主がご自分の御使いを遣わし、ヘロデの手から、またユダヤの民のあらゆる期待から、私を救い出してくださったのだ。」

12:12事情を悟ると、マルコとも呼ばれるヨハネの母、マリアの家へ行った。そこには多くの人が集まり、祈っていた。

12:13ペトロが門の戸をたたくと、ロデという女の奴隷が応対に出た。

12:14ペトロの声だと分かると、あまりの喜びに門を開けずに走り込み、ペトロが門の前に立っていると知らせた。

12:15人々は彼女に言った。「気が変になっている。」しかし彼女は、そのとおりだと言い張った。人々は「彼の御使いだ」と言った。

12:16ペトロはたたき続けていた。人々は門を開け、彼を見て非常に驚いた。

12:17ペトロは、手で静かにするよう合図し、主がどのように自分を牢から導き出してくださったかを説明した。そして、「このことをヤコブと兄弟たちに知らせてください」と言い、外へ出て、ほかの場所へ行った。

12:18夜が明けると、ペトロがどうなったのかと、兵士たちの間に大きな騒ぎが起こった。

12:19ヘロデは彼を捜したが見つからず、番人たちを取り調べ、彼らを連れて行くよう命じた。39その後、ユダヤからカイサリアへ下って滞在した。

12:20ヘロデはティルスとシドンの人々に激しく怒っていた。彼らはそろって彼のもとへ来て、王の寝室を管理するブラストを説得し、和解を求めた。彼らの地方は、王の領地から食料を得ていたからである。

12:21定められた日に、ヘロデは王の衣を着て演壇に座り、彼らに向かって演説していた。

12:22民衆は、「神の声だ、人間の声ではない」と叫び続けた。

12:23すると、たちまち主の御使いが彼を打った。神に栄光を帰さなかったからである。彼は虫に食われ、息絶えた。

12:24一方、神の言葉は広がり、ますます増していった。

12:25バルナバとサウロは、エルサレムへの奉仕を果たし、マルコとも呼ばれるヨハネを伴って戻った。40

第13章

13:1アンティオキアの教会には、預言者と教師たちがいた。バルナバ、ニゲルと呼ばれるシメオン、キレネ人ルキオ、領主ヘロデと共に育ったマナエン、そしてサウロである。

13:2彼らが主に仕え、断食していると、聖霊が言われた。「私が彼らを召した働きのために、バルナバとサウロを、私のために取り分けなさい。」

13:3そこで彼らは断食して祈り、二人の上に手を置いて、送り出した。

13:4二人は聖霊に送り出され、セレウキアへ下り、そこからキプロスへ船出した。

13:5サラミスに着くと、ユダヤ人の会堂で神の言葉を告げ知らせた。ヨハネも、助手として一緒にいた。

13:6島全体を通り抜けてパフォスに至ると、バルイエスという、魔術師で偽預言者のユダヤ人に出会った。

13:7彼は、賢明な人である総督セルギオ・パウロのそばにいた。総督はバルナバとサウロを呼び、神の言葉を聞きたいと願った。

13:8しかし、エリマ、すなわち魔術師は――その名はこう訳される――二人に抵抗し、総督を信仰からそらそうとした。

13:9サウロ、別名パウロは、聖霊に満たされて彼をじっと見つめ、

13:10言った。「あらゆる欺きと悪だくみに満ちた者、悪魔の子、すべての正義の敵よ、主のまっすぐな道を曲げることを、やめないのか。

13:11今、見よ、主の御手がお前の上にある。お前は目が見えなくなり、しばらく太陽を見ることができなくなる。」すると、たちまち霧と闇が彼にかかり、彼は手を引いてくれる人を捜して歩き回った。

13:12総督は、この出来事を見ると、主の教えに驚嘆して、信じた。

13:13パウロとその一行は、パフォスから船出し、パンフィリアのペルゲに着いた。しかし、ヨハネは彼らを離れてエルサレムへ戻った。

13:14彼らはペルゲから進み、ピシディアのアンティオキアに着いた。安息日に会堂に入り、席に着いた。

13:15律法と預言者の朗読が終わると、会堂の指導者たちは人を遣わして言った。「兄弟たち、民への励ましの言葉がおありなら、どうぞ話してください。」

13:16パウロは立ち上がり、手で合図して言った。「イスラエルの人たち、また神を畏れる人たち、聞いてください。

13:17このイスラエルの民の神は、私たちの先祖を選び、民がエジプトの地に寄留していた間に、その民を高め、掲げた腕をもって、そこから導き出されました。

13:18そして、およそ四十年、荒れ野で彼らの振る舞いを耐え忍ばれました。41

13:19また、カナンの地で七つの国民を倒し、その土地を、相続地として彼らに与えられました。

13:20ここまで、およそ四百五十年でした。その後、預言者サムエルに至るまで、裁き人たちを与えられました。42

13:21それから彼らは王を求め、神は、ベニヤミン族の人、キシュの子サウルを、四十年の間、彼らに与えられました。

13:22その人を退けた後、神はダビデを彼らの王として立て、こう証言されました。『私は、エッサイの子ダビデを見いだした。私の心にかなう人であり、私の望むことをすべて行う。』

13:23神は約束に従い、この人の子孫から、イスラエルのために、救い主イエスをもたらされました。

13:24この方が来られる前に、ヨハネはイスラエルの民すべてに、悔い改めの洗礼を前もって宣べ伝えました。

13:25ヨハネは自分の歩みを終えようとしたとき、こう言っていました。『あなたがたは、私を何者だと思うのか。私はその方ではない。見よ、私の後に来られる方がいる。私は、その方の足の履物をほどくにも値しない。』

13:26兄弟たち、アブラハムの子孫である人たち、また、あなたがたの中で神を畏れる人たち、この救いについての言葉は、私たちに送られました。

13:27というのも、エルサレムの住民と、その指導者たちは、この方を知らず、安息日ごとに読まれる預言者たちの声も理解しないまま、この方を裁くことによって、預言者たちの声を成就させたからです。

13:28死刑にすべき理由を何一つ見つけられなかったのに、この方が殺されるよう、ピラトに求めました。

13:29この方について書かれていることを、すべて成し終えると、木から降ろして墓に納めました。

13:30しかし神は、この方を死者の中から起こされました。

13:31この方は、ガリラヤからエルサレムへ共に上った人たちに、多くの日にわたって現れました。その人たちが今、民に向かってこの方を証しする証人です。

13:32そして私たちは、先祖たちに与えられた約束について、あなたがたに次の良い知らせを伝えています。

13:33神はイエスを起こすことによって、この約束を私たちの子らに実現されました。第二の詩編に、『あなたは私の子。今日、私はあなたを生んだ』と書かれているとおりです。43

13:34また、この方を、もはや腐敗に戻ることのない方として、死者の中から起こされたことについては、『私は、ダビデへの聖なる確かな約束を、あなたがたに与える』と語っておられます。44

13:35というのも、ほかの箇所でも、『あなたは、あなたに忠実な者が腐敗を見ることをお許しにならない』と言っているからです。

13:36実際、ダビデは、自分の世代で神の計画に仕えた後、眠りにつき、先祖たちのもとに加えられ、腐敗を見ました。

13:37しかし、神が起こされた方は、腐敗を見ませんでした。

13:38ですから、兄弟たち、知ってください。この方を通して、罪の赦しがあなたがたに告げ知らされます。また、あなたがたがモーセの律法によっては義とされることのできなかった、あらゆる事柄について、

13:39この方によって、信じる者は誰でも義とされるのです。45

13:40ですから、預言者たちの書で語られたことが、あなたがたの上に起こらないよう、気をつけなさい。

13:41『見よ、侮る者たち。驚いて、消え去れ。私は、お前たちの時代に、一つの業を行うからだ。誰かがお前たちに詳しく語っても、決して信じないような業を。』」

13:42二人が出て行くとき、人々は、次の安息日にもこれらのことを話してほしいと頼んだ。

13:43会堂の集まりが解散すると、多くのユダヤ人と、神を敬う改宗者たちが、パウロとバルナバについて来た。二人は彼らに語りかけ、神の恵みにとどまり続けるよう勧めた。

13:44次の安息日には、町のほとんどすべての人が、主の言葉を聞くために集まった。

13:45しかしユダヤ人たちは、その群衆を見るとねたみに満たされ、パウロの語ることに反論し、悪く言った。

13:46パウロとバルナバは大胆に言った。「神の言葉は、まずあなたがたに語られなければなりませんでした。しかし、あなたがたがそれを退け、自分たちは永遠の命に値しないと判断するので、見よ、私たちは異邦人へ向かいます。

13:47主は、私たちにこう命じられたからです。『私はあなたを、諸国の民の光として置いた。地の果てまで、救いとなるためだ。』」46

13:48異邦人たちはこれを聞いて喜び、主の言葉に栄光を帰した。そして、永遠の命へと定められていた人々は皆、信じた。47

13:49主の言葉は、その地方全体へ広がった。

13:50しかしユダヤ人たちは、神を敬う身分の高い女たちと、町の有力者たちを扇動し、パウロとバルナバに対する迫害を起こして、自分たちの地域から追い出した。

13:51二人は彼らに向かって足のほこりを払い落とし、イコニオンへ行った。

13:52弟子たちは、喜びと聖霊に満たされていた。

第14章

14:1イコニオンでも、二人は一緒にユダヤ人の会堂に入り、話した。その結果、大勢のユダヤ人とギリシア人が信じた。

14:2しかし、従わなかったユダヤ人たちは、異邦人をそそのかし、兄弟たちへの悪意を抱かせた。

14:3それでも二人はかなりの間とどまり、主により頼んで大胆に語った。主は、彼らの手を通してしるしと不思議な業を起こし、ご自分の恵みの言葉を証しされた。

14:4町の人々は二つに分かれ、ある者はユダヤ人につき、ある者は使徒たちについた。

14:5やがて、異邦人とユダヤ人が、自分たちの指導者たちと共に、二人を辱め、石で打とうと動き出した。

14:6二人はそれを知り、リカオニアの町リストラとデルベ、またその周辺地方へ逃れ、

14:7そこでも良い知らせを伝えていた。

14:8リストラに、足に力の入らない男が座っていた。生まれつき足が不自由で、一度も歩いたことがなかった。

14:9彼はパウロが語るのを聞いていた。パウロは彼をじっと見つめ、救われるための信仰があるのを認めると、48

14:10大声で言った。「自分の足で、まっすぐに立ちなさい。」彼は跳び上がって、歩き始めた。

14:11群衆はパウロがしたことを見て、リカオニアの言葉で声を上げた。「神々が人間の姿になって、私たちのところへ下って来た。」

14:12そしてバルナバをゼウス、パウロをヘルメスと呼んだ。パウロがおもな語り手だったからである。

14:13町の前に祀られているゼウスの祭司は、雄牛と花輪を門のところへ持って来て、群衆と共にいけにえを献げようとした。

14:14使徒バルナバとパウロはこれを聞くと、衣を引き裂き、群衆の中へ飛び込んで叫んだ。

14:15「皆さん、なぜこんなことをするのですか。私たちも、あなたがたと同じ性質を持つ人間です。これらのむなしいものから、生きておられる神に立ち返るようにと、あなたがたに良い知らせを伝えているのです。この神が、天と地と海、そしてそこにあるすべてのものを造られました。

14:16過ぎ去った世代には、諸国の民すべてがそれぞれの道を歩むことを、許しておられました。

14:17それでも、ご自分を証しせずにおられたわけではありません。善いことを行い、天から雨と実りの季節をあなたがたに与え、食べ物と喜びで、あなたがたの心を満たしてくださったのです。」

14:18二人はこう語っても、群衆が二人にいけにえを献げるのを、かろうじてやめさせることができた。

14:19しかし、アンティオキアとイコニオンからユダヤ人たちが来て、群衆を説き伏せ、パウロに石を投げつけた。そして死んだものと思って、町の外へ引きずり出した。

14:20ところが、弟子たちがパウロを取り囲むと、パウロは起き上がって町へ入った。翌日、バルナバと共にデルベへ出発した。

14:21二人はその町で良い知らせを伝え、多くの人を弟子にした後、リストラ、イコニオン、アンティオキアへ戻った。

14:22弟子たちの心を強め、信仰にとどまり続けるよう励まし、「私たちは多くの苦難を通って、神の王国に入らなければならない」と語った。

14:23そして教会ごとに、彼らのために長老たちを任命し、断食を伴う祈りをして、彼らが信じた主に、彼らを委ねた。49

14:24二人はピシディアを通って、パンフィリアへ来た。

14:25ペルゲで御言葉を語り、アタリアへ下り、

14:26そこからアンティオキアへ船出した。そこは、今や成し遂げた働きのために、二人が神の恵みに委ねられて送り出された場所である。

14:27到着して教会を集めると、神が自分たちと共に行われたすべてのこと、また、異邦人に信仰の扉を開かれたことを報告した。

14:28そして、かなりの間、弟子たちと共に過ごした。

第15章

15:1ユダヤから下って来た何人かが、兄弟たちに、「モーセの慣習に従って割礼を受けなければ、救われることはできません」と教えていた。

15:2パウロとバルナバと彼らとの間に、大きな対立と論争が起こった。そこで人々は、この問題について、パウロとバルナバ、それに自分たちの中のほかの何人かを、エルサレムの使徒たちと長老たちのもとへ上らせることに決めた。

15:3彼らは教会に送り出され、フェニキアとサマリアを通りながら、異邦人が立ち返ったことを詳しく話し、すべての兄弟たちに大きな喜びをもたらした。

15:4エルサレムに着くと、教会と使徒たち、長老たちに迎えられ、神が自分たちと共に行われたすべてのことを報告した。

15:5しかし、ファリサイ派に属し、信者となっていた者たちの何人かが立ち上がり、「彼らに割礼を施し、モーセの律法を守るよう命じなければならない」と言った。

15:6使徒たちと長老たちは、この問題を検討するために集まった。

15:7多くの議論の後、ペトロは立ち上がり、彼らに言った。「兄弟たち、あなたがた自身が知っているとおり、神は初めのころ、あなたがたの間で私を選ばれました。私の口を通して、異邦人が福音の言葉を聞いて信じるためです。50

15:8心をご存じの神は、私たちにと同じように彼らにも聖霊を与え、彼らを認める証しをされました。

15:9また、信仰によって彼らの心を清め、私たちと彼らとの間に、何の区別も設けられませんでした。

15:10ですから今、なぜ、私たちの先祖も私たちも担えなかった軛を弟子たちの首に負わせて、神を試すのですか。

15:11むしろ私たちは、主イエスの恵みによって、彼らと同じ仕方で救われると信じているのです。」

15:12集まっていた者たちは皆、静かになり、バルナバとパウロに耳を傾けた。二人は、自分たちを通して神が異邦人の間で行われた数々のしるしと不思議な業を詳しく話した。

15:13二人が話し終えると、ヤコブが答えた。「兄弟たち、私の言うことを聞いてください。

15:14シメオンは、神が初めに心を向けられ、異邦人の中からご自分の名のために民を迎え取られたことを説明しました。

15:15これと、預言者たちの言葉は一致しています。こう書かれているとおりです。

15:16『その後、私は戻り、倒れたダビデの幕屋を建て直す。その崩れたところを建て直し、再び立てる。

15:17人々のうちの残りの者たちと、私の名をもって呼ばれている諸国の民すべてが、主を求めるためである。これらのことを行われる主は、こう言われる。

15:18これらは、古くから知られていることだ。』51

15:19それゆえ私は、異邦人の中から神に立ち返る人々を、悩ませるべきではないと判断します。

15:20ただ、偶像に伴う汚れ、淫らな行い、絞め殺されたもの、血を避けるように、手紙で伝えるべきです。52

15:21モーセには、昔から、どの町にもその教えを宣べ伝える者がいて、安息日ごとに会堂で読まれているからです。」

15:22そこで使徒たちと長老たちは、教会全体と共に、自分たちの中から人を選び、パウロとバルナバに同行させて、アンティオキアへ遣わすことにした。選ばれたのは、バルサバと呼ばれるユダとシラスで、二人とも兄弟たちの間で指導する者であった。

15:23彼らに託した手紙は、こうだった。「あなたがたの兄弟である使徒たちと長老たちから、アンティオキア、シリア、キリキアの、異邦人出身の兄弟たちへ。挨拶を送ります。

15:24私たちの中の何人かが出て行き、私たちの指示も受けずに、言葉であなたがたを騒がせ、心を乱したと聞きました。

15:25そこで私たちは心を一つにし、人を選んで、私たちの愛するバルナバとパウロに同行させ、あなたがたのもとへ遣わすことにしました。

15:26この二人は、私たちの主イエス・キリストの名のために、自分たちの命を差し出してきた人たちです。

15:27ですから、ユダとシラスを遣わしました。彼らも同じことを、口頭で知らせます。

15:28というのも、聖霊と私たちは、次の必要なことのほかには、あなたがたに何の重荷も負わせないのがよいと考えたからです。

15:29偶像に献げたもの、血、絞め殺されたもの、淫らな行いを避けることです。これらから身を守れば、正しく行うことになるでしょう。健やかでありますように。」

15:30遣わされた者たちはアンティオキアへ下り、人々を集めて手紙を渡した。

15:31人々はそれを読み、その励ましを喜んだ。

15:32ユダとシラスは、自分たちも預言者だったので、多くの言葉で兄弟たちを励まし、強めた。

15:33しばらく過ごした後、二人は兄弟たちから平和のうちに、遣わした人々のもとへ送り出された。

15:35しかし、パウロとバルナバはアンティオキアにとどまり、ほかの多くの人と共に、主の言葉を教え、良い知らせを伝えていた。

15:36数日後、パウロはバルナバに言った。「主の言葉を告げ知らせたすべての町へ戻り、兄弟たちがどうしているか、訪ねてみましょう。」

15:37バルナバは、マルコと呼ばれるヨハネも連れて行きたいと思った。

15:38しかしパウロは、パンフィリアで自分たちを離れ、働きに同行しなかった者を、連れて行くべきではないと考えた。

15:39激しい衝突が起こり、二人は互いに別れた。バルナバはマルコを連れ、キプロスへ船出した。

15:40パウロはシラスを選び、兄弟たちから主の恵みに委ねられて、出発した。

15:41そしてシリアとキリキアを巡り、教会を強めていった。

第16章

16:1パウロはデルベ、そしてリストラにも着いた。そこにはティモテという弟子がいた。母は信者であるユダヤ人、父はギリシア人だった。

16:2彼は、リストラとイコニオンの兄弟たちから、良い評判を得ていた。

16:3パウロは彼を旅に同行させたいと考え、迎え入れて割礼を施した。その地方にいるユダヤ人たちを考慮してのことである。皆、彼の父がギリシア人だと知っていたからだ。

16:4彼らは町々を巡りながら、エルサレムの使徒たちと長老たちが決めた規定を守るようにと、人々に伝えた。

16:5こうして各地の教会は信仰を強められ、日ごとに人数を増していった。

16:6彼らは、アジアで御言葉を語ることを聖霊に禁じられ、フリギアとガラティアの地方を通った。

16:7ミシアの近くに来て、ビティニアへ行こうとしたが、イエスの霊は彼らに、それをお許しにならなかった。

16:8そこでミシアを通り過ぎ、トロアスへ下った。

16:9夜、パウロに幻が現れた。一人のマケドニア人が立ち、「マケドニアに渡って来て、私たちを助けてください」と頼んでいた。

16:10パウロがこの幻を見ると、私たちはすぐにマケドニアへ出発しようとした。神が、そこの人々に良い知らせを伝えるために、私たちを召しておられると判断したからである。

16:11私たちはトロアスから船出し、サモトラケへまっすぐ進み、翌日ネアポリスへ、

16:12そこからフィリピへ行った。そこはマケドニアのうち、その町が属する地区の主要な町であり、植民市である。私たちはこの町に数日滞在した。53

16:13安息日に、祈りの場所があると思って、門の外の川辺へ行った。私たちは座って、集まっていた女たちに語った。54

16:14ティアティラの町の紫布商人で、神を敬うリディアという女が、聞いていた。主が彼女の心を開き、パウロの話すことに注意を向けさせてくださった。

16:15彼女と家の者が洗礼を受けると、彼女は頼んだ。「私を主に忠実な者と認めてくださったのなら、私の家に来て泊まってください。」そして、強く勧めて私たちを承知させた。

16:16私たちが祈りの場所へ行く途中、占いの霊につかれた女の奴隷に出会った。彼女は占いによって、主人たちに多くの利益をもたらしていた。55

16:17彼女はパウロと私たちの後をついて来て、叫び続けた。「この人たちは、いと高き神の奴隷です。あなたがたに、救いの道を告げ知らせています。」

16:18彼女は何日もこれを続けた。パウロはひどくいら立ち、振り向いて霊に言った。「イエス・キリストの名によって命じる。この女から出て行け。」霊はその瞬間に出て行った。

16:19主人たちは、利益を得る望みが消えたのを見ると、パウロとシラスを捕らえ、広場へ、役人たちのもとへ引きずって行った。56

16:20二人を行政官たちの前へ連れて行き、言った。「この者たちはユダヤ人で、私たちの町を騒がせています。

16:21ローマ人である私たちが、受け入れることも行うことも許されない慣習を、告げ知らせています。」

16:22群衆も一緒になって二人を襲った。行政官たちは二人の衣を引き裂いてはぎ取り、棒で打つよう命じた。

16:23何度も打ちたたいた後、牢に投げ込み、牢の番人に厳重に見張るよう命じた。

16:24番人はこの命令を受け、二人を奥の牢に入れ、足を木の足枷にしっかり固定した。

16:25真夜中ごろ、パウロとシラスは祈りながら神を賛美する歌を歌っていた。囚人たちは二人に耳を傾けていた。

16:26突然、大きな地震が起こり、牢の土台が揺れた。すぐに扉がすべて開き、皆の拘束が解けた。

16:27番人は目を覚まし、牢の扉が開いているのを見ると、囚人たちが逃げたと思い、剣を抜いて自分を殺そうとした。

16:28しかしパウロは大声で叫んだ。「自分を傷つけてはいけない。私たちは皆、ここにいるのだから。」

16:29番人は明かりを求めてから、中へ飛び込み、震えながらパウロとシラスの前にひれ伏した。

16:30そして二人を外へ連れ出し、言った。「先生方、救われるためには、私は何をしなければなりませんか。」

16:31二人は言った。「主イエスを信じなさい。そうすれば、あなたも家の者も救われます。」

16:32そして、彼と、その家にいたすべての人に、主の言葉を語った。

16:33番人は、夜のその時刻に二人を連れて行き、傷を洗った。そして、彼自身も、彼に属する者たちも皆、すぐに洗礼を受けた。

16:34彼は二人を家へ上げ、食事を用意し、神を信じた者として、家の者皆と共に大いに喜んだ。57

16:35夜が明けると、行政官たちは警吏たちを遣わし、「あの者たちを釈放せよ」と言わせた。

16:36番人はその言葉をパウロに伝えた。「行政官たちが、お二人を釈放するようにと人を遣わしました。さあ、出て、平和のうちにお行きください。」

16:37しかしパウロは彼らに言った。「あの人たちは、ローマ市民である私たちを、有罪判決もないまま公衆の前で打ちたたき、牢に投げ込んだ。今度はひそかに放り出すというのか。そうはいかない。彼ら自身が来て、私たちを連れ出すがよい。」58

16:38警吏たちはこの言葉を行政官たちに伝えた。二人がローマ市民だと聞くと、行政官たちは恐れ、

16:39やって来て二人に懇願した。そして連れ出し、町を離れてほしいと頼み続けた。

16:40二人は牢を出るとリディアのところへ行き、兄弟たちに会って励まし、出発した。

第17章

17:1一行はアンフィポリスとアポロニアを通り、テサロニケに着いた。そこにはユダヤ人の会堂があった。

17:2パウロは、いつものように彼らのところへ入り、三度の安息日にわたって、聖書に基づいて彼らと論じた。

17:3キリストが苦しみを受け、死者の中から復活しなければならなかったこと、また、「私があなたがたに告げ知らせている、このイエスこそキリストです」ということを、説明し、根拠を示して論じた。

17:4彼らのうちの何人かは納得し、パウロとシラスに加わった。神を敬うギリシア人の大勢と、かなりの数の有力な女たちも同様だった。

17:5しかし、ユダヤ人たちはねたみ、広場にたむろする者たちのうちから、何人かの悪い男たちを引き入れ、群衆を集めて町を騒がせた。そして、ヤソンの家に押しかけ、二人を民衆の前へ引き出そうとした。

17:6二人が見つからないので、ヤソンと何人かの兄弟たちを町の役人たちのもとへ引きずり、叫んだ。「世界中をかき乱した者たちが、ここにも来ています。

17:7ヤソンが彼らを迎え入れたのです。彼らは皆、イエスという別の王がいると言って、皇帝の命令に逆らっています。」

17:8彼らはこう言って、これを聞いていた群衆と町の役人たちを動揺させた。

17:9役人たちはヤソンとほかの者たちから保証を受け取って、釈放した。

17:10兄弟たちはすぐ、その夜のうちにパウロとシラスをベレアへ送り出した。二人は着くと、ユダヤ人の会堂へ行った。

17:11ここのユダヤ人たちは、テサロニケのユダヤ人たちよりも心が開かれていた。実に、あふれる熱意をもって御言葉を受け入れ、本当にそのとおりかと、毎日、聖書を調べた。

17:12それで、彼らのうちの多くが信じた。身分の高いギリシア人の女たちも、男たちも、かなりの数が信じた。

17:13しかしテサロニケのユダヤ人たちは、ベレアでもパウロが神の言葉を告げ知らせていると知ると、そこへも来て、群衆を扇動し、騒がせた。

17:14そこで兄弟たちはすぐ、パウロを送り出して海辺まで行かせた。シラスとティモテは、その地にとどまった。

17:15パウロを案内する人々は、アテネまで連れて行った。そして、シラスとティモテに、できるだけ早くパウロのもとへ来るようにとの指示を受けて、出発した。

17:16パウロはアテネで二人を待っていたが、町が偶像で満ちているのを見て、彼の霊はその内で激しく憤っていた。

17:17そこで、会堂ではユダヤ人や神を敬う人々と、広場では毎日、そこに居合わせる人々と、論じ合っていた。

17:18エピクロス派とストア派の哲学者の何人かも、彼と議論した。ある者は、「この受け売り屋は、いったい何を言おうとしているのだろうか」と言い、ほかの者は、「異国の神々を告げ知らせる者らしい」と言った。彼がイエスと復活の良い知らせを伝えていたからである。

17:19彼らはパウロを連れてアレオパゴスへ行き、言った。「あなたの語る、この新しい教えが何なのか、知ることができますか。59

17:20耳慣れないことを持ち込んでいるので、それがどういう意味か、知りたいのです。」

17:21アテネ人も、滞在している外国人も皆、何かもっと新しいことを話したり聞いたりすることだけに、時を費やしていた。

17:22パウロはアレオパゴスの真ん中に立って言った。「アテネの人たち、あなたがたは、あらゆる点で、とても神々を敬う方々だと見受けます。60

17:23というのも、私は歩きながら、あなたがたの拝むものをよく見ていて、『知られない神に』と刻まれた祭壇も見つけました。ですから、あなたがたが知らずに敬っているものを、私はあなたがたに告げ知らせます。

17:24世界と、その中にあるすべてのものを造られた神は、天と地の主であり、人の手で造られた神殿には住まわれません。

17:25また、何かを必要とするかのように、人間の手で世話をされる方でもありません。ご自身が、すべての人に命と息と、すべてのものを与えておられるのです。

17:26この神は、一人から人間のすべての民族を造り、地の全面に住まわせ、彼らに割り当てられた時期と、住む場所の境界を定められました。61

17:27それは、人々が、手探りででも神を探し当てられはしないかと、神を求めるためです。もっとも、神は私たち一人ひとりから遠く離れてはおられません。

17:28神のうちで、私たちは生き、動き、存在しているからです。あなたがたの詩人の何人かも、『私たちもその方の子孫だからだ』と言っているとおりです。62

17:29私たちは神の子孫なのですから、神なるものが、人間の技術や構想で刻まれた金、銀、石に似ていると、私たちは考えるべきではありません。

17:30それで神は、知らなかった時代を見過ごしてこられましたが、今は、どこでも、すべての人に悔い改めるよう命じておられます。

17:31ご自分が定めた一人の人によって世界を正しく裁く、その日を設けられたからです。その人を死者の中から起こし、すべての人に確証を与えられました。」

17:32死者の復活と聞くと、ある者はあざけり、ほかの者は、「このことについて、またあなたの話を聞きましょう」と言った。

17:33こうしてパウロは、彼らの中から出て行った。

17:34しかし、何人かは彼に加わり、信じた。その中には、アレオパゴスの一員ディオニシオ、ダマリスという女、また、彼らと共にほかの人々もいた。63

第18章

18:1その後、パウロはアテネを離れ、コリントへ行った。

18:2そこで、最近イタリアから来た、ポントス生まれのユダヤ人アキラと、その妻プリスキラに出会った。アキラがイタリアから来たのは、クラウディオがすべてのユダヤ人にローマを離れるよう命じていたためである。パウロは二人のところへ行き、

18:3同じ職業だったので、その家に住んで働いた。彼らの職業は天幕作りだったのである。

18:4安息日ごとに会堂で論じ、ユダヤ人とギリシア人を説得していた。

18:5シラスとティモテがマケドニアから下って来ると、パウロは御言葉に専念し、イエスこそキリストであると、ユダヤ人たちに厳かに証言し続けた。

18:6しかし、彼らが反抗して悪く言ったので、パウロは衣を振り払って言った。「あなたがたの血は、あなたがた自身の頭に帰する。私は潔白だ。これからは、異邦人のもとへ行く。」64

18:7そして、そこを移り、神を敬うティティオ・ユストという人の家へ入った。その家は会堂に隣接していた。

18:8会堂の指導者クリスポは、家の者すべてと共に主を信じた。多くのコリント人も、話を聞いて次々に信じて、洗礼を受けていった。

18:9夜、主が幻を通してパウロに言われた。「恐れるな。語り続け、黙ってはならない。

18:10私があなたと共にいて、誰もあなたに襲いかかって害を加えはしないからだ。この町には、私の民が大勢いるからだ。」

18:11パウロは一年六か月とどまり、人々の間で神の言葉を教えた。

18:12ガリオンがアカイアの総督だったとき、ユダヤ人たちは一斉にパウロに詰め寄り、裁判の席へ連れて行って、

18:13言った。「この男は、法に反して神を敬うよう、人々を説き伏せています。」65

18:14パウロが口を開こうとすると、ガリオンはユダヤ人たちに言った。「ユダヤ人たちよ、不正行為や悪質な犯罪であれば、当然、お前たちの訴えを辛抱して聞くところだ。

18:15しかし、言葉や名称、お前たちの律法をめぐる問題なら、自分たちで処理するがよい。私は、そのような事柄の裁判官になるつもりはない。」

18:16そして、彼らを裁判の席から追い払った。

18:17すると皆が、会堂の指導者ソステネを捕らえ、裁判の席の前で打ちたたいた。しかしガリオンは、これらのことを少しも気にかけなかった。66

18:18パウロはなお、かなりの日々を過ごした後、兄弟たちに別れを告げ、プリスキラとアキラを伴って、シリアへ船出した。その前にケンクレアイで髪を刈っていた。誓願を立てていたからである。67

18:19一行はエフェソに着き、パウロは二人をそこに残した。自分は会堂に入り、ユダヤ人たちと論じた。

18:20人々は、もっと長くとどまってほしいと頼んだが、彼は承知せず、

18:21「神がお望みなら、またあなたがたのところへ戻ります」と別れを告げ、エフェソから船出した。

18:22カイサリアに着くと、上って行って教会に挨拶し、それからアンティオキアへ下った。68

18:23しばらく過ごした後、再び出発し、ガラティアの地方とフリギアを順に巡り、すべての弟子たちを強めた。

18:24一方、アレクサンドリア生まれの、アポロというユダヤ人がエフェソに来た。雄弁で、聖書によく通じた人だった。

18:25彼は主の道を教えられており、霊に燃え、イエスについて正確に語り、教えていた。ただし、知っていた洗礼はヨハネの洗礼だけだった。

18:26彼は会堂で大胆に語り始めた。プリスキラとアキラは、それを聞くと彼を迎え入れ、神の道をさらに正確に説明した。

18:27アポロがアカイアへ渡りたいと思うと、兄弟たちは彼を励まし、そこの弟子たちに、迎え入れるよう手紙を書いた。彼は到着すると、恵みによって信じた人々を、大いに助けた。69

18:28イエスこそキリストであると聖書によって示し、公衆の前で、力強くユダヤ人たちの議論を論破したからである。

第19章

19:1アポロがコリントにいる間、パウロは高地を通ってエフェソに来た。そして何人かの弟子に出会い、

19:2尋ねた。「信じたとき、聖霊を受けましたか。」彼らは答えた。「いいえ、聖霊があるかどうかさえ、聞いていません。」

19:3パウロは尋ねた。「それなら、何に入る洗礼を受けたのですか。」彼らは答えた。「ヨハネの洗礼です。」

19:4パウロは言った。「ヨハネは悔い改めの洗礼を授け、自分の後に来られる方を信じるようにと、民に語りました。それは、イエスを信じることです。」

19:5彼らはこれを聞いて、主イエスの名に入る洗礼を受けた。

19:6パウロが彼らの上に手を置くと、聖霊が彼らの上に臨み、彼らはさまざまな言葉で語り、預言した。

19:7その男たちは、全部で十二人ほどだった。

19:8パウロは会堂に入り、三か月の間、大胆に語り、神の王国について論じ、説得に努めた。

19:9しかし、ある者たちは頑なになって説得に応じず、群衆の前でこの道を悪く言った。そこで彼は彼らから離れ、弟子たちを分けて、毎日、ティラノの講堂で論じた。

19:10これが二年間続いたので、アジアに住む者は皆、ユダヤ人もギリシア人も、主の言葉を聞いた。

19:11神は、パウロの手を通して、並外れた力ある業を行われた。

19:12そのため、彼の肌から取った手ぬぐいや前掛けさえ病人のところへ運ばれ、病が彼らから去り、悪い霊も出て行った。

19:13すると、巡回するユダヤ人の悪霊払いの何人かも、悪い霊につかれた人々に主イエスの名を唱えようとし、「パウロが宣べ伝えるイエスにかけて、お前たちに厳命する」と言った。

19:14ユダヤ人の祭司長スケワという人の七人の息子が、これを行っていた。

19:15しかし、悪い霊は答えた。「イエスは知っている。パウロも承知している。だが、お前たちは何者だ。」

19:16そして、その悪い霊につかれた人は、彼らに飛びかかり、二人とも押さえつけて打ち負かしたので、彼らは裸で、傷を負ったまま、その家から逃げ出した。70

19:17このことは、エフェソに住むすべてのユダヤ人とギリシア人に知られ、皆に恐れが生じ、主イエスの名がたたえられた。

19:18信じた人々の多くが、やって来て、自分たちの行いを告白し、明らかにしていた。

19:19魔術を行っていた者のうち、かなりの人々が、書物を持ち寄り、皆の前で焼いた。その値段を計算すると、銀貨五万枚になった。

19:20このように、主の言葉は力強く広がり、力をふるっていった。71

19:21これらのことが済むと、パウロは霊において、マケドニアとアカイアを通り、エルサレムへ行くことを決めた。「そこへ行った後、ローマも見なければならない」と言った。

19:22自分に仕える者たちのうち二人、ティモテとエラストをマケドニアへ遣わし、自分はしばらくアジアにとどまった。

19:23そのころ、この道をめぐって、少なからぬ騒動が起こった。

19:24というのも、デメトリオという銀細工師がいた。アルテミスの神殿をかたどった銀の模型を作り、職人たちに少なからぬ稼ぎをもたらしていたからである。72

19:25彼は職人たちと、同じような仕事をする者たちを集めて言った。「皆さん、私たちの豊かさが、この稼ぎから来ていることは、ご存じでしょう。

19:26そして、あのパウロが、手で造られたものは神々ではないと言って、エフェソだけでなく、アジアのほぼ全域で、多くの人を説き伏せ、考えを変えさせたことを、見聞きしているでしょう。

19:27私たちの仕事が信用を失うおそれがあるだけではありません。偉大な女神アルテミスの神殿も無価値と見なされ、アジア全体と世界が敬う女神の威厳まで、失われるおそれがあるのです。」

19:28これを聞くと、人々は怒りに満たされ、「エフェソ人のアルテミスは偉大だ」と叫んだ。

19:29町は混乱に満ち、人々は、パウロの旅の同行者であるマケドニア人ガイオとアリスタルコを捕らえて、一斉に劇場へなだれ込んだ。

19:30パウロは民衆の中へ入ろうとしたが、弟子たちは許さなかった。

19:31アジアの高官たちの中にも、パウロの友人が何人かいて、人を遣わし、劇場に身をさらさないようにと頼んだ。

19:32さて、人々はそれぞれ別のことを叫んでいた。集会が混乱し、大多数は、何のために集まったのかも知らなかったからである。

19:33ユダヤ人たちがアレクサンドロを前へ押し出すと、群衆の中から、人々は彼に発言を促した。アレクサンドロは手で合図し、民衆に弁明しようとした。73

19:34しかし、彼がユダヤ人だと分かると、皆が一つの声となり、二時間ほど、「エフェソ人のアルテミスは偉大だ」と叫び続けた。

19:35町の書記官は群衆を静め、言った。「エフェソの人たち、エフェソ人の町が、偉大なアルテミスと、天から落ちた像の守り手であることを、知らない人がいるでしょうか。74

19:36これは否定しようがないのですから、静かにして、軽率なことをしてはなりません。

19:37あなたがたが連れて来たこの人たちは、神殿を略奪した者でも、私たちの女神を冒瀆する者でもないのですから。

19:38ですから、デメトリオと、その仲間の職人たちに、誰かを訴える理由があるなら、法廷が開かれ、総督たちもいます。そこで互いに訴えればよいのです。

19:39しかし、あなたがたがそれ以上のことを求めるなら、正規の民会で解決されるでしょう。

19:40実際、今日のことについては、私たちが騒乱の罪で訴えられる危険さえあります。この騒ぎを正当化できる理由がなく、説明がつかないことになるからです。」こう言って、集会を解散させた。

第20章

20:1騒ぎが収まると、パウロは弟子たちを呼び、励ましてから別れを告げ、マケドニアへ向けて出発した。

20:2その地方を巡り、多くの言葉で人々を励ました後、ギリシアに来た。

20:3そこで三か月を過ごした。シリアへ船出しようとしたとき、ユダヤ人たちが彼に対して陰謀を企てたので、マケドニアを通って戻ることにした。

20:4彼に同行したのは、ベレアのピロの子ソパトロ、テサロニケ人のアリスタルコとセクンド、デルベのガイオ、そしてティモテ、アジア出身のティキコとトロフィモである。

20:5彼らはトロアスへ行き、そこで私たちを待っていた。

20:6私たちは除酵祭の日々の後、フィリピから船出し、五日でトロアスの彼らのところに着き、そこで七日間過ごした。

20:7週の初めの日、私たちはパンを裂くために集まった。パウロは翌日出発する予定だったので、人々に話し、真夜中まで話を続けた。

20:8私たちが集まっていた階上の部屋には、多くのともし火があった。

20:9エウティコという若者が窓辺に座り、深い眠りに落ちかけていた。パウロが長く話し続けるうち、眠り込んで三階から落ち、抱え上げられたときには死んでいた。

20:10パウロは下へ降り、彼の上に身を伏せて抱きしめ、言った。「騒がないでください。命はこの人の中にあるのですから。」

20:11そして上へ戻り、パンを裂いて食べ、夜明けまで長く話し合った後、出発した。

20:12人々は生きている若者を連れて帰り、大いに慰められた。

20:13私たちは先に船へ行き、アソスへ向けて船出した。そこでパウロを乗せる予定だった。彼自身が陸路で行くつもりで、そのように手配していたのである。

20:14アソスで彼が私たちと合流すると、船に乗せて、ミティレネへ行った。

20:15そこから船出し、翌日キオスの向かいに着き、その次の日にはサモスに寄り、さらに翌日、ミレトに着いた。

20:16パウロは、アジアで時間を費やさないように、エフェソには寄らずに通り過ぎると決めていたのである。できれば五旬祭の日にエルサレムに着くよう、急いでいたからである。

20:17ミレトからエフェソへ人を遣わし、教会の長老たちを呼び寄せた。

20:18彼らが来ると、パウロは言った。「私がアジアに足を踏み入れた最初の日から、ずっとあなたがたとどのように過ごしたか、あなたがたは知っています。

20:19私は、まったくへりくだり、涙を流し、ユダヤ人たちの陰謀によって私の身に起こった試練の中で、主に仕えました。

20:20あなたがたの益になることは何一つためらわずに知らせ、公の場でも家々でも教え、

20:21ユダヤ人にもギリシア人にも、神に向かう悔い改めと、私たちの主イエスへの信仰を、厳かに証言してきたことも、あなたがたは知っています。

20:22今、見よ、私は霊に縛られて、エルサレムへ行きます。そこで私の身に何が起こるのかは知りません。75

20:23ただ、どの町でも聖霊が、拘束と苦難が私を待っていると、私に厳かに証言しておられます。

20:24しかし私は、自分の走る道のりと、主イエスから受けた務めを全うするためなら、自分の命を少しも惜しいとは思いません。その務めとは、神の恵みの福音を厳かに証言することです。76

20:25今、見よ、私は知っています。私がその間を巡り歩いて王国を宣べ伝えたあなたがた一同は、もう私の顔を見ることはありません。

20:26ですから今日、あなたがたに証言します。すべての人の血について、私は潔白です。

20:27神の計画をすべてあなたがたに知らせることを、ためらわなかったからです。

20:28自分自身と、群れ全体に注意しなさい。聖霊は、その群れの中で、あなたがたを監督する者とされました。神がご自身の血を通してご自分のものとされた、神の教会を養うためです。77

20:29私は知っています。私が去った後、凶暴な狼があなたがたの中に入り込み、群れを容赦しません。

20:30あなたがた自身の中からも、曲がったことを語り、弟子たちを引き離して自分たちに従わせようとする者たちが立ち上がります。

20:31ですから、目を覚ましていなさい。私が三年間、夜も昼も、涙を流しながら一人ひとりを諭し続けたことを、思い出しなさい。

20:32今、私はあなたがたを、神と、その恵みの言葉に委ねます。その言葉は、あなたがたを建て上げることができ、また、聖なる者とされたすべての人々の間で、相続の分を与えることができます。78

20:33私は誰の銀も金も衣も、欲しがりませんでした。

20:34この手が、自分と同行者たちの必要を満たしたことは、あなたがた自身が知っています。

20:35このように働いて、弱い人々を助けなければならないことを、私はすべてにおいて示しました。また、『受けるよりも、与えるほうが幸いだ』と言われた、主イエスご自身の言葉を覚えていなければなりません。」

20:36こう言うと、パウロはひざまずき、皆と共に祈った。

20:37皆は激しく泣き、パウロの首に抱きついて、何度も口づけした。

20:38もう彼の顔を見ることはないと、彼が言ったことを、何よりも悲しんでいた。そして、船まで彼を見送った。

第21章

21:1私たちは彼らから身を引き離して、船出して、まっすぐコスへ行き、翌日ロドスへ、そこからパタラへ行った。

21:2フェニキアへ渡る船を見つけ、乗り込んで船出した。

21:3キプロスが見えてくると、それを左に見ながらシリアへ航海し、ティルスで上陸した。そこで船が積み荷を下ろすことになっていたからである。

21:4私たちは弟子たちを捜し当て、そこに七日間滞在した。彼らは霊を通して、パウロに、エルサレムに足を踏み入れないよう言い続けた。

21:5滞在の日々が終わると、私たちは出発した。皆が、妻や子どもたちと一緒に、町の外まで見送ってくれた。私たちは浜辺でひざまずき、祈り、

21:6互いに別れを告げて船に乗った。彼らは自分の家へ戻った。

21:7私たちはティルスからの航海を終えてプトレマイスに着き、兄弟たちに挨拶し、一日、彼らのところに泊まった。

21:8翌日、出発してカイサリアに来た。七人の一人である、福音を伝える者フィリポの家に入り、彼のところに滞在した。

21:9彼には、預言する四人の未婚の娘がいた。

21:10私たちが数日滞在している間に、アガボという預言者がユダヤから下って来た。

21:11彼は私たちのところに来て、パウロの帯を取り、自分の足と手を縛って言った。「聖霊はこう言われる。この帯の持ち主を、エルサレムでユダヤ人たちはこのように縛り、異邦人の手に引き渡す。」

21:12私たちも土地の人々もこれを聞くと、エルサレムへ上らないよう、パウロにしきりに頼んだ。

21:13そのときパウロは答えた。「泣いて私の心を打ち砕くとは、何をしているのですか。私は、主イエスの名のために、エルサレムで縛られるだけでなく、死ぬことも覚悟しているのです。」

21:14彼が説得に応じないので、私たちは、「主の御心が行われますように」と言って、それ以上勧めるのをやめた。

21:15その後、私たちは旅の支度をして、エルサレムへ上って行った。

21:16カイサリアの弟子たちの何人かも同行し、私たちが泊めてもらうことになるキプロス人ムナソンのもとへ案内してくれた。彼は古くからの弟子だった。

21:17エルサレムに着くと、兄弟たちは喜んで私たちを迎えてくれた。

21:18翌日、パウロは私たちと共にヤコブのところへ行った。長老たちも皆、集まって来た。

21:19パウロは挨拶し、自分の奉仕を通して神が異邦人の間で行われたことを、一つひとつ説明した。

21:20彼らはこれを聞いて神に栄光を帰し、パウロに言った。「兄弟よ、ユダヤ人の中に、何万人もの信者がいるのを見ているでしょう。皆、律法に熱心です。

21:21彼らは、あなたについて、異邦人の間にいるすべてのユダヤ人に、モーセから離れるよう教え、子どもたちに割礼を施すな、慣習に従って歩むなと言っている、と聞かされています。

21:22では、どうすればよいでしょう。あなたが来たことは、必ず聞くでしょう。

21:23そこで、私たちの言うとおりにしてください。私たちの中には、自ら誓願を立てている四人の男がいます。

21:24彼らを連れて一緒に清めを受け、彼らが頭をそるための費用を払ってください。そうすれば皆、あなたについて聞かされたことが事実ではなく、あなた自身も律法を守って歩んでいると分かるでしょう。

21:25信じた異邦人については、私たちは、偶像に献げたもの、血、絞め殺されたもの、淫らな行いを避けるようにと決め、手紙を送りました。」

21:26そこでパウロは翌日、その男たちを連れて一緒に清めを受け、神殿に入り、それぞれのための献げ物が献げられるまでの、清めの期間の満了を告げた。79

21:27七日間が終わろうとしたとき、アジアから来たユダヤ人たちは、神殿でパウロを見て、群衆全体を騒がせ、彼を捕らえて、

21:28叫んだ。「イスラエルの人たち、助けてくれ。この男は、どこでも誰にでも、民と律法とこの場所に逆らうことを教えている者だ。そのうえ、ギリシア人たちまで神殿に連れ込み、この聖なる場所を汚した。」

21:29彼らは以前、エフェソ人トロフィモが町でパウロと一緒にいるのを見て、パウロが彼を神殿に連れ込んだと思ったのである。

21:30町全体が動揺し、民が駆け集まった。彼らはパウロを捕らえ、神殿の外へ引きずり出した。すぐに扉が閉じられた。

21:31人々がパウロを殺そうとしていたとき、エルサレム全体が混乱しているとの知らせが、部隊の千人隊長に届いた。

21:32彼はすぐに兵士と百人隊長たちを連れ、人々のところへ駆け下りた。人々は千人隊長と兵士たちを見ると、パウロを打つのをやめた。

21:33千人隊長は近づいて彼を捕らえ、二本の鎖で縛るように命じ、何者なのか、何をしたのかと尋ねた。

21:34しかし、群衆の中では、それぞれが別のことを叫んでいた。騒ぎのために確かなことが分からず、千人隊長は、パウロを兵営へ連れて行くよう命じた。

21:35階段に来ると、群衆の暴力のため、パウロは兵士たちに担がれることになった。

21:36大勢の民が、「そいつを取り除け」と叫びながら、ついて来ていたからである。

21:37兵営に連れ込まれようとしたとき、パウロは千人隊長に言った。「少しお話ししてもよろしいでしょうか。」千人隊長は言った。「ギリシア語が分かるのか。

21:38では、先ごろ、騒乱を起こし、四千人の短剣を持つ者たちを荒れ野へ連れ出した、あのエジプト人ではないのだな。」80

21:39パウロは言った。「私はユダヤ人で、キリキアのタルソスの者です。決して無名ではない町の市民です。お願いです。民に話すことをお許しください。」

21:40許可を得ると、パウロは階段に立ち、民に手で合図した。大きな静けさが広がると、ヘブライの言葉で語りかけた。81

第22章

22:1「兄弟たち、父たち、今、あなたがたに行う私の弁明を、聞いてください。」

22:2彼が自分たちにヘブライの言葉で語りかけているのを聞くと、人々はいっそう静かになった。パウロは言った。

22:3「私はユダヤ人で、キリキアのタルソスで生まれましたが、この町でガマリエルの足もとで育てられ、先祖の律法に厳密に従う教育を受けました。今日のあなたがたすべてと同じように、神に対して熱心でした。82

22:4そして、この道を死に至るまで迫害し、男も女も縛って牢に引き渡しました。

22:5このことは、大祭司と長老会全体も、私のために証言してくれます。私は彼らから兄弟たちあての手紙を受け取り、ダマスコへ向かいました。そこにいる者たちも縛ってエルサレムへ連れて来て、罰を受けさせるためでした。

22:6ところが、旅をしてダマスコに近づいたとき、正午ごろ、突然、天から強い光が私の周囲を照らしました。

22:7私は地に倒れ、『サウル、サウル、なぜ私を迫害するのか』と、私に語る声を聞きました。

22:8私は答えました。『主よ、あなたはどなたですか。』すると、こう言われました。『私は、お前が迫害しているナザレのイエスだ。』

22:9同行していた者たちは光を見ましたが、私に語りかけておられる方の声は聞きませんでした。

22:10私は言いました。『主よ、私は何をすればよいのですか。』主は言われました。『立って、ダマスコへ行きなさい。そこで、お前が行うよう定められたことが、すべて告げられる。』

22:11私は、その光の輝きのために目が見えず、同行者たちに手を引かれて、ダマスコに入りました。

22:12そこにアナニアという人がいました。律法に従う敬虔な人で、住んでいるすべてのユダヤ人から、良い評判を得ていました。

22:13彼は私のところへ来て、そばに立ち、『兄弟サウル、再び見えるようになりなさい』と言いました。私はその瞬間に見えるようになり、彼を見ました。

22:14彼は言いました。『私たちの先祖の神は、ご自分の御心を知り、正しい方を見、その口から声を聞くように、あなたを選ばれた。

22:15あなたは、見聞きしたことについて、すべての人に向かってその方の証人となるのだから。

22:16今、なぜためらっているのか。立って洗礼を受け、その方の名を呼び求めて、あなたの罪を洗い流しなさい。』

22:17私はエルサレムに戻り、神殿で祈っていたとき、我を忘れた状態になり、

22:18主がこう言われるのを見ました。『急いで、すぐにエルサレムを出なさい。人々は、私についてのお前の証言を受け入れないからだ。』

22:19私は言いました。『主よ、彼ら自身、私が会堂ごとに、あなたを信じる者たちを牢に入れ、打ちたたいていたことを知っています。

22:20また、あなたの証人ステファノの血が流されていたとき、私自身もそばに立ってそれに賛成し、彼を殺す者たちの衣を見張っていました。』

22:21しかし主は言われました。『行きなさい。私はお前を、遠く異邦人のもとへ遣わす。』」

22:22人々は、この言葉までは聞いていたが、ここで声を上げて言った。「こんな者は地上から取り除け。生かしておくべきではないのだから。」

22:23人々が叫び、衣を振り投げ、ほこりを空中にまき散らしていたので、

22:24千人隊長は、パウロを兵営に連れ込むよう命じ、人々がなぜこれほど彼に向かって叫んでいるのかを知るため、鞭で拷問して調べるよう指示した。

22:25革紐で彼の体を引き伸ばしたとき、パウロはそばに立っていた百人隊長に言った。「裁判で有罪とされていないローマ市民を、鞭で打つことは、あなたがたに許されているのですか。」

22:26百人隊長はこれを聞くと千人隊長のところへ行き、知らせた。「何をなさるおつもりですか。この人はローマ市民です。」

22:27千人隊長は近づいて尋ねた。「言ってみろ。お前はローマ市民なのか。」パウロは答えた。「はい。」

22:28千人隊長は言った。「私は大金を払って、この市民権を手に入れた。」パウロは言った。「私は、生まれながらに持っています。」

22:29そこで、拷問して取り調べようとしていた者たちは、すぐに彼から離れた。千人隊長も、パウロがローマ市民であり、しかも自分がその人を縛っていたと知って恐れた。

22:30翌日、千人隊長は、ユダヤ人たちが何について彼を訴えているのか、確かに知りたいと思い、拘束を解き、祭司長たちと議会全体に集まるよう命じた。そしてパウロを連れて下り、彼らの前に立たせた。

第23章

23:1パウロは議会をじっと見つめ、言った。「兄弟たち、私は今日まで、まったく良い良心をもって、神の前に生きてきました。」

23:2すると大祭司アナニアは、パウロのそばに立つ者たちに、彼の口を打つよう命じた。83

23:3パウロは彼に言った。「白く塗った壁よ、神がお前をお打ちになる。お前は律法に従って私を裁く座に着いていながら、律法に反して、私を打つよう命じるのか。」

23:4そばに立っていた者たちは言った。「神の大祭司を罵るのか。」

23:5パウロは言った。「兄弟たち、彼が大祭司だとは知りませんでした。『あなたの民の指導者を悪く言ってはならない』と書かれているからです。」

23:6パウロは、一方がサドカイ派、もう一方がファリサイ派だと分かると、議会で叫んだ。「兄弟たち、私はファリサイ派の者で、ファリサイ派の家系の者です。希望、すなわち死者の復活のことで、この私は裁判を受けているのです。」84

23:7彼がこう言うと、ファリサイ派とサドカイ派の間に対立が起こり、集まりは分裂した。

23:8サドカイ派は、復活も、御使いも霊もないと言うが、ファリサイ派は、その両方を認めているからである。85

23:9大きな叫び声が起こり、ファリサイ派の側の律法学者たちが何人か立ち、激しく論じ立てた。「この人に悪いところは何も見つからない。もし霊か御使いが、この人に語ったのなら――。」86

23:10対立が激しくなり、千人隊長はパウロが彼らに引き裂かれるのを恐れた。そこで部隊に、下って行って彼らの中からパウロを力ずくで連れ出し、兵営へ連れて来るよう命じた。

23:11その夜、主がパウロのそばに立って言われた。「勇気を持ちなさい。エルサレムで私について厳かに証言したように、ローマでも証言しなければならないのだから。」

23:12夜が明けると、ユダヤ人たちは徒党を組み、パウロを殺すまで食べも飲みもしないと、自分たちを呪いのもとに置いて誓った。

23:13この陰謀を結んだ者たちは、四十人以上いた。

23:14彼らは祭司長たちと長老たちのところへ行き、言った。「私たちは、パウロを殺すまで何も口にしないと、自分たちに呪いをかけて固く誓いました。

23:15そこで、あなたがたは議会と共に、彼のことをもっと詳しく調べるつもりだと言って、千人隊長に、彼をあなたがたのところへ連れて下るよう申し入れてください。私たちは、彼が近づく前に殺す用意ができています。」

23:16しかし、パウロの姉妹の息子は、この待ち伏せを聞きつけ、兵営に来て中に入り、パウロに知らせた。

23:17パウロは百人隊長の一人を呼び、言った。「この若者を千人隊長のところへ連れて行ってください。この若者には、千人隊長に知らせることがあるのです。」

23:18百人隊長は若者を連れて千人隊長のところへ行き、言った。「囚人パウロが私を呼び、この若者にはあなたに話すことがあるので、あなたのところへ連れて行ってほしいと頼みました。」

23:19千人隊長は彼の手を取り、人目を避けたところへ行って尋ねた。「知らせることとは何か。」

23:20彼は言った。「ユダヤ人たちは、議会がパウロについてもっと詳しく調べるつもりだと装って、明日、彼を議会へ連れて下るよう、あなたに頼むことで合意しています。

23:21ですから、彼らの言うことに応じないでください。彼らのうち四十人以上の男が、パウロを殺すまで食べも飲みもしないと、自分たちに呪いをかけて誓い、待ち伏せしているのです。今、準備を終え、あなたの承諾を待っています。」

23:22千人隊長は、「私にこれを知らせたことを、誰にも話してはならない」と命じ、若者を帰した。

23:23そして百人隊長を二人呼び、言った。「カイサリアまで行かせるため、兵士二百人と、騎兵七十人、槍を持つ兵士二百人を、夜の九時ごろから出発できるように用意せよ。

23:24パウロを乗せる動物も用意し、総督フェリクスのもとへ、無事に送り届けよ。」87

23:25また、次のような内容の手紙を書いた。

23:26「クラウディオ・リシアから、尊敬する総督フェリクス閣下へ。挨拶を送ります。

23:27この人はユダヤ人たちに捕らえられ、殺されようとしていました。私は、この人がローマ市民だと知り、部隊を率いて駆けつけ、救出しました。88

23:28また、彼らが訴える理由を知りたいと思い、彼らの議会へ連れて下りました。

23:29すると、彼ら自身の律法をめぐる問題について訴えられているのであって、死刑や拘禁に値する訴えは何もないと分かりました。

23:30この人をねらう企てが実行されようとしているとの知らせを受けたので、すぐにあなたのもとへ送りました。訴える者たちにも、あなたの前で、この人に対する訴えを述べるよう命じました。」

23:31兵士たちは命令どおりパウロを連れ、夜のうちにアンティパトリスへ行った。

23:32翌日、騎兵たちをパウロと共に行かせ、自分たちは兵営へ戻った。

23:33騎兵たちはカイサリアに入り、総督に手紙を渡し、パウロもその前に立たせた。

23:34総督は手紙を読み、どの州の出身かを尋ね、キリキアだと知ると、

23:35言った。「お前の言い分は、お前を訴える者たちも到着したら、詳しく聞こう。」そして、ヘロデの官邸に彼を留置しておくよう命じた。

第24章

24:1五日後、大祭司アナニアは、何人かの長老と、テルティロという弁論家を伴って下って来た。彼らは総督に、パウロに対する訴えを申し立てた。

24:2パウロが呼び出されると、テルティロは告発を始めた。「あなたのおかげで大きな平和を享受し、あなたの先見によって、この国民に改善がもたらされています。

24:3尊敬するフェリクス閣下、私たちは、あらゆる点で、どこでも、深い感謝をもって、それを受け入れております。

24:4しかし、これ以上お時間を取らないため、寛大な御心で、私たちの短い話をお聞きくださるよう、お願いいたします。

24:5というのも私たちは、この男が疫病のような者であり、世界中のすべてのユダヤ人の間に騒乱を起こし、ナザレ人の党派の首謀者であることを突き止めました。

24:6この男は神殿までも汚そうとしました。そして私たちは、この男を捕らえました。

24:8この者をご自身で取り調べれば、私たちが訴えているすべてのことを、お確かめになれるでしょう。」89

24:9ユダヤ人たちもこの訴えに加わり、そのとおりだと主張した。

24:10総督が話すようにと合図すると、パウロは答えた。「あなたが長年、この国民の裁判官を務めておられると知っているので、安心して自分の弁明をいたします。

24:11ご確認いただけるとおり、私が礼拝のためエルサレムへ上ってから、十二日を超えてはいません。

24:12神殿でも、会堂でも、町の中でも、私が誰かと論じ合ったり、群衆を騒がせたりしているのを、彼らは見つけていません。

24:13また彼らは、今、私を訴えている事柄を、あなたに証明することもできません。

24:14ただ、これはあなたに認めます。彼らが党派と呼んでいる、この道に従って、私は先祖の神に仕えています。そして、律法に則って書かれていることと、預言者たちの書に書かれていることを、すべて信じています。

24:15私は神に希望を置いています。それは、ここにいる人たち自身も待ち望んでいる、正しい者も正しくない者も、やがて復活するという希望です。

24:16それゆえ私自身も、神に対しても人に対しても、いつも責められるところのない良心を持つように努めています。

24:17数年ぶりに私は、自分の民族に施しを届け、献げ物をするために来ました。

24:18その最中に、群衆を伴うことも騒ぎもなく、清めを受けて神殿にいた私を見つけたのは、

24:19アジアから来た何人かのユダヤ人でした。もし私に対して何か言うことがあるなら、彼らこそ、あなたの前に来て訴えるべきでした。90

24:20そうでなければ、ここにいる人たち自身が、私が議会の前に立ったとき、どんな不正を見つけたか、言うべきです。

24:21ただ一つ、私が彼らの中に立って、『死者の復活のことで、私は今日、あなたがたの前で裁判を受けている』と叫んだこと以外に、何があるのでしょう。」

24:22フェリクスは、この道についてかなり詳しく知っていた。彼は審理を延期し、「千人隊長リシアが下って来たら、お前たちの件を裁定する」と言った。

24:23そして百人隊長に、パウロを監禁しながらも、ある程度の自由を認め、彼の親しい人々が世話をするのを、誰も妨げないよう命じた。

24:24数日後、フェリクスはユダヤ人である自分の妻ドルシラと共に来て、パウロを呼び、キリスト・イエスへの信仰について話を聞いた。

24:25パウロが正義、節制、来たるべき裁きについて論じていると、フェリクスは恐れ、答えた。「今は帰れ。機会を得たら、また呼ぼう。」

24:26同時に、パウロから金がもらえるとも期待していた。そのため、いっそう頻繁に呼び出して、話をしていた。

24:27二年が過ぎると、フェリクスの後任にポルキオ・フェストが就いた。フェリクスはユダヤ人たちの歓心を得たいと思い、パウロを拘束したままにしておいた。

第25章

25:1フェストは州に着任して三日後、カイサリアからエルサレムへ上った。

25:2祭司長たちとユダヤ人の有力者たちは、パウロに対する訴えをフェストに申し立て、

25:3パウロに不利な計らいとして、彼をエルサレムへ呼び寄せてほしいと頼み続けた。道中で彼を殺すため、待ち伏せを企てていたのである。

25:4しかしフェストは、パウロはカイサリアに拘禁されており、自分は間もなく出発するつもりだと答えた。

25:5そして言った。「だから、お前たちのうち権限のある者たちが、一緒に下って来て、その男に何か不当なことがあるなら、訴えるがよい。」

25:6彼は、八日か十日を超えない間、彼らのところに滞在した後、カイサリアへ下り、翌日、裁判の席に座って、パウロを連れて来るよう命じた。

25:7パウロが来ると、エルサレムから下って来たユダヤ人たちは、彼を取り囲み、多くの重い罪状を申し立てた。しかし、証明できなかった。

25:8パウロは弁明した。「ユダヤ人の律法に対しても、神殿に対しても、皇帝に対しても、私は何の罪も犯していません。」

25:9しかしフェストは、ユダヤ人たちの歓心を得たいと思い、パウロに答えた。「エルサレムへ上り、そこで私の前で、これらのことについて裁判を受けたいか。」

25:10パウロは言った。「私は、皇帝の裁判の席の前に立っています。ここで裁かれるべきです。ユダヤ人たちには、何も不正をしていません。あなたも、よくご存じのとおりです。

25:11私が不正をし、死刑に値することを何か行ったのなら、死ぬことを拒みません。しかし、彼らの訴えることが何一つ事実でないのなら、誰も、好意として私を彼らに引き渡すことはできません。私は皇帝に上訴します。」

25:12フェストは顧問団と相談した後、答えた。「皇帝に上訴したのだな。皇帝のもとへ行くことになる。」

25:13数日後、アグリッパ王とベルニケがカイサリアに来て、フェストに挨拶した。

25:14二人がそこに幾日も滞在しているうちに、フェストはパウロの件を王に持ち出した。「フェリクスが囚人として残していった者がいます。

25:15私がエルサレムへ行ったとき、祭司長たちとユダヤ人の長老たちは、その者について申し立て、有罪判決を求めました。

25:16私は彼らに答えました。訴えられた者が、訴える者たちと面と向かい、その告発について弁明する機会を得る前に、誰かを好意で引き渡すのは、ローマ人の慣習ではない、と。

25:17そこで、彼らがこちらへ一緒に来たとき、私は延期せず、翌日、裁判の席に座り、その者を連れて来るよう命じました。

25:18訴える者たちは立ちましたが、彼について、私が予想したような悪事についての罪状は、一つも出しませんでした。

25:19ただ、彼ら自身の宗教と、死んだ、あるイエスという者をめぐって、彼に対していくつかの争点があったのです。そのイエスは生きていると、パウロは主張していました。

25:20私はこれらの事柄をどう調べたらよいか困り、彼に、エルサレムへ行き、そこでこれらのことについて裁判を受けたいかと尋ねました。

25:21しかし、パウロが、皇帝陛下の裁定を受けるために自分を拘禁しておいてほしいと上訴したので、私は、彼を皇帝のもとへ送るまで拘禁を続けるよう命じました。」

25:22アグリッパはフェストに言った。「私自身も、その者の話を聞きたいと思っていた。」フェストは言った。「明日、聞くことができます。」

25:23翌日、アグリッパとベルニケは、盛大な威儀を整えて来て、千人隊長たちや町の有力者たちと共に、聴聞の間に入った。フェストの命令で、パウロが連れて来られた。

25:24フェストは言った。「アグリッパ王、また、ご同席の皆さん、この者をご覧ください。ユダヤ人の民衆がこぞって、エルサレムでもここでも、この者はもはや生きているべきではないと叫び、私に訴えました。

25:25しかし、私には、この者が死刑に値することを何もしていないと分かりました。ただ、本人が皇帝陛下に上訴したので、送ることに決めました。

25:26この者について、主君に書き送る確かなことがありません。そこで、皆さんの前、とりわけアグリッパ王、あなたの前に連れ出しました。取り調べを行った後、書くことが得られるようにするためです。

25:27囚人を送りながら、その者に対する罪状を示さないのは、不合理だと思うからです。」

第26章

26:1アグリッパはパウロに言った。「自分のために話すことを許す。」そこでパウロは手を伸ばし、弁明を始めた。

26:2「アグリッパ王、ユダヤ人たちから訴えられているすべてのことについて、今日、あなたの前で弁明することになったのを、幸いに思っています。

26:3とりわけ、あなたがユダヤ人のあらゆる慣習と論争点をよくご存じだからです。ですから、どうか忍耐してお聞きください。

26:4初めから自分の民族の中で、またエルサレムで過ごした、若いころからの私の生き方は、すべてのユダヤ人が知っています。

26:5彼らは昔から私を知っているので、その気があれば、私たちの宗教の最も厳格な党派に従い、ファリサイ派として生きたことを、証言できます。91

26:6今、私は、神が私たちの先祖に与えられた約束への希望のために、立って裁判を受けています。

26:7私たちの十二部族は、夜も昼も熱心に神に仕え、その約束に到達することを望んでいます。王よ、この希望のことで、私はユダヤ人たちから訴えられているのです。

26:8神が死者を起こされることを、なぜあなたがたは、信じられないことだと判断するのでしょうか。

26:9私自身、ナザレのイエスの名に逆らって、多くのことをしなければならないと考えました。

26:10そして、エルサレムで実行しました。祭司長たちから権限を受け、多くの聖なる者たちを牢に閉じ込め、彼らが殺されるときには、賛成票を投じました。92

26:11どの会堂でも、何度も彼らを罰し、冒瀆の言葉を言わせようとしました。また、彼らに対して激しく怒り狂い、外の町々にまで迫害を及ぼしました。93

26:12そうしたことを続ける中で、祭司長たちの権限と委任を受け、ダマスコへ向かっていたとき、

26:13王よ、真昼、道の途中で、太陽よりも明るい光が天から、私と同行者たちの周りを照らすのを見ました。

26:14私たちは皆、地に倒れました。そして私は、ヘブライの言葉で、『サウル、サウル、なぜ私を迫害するのか。突き棒を蹴るのは、お前にはつらいことだ』と、私に語る声を聞きました。94

26:15私は言いました。『主よ、あなたはどなたですか。』主は言われました。『私は、お前が迫害しているイエスだ。

26:16さあ、起きて、自分の足で立ちなさい。私がお前に現れたのは、お前が私を見た事柄と、これから私がお前に現れる事柄について、仕える者、証人としてお前を任命するためだ。95

26:17私は、お前を民と異邦人から救い出す。私はお前を、彼らのもとへ遣わす。96

26:18彼らの目を開き、闇から光へ、サタンの権力から神へと立ち返らせ、彼らが罪の赦しを受け、私への信仰によって聖なる者とされた人々の間で、相続の分を受けるようにするためだ。』97

26:19ですから、アグリッパ王、私は、この天からの幻に背きませんでした。

26:20むしろ、まずダマスコの人々に、またエルサレム、ユダヤの全地方、そして異邦人に、悔い改めにふさわしい行いをもって、悔い改めて神に立ち返るよう、告げ知らせてきました。

26:21そのため、ユダヤ人たちは神殿で私を捕らえ、殺そうとしたのです。

26:22こうして、神から助けを受け、今日まで立ち続け、小さな者にも大きな者にも証言しています。預言者たちとモーセが、起ころうとしていると語ったこと以外は、何も語っていません。

26:23すなわち、キリストが苦しみを受ける方であること、また、死者の復活の最初の者として、民と異邦人に光を告げ知らせることになっていることです。」98

26:24パウロがこう弁明していると、フェストは大声で言った。「パウロ、お前は気が変になっている。学問のしすぎが、お前を狂わせている。」

26:25しかしパウロは言った。「尊敬するフェスト閣下、私は気が変になっているのではありません。真実で、分別のある言葉を語っています。

26:26王は、これらのことをご存じだからです。その王に向かって、私は大胆に語っているのです。これらのことのどれ一つとして、王が気づいておられないとは思いません。これは片隅で行われたことではないからです。

26:27アグリッパ王、預言者たちを信じておられますか。信じておられることを、私は知っています。」

26:28アグリッパはパウロに言った。「わずかなことで、あなたは私を説き伏せてキリスト者にしようとしている。」99

26:29パウロは言った。「わずかなことでも、多くのことでも、あなただけでなく、今日、私の話を聞いているすべての人が、この鎖を除いては、私のようになることを、神に祈りたいものです。」

26:30王、総督、ベルニケ、そして同席していた人々が立ち上がった。

26:31退席すると、互いに話した。「この人は、死刑や拘禁に値することを、何もしていない。」

26:32アグリッパはフェストに言った。「皇帝に上訴していなければ、この人は釈放されることができたのだが。」

第27章

27:1私たちがイタリアへ船出することに決まると、パウロと、ほかの何人かの囚人は、皇帝隊の百人隊長、ユリオという人に引き渡された。

27:2私たちは、アジアの沿岸各地へ航海する予定の、アドラミティオンの船に乗り込んで出航した。テサロニケ出身のマケドニア人アリスタルコも、同行していた。

27:3翌日、シドンに入港した。ユリオはパウロを親切に扱い、友人たちのところへ行って世話を受けることを許した。

27:4そこから船出したが、風が逆だったので、キプロスの風下を航海した。

27:5キリキアとパンフィリアの沖の海を渡り、リキアのミラに着いた。

27:6そこで百人隊長は、イタリアへ向かうアレクサンドリアの船を見つけ、私たちを乗り込ませた。

27:7何日もの間、航海は遅々として進まず、ようやくクニドスの沖に来た。風が進むことを許さないので、サルモネの沖を通り、クレタの風下を航海した。

27:8苦労しながら岸に沿って進み、「良い港」と呼ばれる所に来た。その近くには、ラサイアの町があった。

27:9かなりの時が過ぎ、断食さえすでに過ぎていたため、航海はもう危険になっていた。そこでパウロは忠告して、100

27:10言った。「皆さん、私の見るところ、この航海は、積み荷と船だけでなく私たちの命にも及ぶ損害と多くの損失を伴うことになります。」

27:11しかし百人隊長は、パウロの言うことよりも、船の操縦者と船主の言うことを信じた。

27:12また、この港は冬を越すのに適していなかったので、多数の者は、そこから船出し、できればフェニクスへ着いて冬を越そうと決めた。そこは、南西と北西に向いたクレタの港であった。101

27:13南風が穏やかに吹き始めると、人々は目的はもう果たしたも同然だと思い、錨を上げ、クレタの岸近くを進んだ。

27:14しかし間もなく、島のほうから、エウラキュロンと呼ばれる暴風が吹き下ろして来た。

27:15船は巻き込まれ、風に向かって進めず、私たちはなすがままに流された。

27:16カウダという小島の風下に入り、ようやく小舟を押さえることができた。

27:17人々は小舟を引き上げ、補強の綱を使って船体を下から締めつけた。そして、シルティスに乗り上げるのを恐れ、帆具を降ろして、そのまま流された。102

27:18私たちは嵐に激しく打たれ、翌日、人々は投げ荷を始めた。

27:19三日目には、自分たちの手で船の道具を投げ捨てた。

27:20何日もの間、太陽も星も見えず、激しい嵐が続き、私たちが助かる望みは、ついにすべて失われていった。

27:21長く食事が取られていなかったとき、パウロは人々の中に立ち、言った。「皆さん、私に従ってクレタから船出せず、この損害と損失を避けるべきでした。

27:22しかし今、私は勧めます。元気を出してください。あなたがたのうち、命を失う者は一人もいないからです。ただ、船だけは失われます。

27:23というのも、この夜、私が属し、仕えてもいる神の御使いが、私のそばに立ち、

27:24こう言ったからです。『パウロ、恐れるな。お前は皇帝の前に立たなければならない。見よ、お前と一緒に航海している者すべてを、神はお前に恵みとして与えられた。』

27:25ですから皆さん、元気を出してください。私は神に信頼しているからです。私に語られたとおりになると信じています。

27:26ただし、私たちは、どこかの島に打ち上げられなければなりません。」

27:27十四日目の夜になり、私たちはアドリアの海を漂っていた。真夜中ごろ、船員たちは、どこかの陸地が近づいていると感じた。

27:28測深すると、深さは二十尋だった。少し進んで再び測ると、十五尋だった。103

27:29私たちがどこかで岩場に乗り上げはしないかと恐れ、彼らは船尾から四つの錨を投げ下ろし、夜が明けるのを願っていた。

27:30船員たちは船から逃げようとし、船首から錨を延ばすふりをして、小舟を海に降ろした。

27:31パウロは百人隊長と兵士たちに言った。「あの人たちが船にとどまらなければ、あなたがたは助かりません。」

27:32そこで兵士たちは小舟の綱を切り、流れるに任せた。

27:33夜が明けかけるころまで、パウロは皆に食事を取るよう勧め続け、こう言った。「今日で十四日目になりますが、あなたがたは待ち続け、何も口にせず、食べないままでいます。

27:34ですから、どうか食事を取ってください。それは、あなたがたが助かるためになるからです。あなたがたの誰も、頭の毛一本失うことはないのですから。」

27:35こう言ってパンを取り、皆の前で神に感謝し、裂いて食べ始めた。

27:36皆は元気づき、自分たちも食事を取った。

27:37船にいた私たちは、全部で二百七十六人だった。

27:38十分に食べると、穀物を海に投げ捨て、船を軽くした。

27:39夜が明けても、どの土地か分からなかったが、浜のある湾を認め、できればそこへ船を乗り上げさせようと相談した。

27:40錨を外して海に捨て置き、同時に舵を縛っていた綱を解いた。そして、前の帆を風に上げ、浜へ向けて進んだ。104

27:41しかし、二つの海が合う場所に突き当たり、船を座礁させた。船首は食い込んで動かなくなり、船尾は激しい力で壊れていった。105

27:42誰かが泳いで逃げないように、囚人たちを殺すという計画が兵士たちの間で持ち上がった。

27:43しかし百人隊長は、パウロを救いたいと思い、その計画をやめさせた。そして、泳げる者は先に飛び込み、陸へ行くよう命じた。

27:44残りの者には、ある者は板に、ある者は船から出た物につかまって行くよう命じた。こうして全員が無事に陸へたどり着き、助かった。

第28章

28:1無事に助かった後で、その島がメリテと呼ばれることを知った。

28:2島の人々は、私たちに並外れた親切を示した。降り出していた雨と寒さのために、火をたいて、私たち皆を迎えてくれたのである。106

28:3パウロが枯れ枝をひとまとめに集め、火の上に置くと、熱のために毒蛇が出て来て、その手に取りついた。

28:4島の人々は、蛇が彼の手からぶら下がっているのを見ると、互いに言った。「この人は、きっと人殺しだ。海から助かったのに、正義がこの人の生きることを許さなかったのだ。」107

28:5しかし、パウロは蛇を火の中に振り落とし、何の害も受けなかった。

28:6人々は、彼が腫れ上がるか、突然倒れて死ぬだろうと待っていた。長く待っても、彼に何の異常も起こらないのを見ると、考えを変え、彼は神だと言い始めた。

28:7その場所の近くには、島の第一人者で、プブリオという人の土地があった。彼は私たちを迎え、三日間、親切にもてなしてくれた。

28:8プブリオの父は、発熱と赤痢に苦しんで、床に横たわっていた。パウロはその人のところに入り、祈って手を置き、癒やした。

28:9このことが起こると、島のほかの病人たちも次々にやって来ては、癒やされた。

28:10その人々も、私たちに多くの敬意を示し、船出の際には、必要なものを載せてくれた。108

28:11三か月後、私たちは、その島で冬を越していたアレクサンドリアの船で出航した。船の標章はディオスクロイだった。109

28:12シラクサに入港し、三日間滞在した。

28:13そこから錨を取り外して出航し、レギオンに着いた。一日後、南風が吹き始め、二日目にプテオリに着いた。110

28:14そこで兄弟たちに出会い、七日間、彼らのところにとどまるように頼まれた。こうして私たちはローマへ来た。

28:15ローマからは、兄弟たちが、私たちについて聞くと、アッピイ・フォルムとトレス・タベルナエまで迎えに来た。パウロは彼らを見ると、神に感謝し、勇気を得た。

28:16私たちがローマに入ると、パウロは、自分を見張る兵士と共に、別に住むことを許された。

28:17三日後、彼はユダヤ人の有力者たちを呼び集めた。彼らが集まると、パウロは言った。「兄弟たち、私は、民や先祖の慣習に逆らうことを、何もしていないのに、エルサレムから囚人として、ローマ人の手に引き渡されました。

28:18彼らは私を取り調べ、死刑にすべき理由が何もないので、釈放しようとしました。

28:19しかし、ユダヤ人たちが反対したので、私はやむを得ず皇帝に上訴しました。自分の民族について、何か訴えるべきことがあったからではありません。

28:20この理由で、あなたがたに会って話をするため、お招きしました。私はイスラエルの希望のために、この鎖につながれているのです。」

28:21彼らは言った。「私たちは、あなたについてユダヤから手紙を受け取っていません。また、兄弟の誰かがここに来て、あなたについて何か悪いことを報告したり語ったりしたこともありません。

28:22ただ、あなたがどのように考えているのか、直接聞きたいと思います。この党派については、至るところで反対されていることを、私たちは知っているからです。」

28:23彼らはパウロと日を取り決め、前より大勢で、その宿へやって来た。パウロは朝から夕方まで、神の王国について厳かに証言して説明し、モーセの律法と預言者たちに基づいて、イエスについて彼らを説得しようとした。

28:24語られることに説得される者もいたが、信じない者もいた。

28:25彼らは互いに意見が一致しないまま、帰りかけたが、そのときパウロは一言、こう述べた。「聖霊は、預言者イザヤを通して、あなたがたの先祖に、適切に語られました。

28:26『この民のところへ行き、言え。お前たちは聞くには聞くが、決して悟らない。見るには見るが、決して見て取らない。

28:27この民の心は鈍くなり、彼らは耳で聞くのも鈍く、自分の目を閉じたからだ。目で見、耳で聞き、心で悟り、立ち返って、私が彼らを癒やすことにならないように。』111

28:28ですから、知ってください。神のこの救いは、異邦人に送られました。彼らこそ、聞くでしょう。」

28:30パウロは丸二年、自分で借りた住まいにとどまり、訪ねて来る者を皆、迎え入れた。112

28:31そして、まったく大胆に、何の妨げも受けずに、神の王国を宣べ伝え、主イエス・キリストについて教えた。113

訳注

  1. 1:4のσυναλιζόμενοςは、共に集まること、また共に食事をすることとして解される。本訳は「彼らと共にいるとき」とし、食事の描写を確定しない。原文は命令を不定詞による間接話法で示し、ἣν ἠκούσατέ μουから直接話法に移る。日本語では命令全体を直接話法に整えた。1:5のὅτιは理由と読んだが、直前の聞いた約束の内容を示す読みも可能。 ↩︎
  2. Ἰάκωβος ἉλφαίουとἸούδας Ἰακώβουは関係名詞を欠く属格で、本訳はいずれも父子関係と取り、「アルファイの子ヤコブ」「ヤコブの子ユダ」とした。ζηλωτήςは「熱心な者」の通称で、この語だけで特定の政治集団への所属を断定しない。 ↩︎
  3. 1:18–19は底本のダッシュで演説の流れから区別される挿入説明として訳し、20節からペトロの発言を再開した。πρηνὴς γενόμενοςは、頭を下にする、また前のめり・うつ伏せになる姿勢と解される。「頭から倒れ」と訳したが、落下の場所や高さ、死に至る医学的機序を補っていない。他書のユダの死の叙述に合わせて本文を組み替えない。 ↩︎
  4. 2:3のγλῶσσαιは「舌」、2:4のἑτέραις γλώσσαιςは「ほかの言葉」。同じ語を用いた叙述を、文脈に応じて訳し分けた。6–11節では、聞き手がそれぞれ、彼らが自分の生まれながらの言葉で話すのを聞いたと述べられる。本文にない発声の仕組みを説明しない。 ↩︎
  5. 原語は「日の第三時」。昼間の時刻の数え方による概算として、朝九時ごろとした。原文は現代の時計時刻を指定していない。 ↩︎
  6. 2:17–21はヨエルの引用として提示される。πᾶσαν σάρκαは文字どおり「すべての肉」で、人間全体を指す表現として「すべての人」とした。18節のδοῦλοι/δοῦλαιは男女の奴隷を表す語。引用はこの箇所のギリシア語から訳した。17–18節の「私の霊を注ぐ」はἀπὸ τοῦ πνεύματός μουを訳したもの。ἀπόは出所または部分の意味に読めるが、霊の数量的な一部とは確定しない。 ↩︎
  7. ἄνομοιは「律法を持たない者」と「不法な者」の両方に解しうる。本訳は前者を採った。προσπήξαντεςは打ち付けることを表し、2:36の十字架への言及に沿って訳した。 ↩︎
  8. 2:25–28の引用は詩編16編に対応する。ψυχήは「魂」だけでなく命・本人を指しうるため、27節では「私の命」とした。ᾅδηςは死者の領域を指す「陰府」で、刑罰の場所とする「地獄」に置き換えていない。ὅσιοςは神に忠実な者を指す語として訳し、ἅγιοςの「聖なる」と区別した。 ↩︎
  9. 2:33のτῇ δεξιᾷは「右に」と位置を表す読みと、「右の手によって」と手段を表す読みがありうる。本訳は34–35節の引用とのつながりから、神の右に高められたと読んだ。「約束の聖霊」は、聖霊についての約束が成就して与えられたことを表すと理解した。τοῦτοは聖霊を受けると読んだが、今見聞きしている現象全体を受ける読みもある。 ↩︎
  10. 原語は祈りの時の「第九時」。昼間の時刻を概算し午後三時ごろとした。 ↩︎
  11. 3:13のπαῖςには子どもとしもべの語義がある。神に対するイエスの称号として「しもべ」とした。4:27、30も同様。3:15のἀρχηγόςは、先導する者・始祖・創始者を表しうる。本訳の「命の導き手」は先導する意味を採った訳。5:31では「導き手」とした。 ↩︎
  12. 3:21のὃν δεῖ οὐρανὸν … δέξασθαιは、天がその方を受け入れる必要を述べる。「すべてのことの回復」はἀποκαταστάσεως πάντων。後続のὧνはπάντωνを受けると読み、神が語ったすべての事柄に関わる回復と理解した。「時」を表すχρόνωνに結びつける読みもありうる。救いの範囲についての後代の教説を、この語句だけで確定しない。 ↩︎
  13. 4:13のἀγράμματοι καὶ ἰδιῶταιは、学問のない者・専門家でない者という評価として訳した。二人が読み書きをまったくできなかったという実証に置き換えない。本文の「普通の人」は専門家でない者という意味。 ↩︎
  14. 4:25は語の配列が込み入っているが、「聖霊によって」と「ダビデの口を通して」をともに残し、日本語の順序を整えた。25–27節のἔθνηとλαοίは、引用とその適用の双方に現れる。本文では前者を「諸国の民/異邦人」、後者を「諸民族/イスラエルの民」と訳し分けた。キリスト(χριστός)は油を注がれた者を指し、27節の「油を注がれた」と語根上対応する。 ↩︎
  15. τῇ δεξιᾷ αὐτοῦは、ここでは高く上げる到達点を示す「ご自分の右に」と読んだ。「ご自分の右の手によって」と手段を表す読みもある。2:33の同じ与格の扱いも参照。 ↩︎
  16. 6:1のἙλληνισταίとἙβραῖοιは、ここでは共同体内の言語による区別と解して訳した。両語の区別の基準は本文自体に説明されない。6:1の「世話」、2節の「食卓の世話」、4節の「御言葉に仕えること」は、διακονία/διακονεῖνという奉仕の語群で対応する。七人に「執事」という職名を追加していない。1節のὅτιを不平が起こった原因と読んだが、不平の内容を示す節と読むこともできる。 ↩︎
  17. 本訳はキレネ人とアレクサンドリア人を独立の集団として列挙した。両者を解放奴隷と共に会堂名に含める読みも成立する。属格句の結び方には幅があり、会堂の総数を本文だけから確定しない。 ↩︎
  18. イサクとヤコブに続く句には動詞が省略されている。本文はもうけるを補ったが、直前の割礼を施すも共通する動詞として読むことができる。 ↩︎
  19. 「治める者にした」のκατέστησενは、先行する動詞から神を主語として読むことも、直前に現れたファラオを主語として読むこともできる。本訳は、王の前で好意を受けたことに続く任命として、ファラオを主語に補った。 ↩︎
  20. 7:14の人数はἑβδομήκοντα πέντε(七十五)で、本訳は底本の数をそのまま訳した。 ↩︎
  21. 7:16の固定本文は、アブラハムが、シケムにいるハモルの子らから買った墓と述べる。ἐν Συχέμを購入場所の修飾と読むこともできる。複数主語の流れをそのまま「彼ら」と訳した。誰の遺骨がどの墓に移されたかを、本文以上に限定しない。 ↩︎
  22. ἐκκλησίαは人々の集まりを指す語で、ここではイスラエルの荒れ野の集会と訳した。キリストを信じる共同体を指す箇所の「教会」とは、指示対象に応じて訳し分けている。 ↩︎
  23. 7:42–43は「預言者たちの書」の引用として提示される。本訳は本書にある語形・地名を保った。他書の引用原文との照合は今回行っていない。43節は「バビロンのかなた」。42節のἔστρεψενは神が向きを変えると読んだが、彼らの向きを変えたとする他動詞の読みもある。43節の像と44節の型は同じτύποςの語形で、文脈により訳し分けた。 ↩︎
  24. ἐν τῇ κατασχέσειを土地取得の際と読んだ。ἕως τῶν ἡμερῶν Δαυίδを幕屋の持ち込みに結び、その幕屋がダビデの時代までそこにあったと訳した。神が諸国の民を追い払ったことに係る読みも成立する。Ἰησοῦはイエスと同じギリシア語名だが、土地取得の文脈からヨシュアと訳した。 ↩︎
  25. 8:7の固定本文はπολλοὶ … ἐξήρχοντοと、人々を指す男性複数主格で始まり、霊が出る意味へつながる整っていない構文(破格)を持つ。本訳は「多くの人から、霊が……出て行き」と意味の関係を補って整えた。底本を別の語形に変更したという意味ではない。 ↩︎
  26. 8:26のκατὰ μεσημβρίανは「南へ」、また「正午ごろ」と解しうる。本訳は方向と読んだ。αὕτη ἐστὶν ἔρημοςは道が人けのない所であることとして、語り手の説明と読んだ。ガザを指す読みや、御使いの発言に含める読みもあるが、本訳では採らない。 ↩︎
  27. 8:32–33はイザヤ53章に対応する引用。ἡ κρίσις αὐτοῦ ἤρθηは「彼の裁きが取り去られた」で、本訳は公正な裁きが奪われたと読んだ。γενεάには世代・同時代の人々・家系などの解釈があり、「彼の世代」として曖昧さを残した。 ↩︎
  28. 8:37は固定底本にないため補っていない。 ↩︎
  29. 9:7では「声」が属格(τῆς φωνῆς)で、22:9では対格(τὴν φωνήν)で置かれる。9:7は同行者が声を聞いたと述べ、22:9は話しかける方の声を聞かなかったと述べる。「音は聞いたが言葉は理解しなかった」と解する余地はあるが、格の違いだけでその解釈が確定すると扱わず、それぞれの叙述をそのまま訳した。9章に、26:14の突き棒を蹴るという文言を追加していない。 ↩︎
  30. Ἑλληνισταίを、ここではギリシア語を話すユダヤ人と解した。6:1の共同体内の言語区分と同じ語の用法を踏まえた解釈だが、9:28–29は会堂を場面として明示せず、語そのものだけからユダヤ人という限定が確定するわけではない。11:20もその文脈に即して扱う。 ↩︎
  31. 原語は第九時で、午後三時ごろと概算した。9節の第六時は正午ごろ。本章30節も第九時。 ↩︎
  32. 原語は第六時で、正午ごろと概算した。 ↩︎
  33. 10:28のἀθέμιτονは許されない・禁忌であることを示す。ペトロの発言として訳し、異邦人との接触を禁ずる条文がモーセ律法に明記されているとする説明は加えない。 ↩︎
  34. 原語は「第四の日から、この時刻まで」。9節、23節、24節に三度の「翌日」があるため、その日自体を含む四日目という数え方と読み、日本語では「三日前」とした。本節の第九時は午後三時ごろという概算に換算した。 ↩︎
  35. 36–38節は、対格の「御言葉」「起こったこと」「イエス」が重なり、ἀρξάμενοςは男性単数で現れる入り組んだ構文。日本語は独立文へ整えたが、イエスについての出来事を聴衆が知っているという37節の文脈が38節にも続くと理解した。 ↩︎
  36. 命じた主体は原文では省略されている。本訳はイエスと読んだが、40節の主語である神が続くと読むこともできる。 ↩︎
  37. λαλεῖν γλώσσαιςは舌・言葉で語る表現。複数形を「さまざまな言葉」と表したが、各人の言葉を指す配分的複数とも読め、言語の種類の多様性や発声の仕組みを確定しない。19:6も同様。2章では聴衆がそれぞれ、生まれながらの言葉として聞いたことが明記される。 ↩︎
  38. 11:20の固定底本はἙλληνιστάςで、6:1と同じ語Ἑλληνιστήςの別の格の形。「ギリシア語を話す人々」とした。19節ではユダヤ人だけに語ったと述べられ、ここは宣教の広がりの文脈にあるが、語そのものだけで民族や割礼の有無を確定しなかった。 ↩︎
  39. ἀπαχθῆναιは受動の不定詞で、連れて行かれる者は番人たちと読む。この文脈では処刑へ連行することと解しうるが、その目的の名詞は原文に明示されないため、本文では補わなかった。 ↩︎
  40. 12:25の底本はεἰς Ἰερουσαλήμ。本訳はこの句を後続のπληρώσαντες τὴν διακονίανに結びつけ、エルサレムを奉仕の宛先と解した。直前のὑπέστρεψανの後にある底本の読点も、この区切りと整合する。ὑπέστρεψανに結びつけて「エルサレムへ戻った」と読む可能性もあるが、本訳では採らない。分詞に結ぶ場合も、εἰςを場所に取って、エルサレムで奉仕を果たしてと読む可能性がある。 ↩︎
  41. ἐτροποφόρησενを、人々の振る舞いを耐え忍ぶ意味で訳した。 ↩︎
  42. 19–20節は底本の語順と句切りに従い、四百五十年を、それまでの出来事に結びつけ、裁き人の期間そのものとはしなかった。 ↩︎
  43. 13:33の固定本文はτοῖς τέκνοις ἡμῶνで、「私たちの子らに」と訳した。ἀναστήσας Ἰησοῦνはイエスを立てた/起こしたことを表す。復活として読むことも、神がイエスを立てた(登場させた)こととして読むこともできる。33・34節はἀνίστημιで、34節だけは「死者の中から」を明示する。30・37節の「起こす」と22節の「立て」はἐγείρω。 ↩︎
  44. τὰ ὅσιαは直訳では「聖なるもの(複数)」。神の確かな恵みの約束を指すと理解し、「約束」を補った。35節の「忠実な者」はτὸν ὅσιονで、同じὅσιοςの語形。34節のδώσω(与える)と35節のδώσεις(許す)も同じ動詞δίδωμιで、二つの引用はこの二語で結ばれる。「確かな」はπιστάの訳。Δαυίδはダビデへの約束という関係で読んだ。 ↩︎
  45. 13:38–39のδικαιωθῆναι/δικαιοῦταιは「義とされる」。ἀπὸ πάντωνは、解放・免責の意味合いを含む「すべての事柄から」とも読める。本訳は「……あらゆる事柄について……義とされる」として、赦しの告知と結びつく法廷的な語を保った。 ↩︎
  46. 46–48節の「異邦人」と引用の「諸国の民」は、同じ語ἔθνος(46・48節τὰ ἔθνη、47節ἐθνῶν)を文脈に応じて訳し分けたもの。引用の光と救いの務めを、二人が異邦人へ向かう根拠として受け取っている。 ↩︎
  47. 13:48のτεταγμένοιはτάσσωの完了中・受動分詞。本訳は受動の意味で「定められていた」とした。「自分から永遠の命を求めた」などの意志の叙述に置き換えていない。定めた主体の名はこの句に明記されないため、翻訳本文に追加しない。 ↩︎
  48. σωθῆναιを救われると訳した。直後の足の回復に即して癒やされると読むこともできる。 ↩︎
  49. 14:23のχειροτονήσαντεςは任命・選定を表す語として「任命し」とした。語源だけから挙手投票の手続きを再構成せず、二人がその行為の主体であることを保持した。「彼らを委ねた」の範囲が長老たちだけか、各教会の人々を含むかは、代名詞だけでは完全には限定されない。 ↩︎
  50. ἐξελέξατοに対格目的語はなく、本文の「私を」は文脈からの補い。不定詞句全体を選ぶ内容と取り、異邦人が私の口を通して聞いて信じることを神が選ばれたと読むこともできる。 ↩︎
  51. 15:16–18はアモス9章に対応する引用を含むが、使徒言行録にある形で訳した。17節の「人々のうちの残りの者たち」を別の本文形態の民族名へ変更しない。18節のγνωστὰ ἀπʼ αἰῶνοςは「古くから知られていること」として17節末尾のταῦταに結びつけた。ποιῶν ταῦτα γνωστάを「これらを知らせる」と読む係り方もありうる。底本にない「神のすべての業」を補わない。 ↩︎
  52. 15:20、29と21:25には、偶像に関わるもの、血、絞め殺されたもの、πορνείαの四項目がある。πνικτόνは絞め殺されたもの。πορνείαは性的不品行を表す「淫らな行い」とし、この語だけで禁止される関係の範囲を限定していない。 ↩︎
  53. 16:12のπρώτηは主格でπόλιςに一致し、地区を示すμερίδοςを修飾しない。本訳はその地区の主要な町と訳し、行政上の首都とは断定しない。Μακεδονίαςを地区の属する範囲と読んだが、マケドニアという地区と読むことも可能。κολωνίαはローマの植民市。 ↩︎
  54. προσευχήは祈りを指す語で、この文脈では祈る場所と解した。 ↩︎
  55. πνεῦμα πύθωναは同格の対格で、ピュトンという霊。本文は文脈に沿い占いの霊とした。 ↩︎
  56. 18節で霊が出て行ったのに続き、19節は同じἐξέρχομαιで望みが出て行ったと述べ、語の反復で呼応する。本文は後者を自然な日本語で消えたとした。 ↩︎
  57. πεπιστευκώςは完了分詞・男性単数で、喜ぶ時点での番人の信じた状態を表す。πανοικεί(家の者皆と共に)は喜ぶ行為へ結んだ。信じるという分詞に係る読みもあるが、その場合も分詞の文法上の主語は単数のままである。 ↩︎
  58. 21節の「ローマ人」と、37–38節の「ローマ市民」は格は異なるが同じ語Ῥωμαῖος。告発者が主張したローマ人の身分を、パウロが自分たちについても主張している。後者は裁判と釈放をめぐる法的身分の文脈に即し「市民」とした。 ↩︎
  59. ἐπιλαβόμενοιはつかむ動作を表す。強制的に捕らえる読みも、手を取って案内する読みもあり、本文は連れて行くと訳した。 ↩︎
  60. 17:22のδεισιδαιμονεστέρουςは比較級で、ここでは強意として「とても神々を敬う」とした。神々への畏れ・宗教への熱心さを表す一方、迷信的という否定的含意も取りうる。 ↩︎
  61. ἐξ ἑνόςは男性なら一人から、中性なら一つのものからと読める。本訳は前者を採った。底本に血という名詞はない。 ↩︎
  62. 28節の詩人の引用は本書のギリシア語から訳した。詩人名は本文に書かれていないため追加せず、個別の作品・行番号の一次資料照合は今回行っていない。 ↩︎
  63. Ἀρεοπαγίτηςはアレオパゴスに属する者を表す。アレオパゴスは人を連れて行き、その中央に立つことのできる場として本文に描かれる。制度上の役職の詳細は本書だけからは決まらないため、一員とした。 ↩︎
  64. 「あなたがたの血は、あなたがた自身の頭に帰する」は責任をめぐる慣用表現として訳した。登場人物の発言であり、今日のユダヤ人全体への判断に読み替えない。原文に動詞はなく、帰するは補い。宣言として頭上にあると読むほか、頭上にあれという願望・命令の読みも可能。 ↩︎
  65. παρὰ τὸν νόμονは法に反すること。律法を念頭に置く読みが14–15節と整合するが、総督の法廷での告発でもあり、本文では法として範囲を狭めなかった。前置詞句は説き伏せるにも敬うにも係りうる。本文は後者に寄せた。 ↩︎
  66. 18:17の主体はπάντες、「皆」。告発者たちを指すか、そこに居合わせた人々全体を指すかは明示されないため、殴った者の範囲を限定しなかった。 ↩︎
  67. 18:18のκειράμενοςは男性単数で、パウロと読むのが叙述の主線に沿うため、そのように訳した。直前のアキラに結びつける読みもありうる。誓願の種類や髪を切る儀礼の細部は、本文に明示されないので補わない。 ↩︎
  68. 18:22の「上って行って」に、目的地の名前はない。日本語本文へ「エルサレム」と追加せず、教会に挨拶したことと、アンティオキアへ下ったことを訳した。 ↩︎
  69. διὰ τῆς χάριτοςは信じたに係ると読んだ。助けたに係り、アポロが恵みによって助けたと読むこともできる。 ↩︎
  70. ἀμφοτέρωνは通常両者を表し、本訳はこれに沿って二人ともとした。14節の七人との関係は本文から明確には決まらない。23:8には、復活と御使い・霊という二項をまとめる解釈と、三つの列挙すべてを指す解釈がある。その用例だけで19:16を七人全員へ広げると確定しなかった。 ↩︎
  71. τοῦ κυρίουをὁ λόγοςに結び、「主の言葉」と読んだ。直前のκράτοςに結んで、「主の力によって言葉は広がった」と読むこともできる。 ↩︎
  72. 原語はアルテミスの銀の神殿(複数形)。かたどった模型は、作られる対象を具体化した訳上の補いで、実物の形態の詳細は確認していない。 ↩︎
  73. 19:33のσυνεβίβασανは、教える・事情を説明する・促すなどの意味を持ちうる。本訳は、ユダヤ人たちが押し出したアレクサンドロに、人々が発言を促したと読んだ。「発言を」は文脈からの補い。ἐκ τοῦ ὄχλουは促した人々の範囲と読んだが、アレクサンドロが出てくる起点を示す読みもある。弁明の内容は本文に明示されない。 ↩︎
  74. διοπετέςは天から落ちたものを指し、「像」はこの礼拝の文脈から補った語。 ↩︎
  75. 20:22のδεδεμένος … τῷ πνεύματιには、霊によって縛られるという行為者・手段の与格と、自分の内なる霊において縛られているという関係の与格の読みがある。本訳は霊に縛られてとした。ここではἅγιονがないため、聖霊と明記しなかった。23節は聖霊を明示する。 ↩︎
  76. τελειῶσαιの目的語はτὸν δρόμον(走る道のり)とτὴν διακονίαν(務め)。ὡςと不定詞を目的・目標に解して全うするためならとした。διαμαρτύρασθαιは務めの内容を説明する。 ↩︎
  77. 20:28の底本は「神の教会」(τοῦ θεοῦ)。διὰ τοῦ αἵματος τοῦ ἰδίουは、「ご自身の血を通して」と、τοῦ ἰδίουを名詞的に読んで「ご自身に属する方の血によって」の両方に解しうる。本訳は前者を採った。後者なら神ご自身の御子を指すと理解しうるが、原文に「子」の名詞はない。長老たちへ語られたἐπισκόπουςは「監督する者」とし、後代の制度上の職位をそのまま当てはめない。 ↩︎
  78. 20:32のτῷ δυναμένῳは、直前の「恵みの言葉」にも、神ご自身にも係りうる。本訳は御言葉に係ると読んだ。建て上げと相続を与える力を神と無関係なものとする解釈ではない。 ↩︎
  79. 21:26のἕως οὗ以下は、清めの期間に結ぶ読みと、神殿へ入り満了を告げる動作に結ぶ読みがある。本訳は前者を採った。προσηνέχθηはアオリスト直説法で、語り手から見た期限の到達点を述べたと読むこともできる。27節は七日間が終わろうとした時の逮捕を記すため、献げ物の実現時点や儀礼の正確な手順をここで確定しない。告知の相手も明記されない。 ↩︎
  80. σικάριοιは短剣を用いる者たちの呼称として、短剣を持つ者たちと訳した。 ↩︎
  81. 21:40、22:2、26:14のἙβραΐδι διαλέκτῳはヘブライの言葉と訳した。実際の発話言語を歴史的に同定する調査は今回行っておらず、本文の言語名を別の名称へ置き換えていない。 ↩︎
  82. παρὰ τοὺς πόδας Γαμαλιήλを固定底本の句読点に沿って育てられることへ結んだが、教育を受けることに結ぶ読みも可能。ὑπάρχωνは主動詞εἰμιに従う現在分詞で、現在の熱心と読む解釈も成立する。本文では22:4の迫害への接続から過去で訳した。 ↩︎
  83. αὐτῷはパウロを指すと読んだが、大祭司アナニアを指し、そのそばに立つ者たちとする読みも可能。 ↩︎
  84. καίを説明的に読んだ。「希望と死者の復活」と並列に読むこともできる。περίは裁判の対象を表す。 ↩︎
  85. τὰ ἀμφότεραを、復活と、御使い・霊という霊的存在の二項として訳した。列挙された三つのすべてをまとめる用法とする解釈もある。 ↩︎
  86. 23:9の固定本文は条件文の後がダッシュで途切れる。底本にない結論を足さず、途切れた発言を保持した。 ↩︎
  87. 23:23のδεξιολάβοιは兵種の詳細が確定しにくく、槍を持つ兵士と訳したが、装備や役割まで確定しない。原文の「夜の第三時から」を夜九時ごろからと換算し、出発の準備と解して補った。24節のκτήνηは乗用の動物で、馬に限定しない。 ↩︎
  88. 23:27の後置のアオリスト分詞μαθώνは、先行・理由とも後続とも解しうる。本訳は先行・理由と解した。22:29の語りでは市民権を知ったのは拘束後だが、本訳はその順序に揃えるために先行・理由の読みを退けることはしない。 ↩︎
  89. 固定本文には24:7がないため節番号を飛ばした。5節から8節は分詞句から関係節へ続く構文を、日本語で文に分けて訳した。8節の「この者」は訴えられているパウロを指す。 ↩︎
  90. 24:18の見つけたという動詞の主語は明示されず、24:19にδέを伴ってアジアから来たユダヤ人が示され、彼らを先行詞とする関係節へ続く。本訳は彼らを発見の主体と解し、18節から接続した。δέの接続はこの主語の提示に含め、日本語で別の逆接語は加えなかった。 ↩︎
  91. ὅτι節を証言する内容と解し、日本語では証言できますを主文として補った。昔から知っている内容を示す節とし、その気があれば証言するという句を挿入句とする読みもある。 ↩︎
  92. 「賛成票を投じた」はκατήνεγκα ψῆφον。投票の表現だが、ここでは同意を表す比喩とも解しうる。パウロの議会での正式な役職をこの句だけから断定しない。賛成は、彼らが殺される場面を述べる属格独立句から補った。 ↩︎
  93. ἠνάγκαζονは未完了過去で、冒瀆を強いようと繰り返し試みたと読んだ。実際に強いて言わせていたという読みも可能で、全員が応じたかどうかは本文だけでは決まらない。 ↩︎
  94. 突き棒を蹴る比喩を、抵抗が本人を傷つけるという言葉と解した。原文はお前にはつらいと述べる。 ↩︎
  95. 26:16のὧν τε εἶδές με ὧν τε ὀφθήσομαί σοιは、パウロがイエスを見た事柄と、今後イエスが彼に現れる事柄に関わる証言を表すと読んだ。ὀφθήσομαιは受動形で、目的語を取らず現れることを表す。 ↩︎
  96. εἰς οὓςの先行詞は、民と異邦人の双方、または異邦人のみと読める。本文は彼らとし、双方へ係る余地を保った。救い出すという分詞は、16節で現れたイエスに係り、日本語では文を分けた。 ↩︎
  97. ἐπιστρέψαιを立ち返らせるという他動詞として訳したが、彼ら自身が立ち返るという自動詞の読みもある。πίστειは聖なる者とされることへ結んだ。赦しと分を受けることへ結ぶ読みも可能。相続はκλῆροςの受ける分という意味を示す補い。 ↩︎
  98. 26:23のπαθητόςは苦しみを受ける・受けうることを示す形容詞。二つのεἰ節を預言の内容を示すものと読んだが、苦しみと光の告知が起こるかどうかという論点を示す読みもある。πρῶτοςを復活における最初の者とした。「復活によって光を告げる最初の者」と読むことも可能。μέλλειは告知することになっているという表現で保持した。 ↩︎
  99. 26:28–29のἐν ὀλίγῳ/ἐν μεγάλῳは、わずかな時間/長い時間、わずかな言葉・労力/多くの言葉・労力などに解しうる。本訳は「わずかなことで/多くのことでも」とし、特定の時間量に限定しない。固定底本の句読点に沿って平叙文とした。反問としての理解も可能だが、回心が間近だという告白には確定しない。 ↩︎
  100. 27:9の断食はユダヤの祭暦の断食の日を指すと読んだが、日付を本文に加えない。22節以下で命は失われないと告げられるが、これと調和させるために10節の命への危険を訳から取り除くことはしない。 ↩︎
  101. 港の向きを示すβλέποντα κατάと風名の組合せには、風が来る向きか吹き向かう向きかをめぐる解釈の幅がある。本文は南西と北西に向く読みを維持したが、実際の港口の方位や地形をここで確定するものではない。 ↩︎
  102. 27:17の補強の綱は、補助の手段で船体を巻き締めるという記述を具体化した訳上の補い。τὸ σκεῦοςは船の装備を表す広い語で、帆や船具を降ろすと解した。帆具は訳上の選択で、特定の制動装置とは同定していない。 ↩︎
  103. ὀργυιάは測深の単位で、日本語では尋とした。メートルへの厳密な換算は行っていない。 ↩︎
  104. ἀρτέμωνは帆の名称で、本訳は前の帆とした。帆の位置・形式を本文からさらに詳しく特定しない。 ↩︎
  105. διθάλασσοςは二つの海・流れが接する場所を表すと読み、正確な地形は特定していない。 ↩︎
  106. 28:2のβάρβαροιを島の人々と訳した。ギリシア語を話さない人々への呼称という理解による訳語の選択で、道徳的に野蛮だという評価は加えていない。 ↩︎
  107. δίκηは正義・裁き、またそれを人格化した力と解しうる。ここでは島の人々の発言として正義と訳した。 ↩︎
  108. τιμαίは敬意の表明とも贈り物・謝礼とも解しうる。本訳は敬意とした。 ↩︎
  109. ディオスクロイは船の標章の名として訳した。本文にない図柄は描写していない。 ↩︎
  110. 28:13の固定本文はπεριελόντες。錨を取り外す動作と読み、原文にない目的語の錨を補った。 ↩︎
  111. 末尾のἰάσομαιは直説法未来。μήποτε以下の連鎖に含めて、癒やすことにならないようにと訳した。独立した直説法未来として、そうすれば私は彼らを癒やすと読む可能性もある。 ↩︎
  112. ἐν ἰδίῳ μισθώματιを自分で借りた住まいでと読んだ。賃料・自費という費用の意味に重点を置く読みもある。 ↩︎
  113. 原文末尾のἀκωλύτωςを何の妨げも受けずにと訳した。大胆さとこの副詞を、宣べ伝える・教えるの両方へ係らせた。日本語では文末に述語の教えたを置いた。 ↩︎

底本・帰属表示

本文と訳注はAI(Codex)が作成した翻訳原稿です。Claude Codeによる2回の全章AI校閲の指摘を原文と照合し、本文・訳注を改訂しました。人間のギリシア語専門家による校閲と、既訳との体系的な表現類似監査は未実施です。

Michael W. Holmes編 The Greek New Testament: SBL Edition(2010)。SBLGNT公式配布v1.2、固定コミット c4d241a9c1c479a55b989ba35a4976c1d0b8052c の data/sblgnt/text/Acts.txt を使用。

Copyright 2010 Society of Biblical Literature and Logos Bible Software。公式配布元、使用本文、CC BY 4.0。本成果物は原文の日本語翻訳、章節整形、独自訳注の追加を含みます。原権利者による推奨・公認を示すものではありません。

初稿作成では、使徒言行録の既存の近現代語訳を閲覧・入力せず、ギリシア語を章ごとに先に読んで訳しました。既存のルカ福音書原稿は表記と原稿形式の確認のために参照しました。学習済み知識からの影響を完全に排除したとは表示しません。Claude Codeによる2回の全章AI校閲を実施し、指摘を固定原語と照合して改訂しました。既訳との体系的な表現類似監査と、人間の専門家校閲は未実施です。