福音書

マタイの福音書

ΚΑΤΑ ΜΑΘΘΑΙΟΝ

第1章

1:1ダビデの子、アブラハムの子であるイエス・キリストの系譜の記録。1

1:2アブラハムはイサクをもうけ、イサクはヤコブをもうけ、ヤコブはユダとその兄弟たちをもうけた。

1:3ユダはタマルによってペレスとゼラをもうけ、ペレスはヘツロンをもうけ、ヘツロンはアラムをもうけた。

1:4アラムはアミナダブをもうけ、アミナダブはナアソンをもうけ、ナアソンはサルモンをもうけた。

1:5サルモンはラハブによってボアズをもうけ、ボアズはルツによってオベドをもうけ、オベドはエッサイをもうけた。

1:6エッサイはダビデ王をもうけた。ダビデはウリヤの妻によってソロモンをもうけた。

1:7ソロモンはレハブアムをもうけ、レハブアムはアビヤをもうけ、アビヤはアサフをもうけた。2

1:8アサフはヨシャファトをもうけ、ヨシャファトはヨラムをもうけ、ヨラムはウジヤをもうけた。

1:9ウジヤはヨタムをもうけ、ヨタムはアハズをもうけ、アハズはヒゼキヤをもうけた。

1:10ヒゼキヤはマナセをもうけ、マナセはアモスをもうけ、アモスはヨシヤをもうけた。3

1:11バビロンへの移住のころ、ヨシヤはエコンヤとその兄弟たちをもうけた。4

1:12バビロンへの移住の後、エコンヤはシャルティエルをもうけ、シャルティエルはゼルバベルをもうけた。

1:13ゼルバベルはアビウドをもうけ、アビウドはエリアキムをもうけ、エリアキムはアゾルをもうけた。

1:14アゾルはサドクをもうけ、サドクはアキムをもうけ、アキムはエリウドをもうけた。

1:15エリウドはエレアザルをもうけ、エレアザルはマタンをもうけ、マタンはヤコブをもうけた。

1:16ヤコブはマリアの夫ヨセフをもうけた。このマリアから、キリストと呼ばれるイエスが生まれた。5

1:17こうして、アブラハムからダビデまでは全部で十四代、ダビデからバビロンへの移住までは十四代、バビロンへの移住からキリストまでは十四代である。

1:18イエス・キリストの誕生は、次のようなものだった。母マリアはヨセフと婚約していたが、二人が共に暮らす前に、身ごもっていることが分かった。それは聖霊によるものだった。6

1:19夫ヨセフは正しい人で、彼女を公にさらしたくなかったので、ひそかに離縁しようと考えた。

1:20そのことを思い巡らしていると、主の天使が夢に現れて言った。「ダビデの子ヨセフ、恐れずに、妻マリアを迎え入れなさい。彼女の内に宿ったものは、聖霊によるのです。

1:21彼女は男の子を産みます。その子をイエスと名づけなさい。この方が、ご自分の民をその罪から救うからです」。7

1:22このすべてが起こったのは、主が預言者を通して語られた、次の言葉が実現するためだった。

1:23「見よ、処女が身ごもり、男の子を産む。人々はその名をインマヌエルと呼ぶ」。訳すと、「神は私たちと共におられる」という意味である。8

1:24ヨセフは眠りから覚めると、主の天使に命じられたとおりにして、妻を迎え入れた。

1:25彼女が男の子を産むまで、彼女と性的な関係を持たなかった。そして、その子をイエスと名づけた。9

第2章

2:1ヘロデ王の時代、イエスがユダヤのベツレヘムで生まれると、東方から占星術の学者たちがエルサレムに来て、10

2:2尋ねた。「ユダヤ人の王として生まれた方は、どこにおられますか。その方の星が昇るのを見たので、礼拝しに来たのです」。

2:3これを聞いてヘロデ王は動揺し、エルサレム全体も共に動揺した。

2:4王は民の祭司長と律法学者をすべて集め、キリストはどこで生まれるのかと尋ねた。

2:5彼らは答えた。「ユダヤのベツレヘムです。預言者を通して、こう書かれているからです。

2:6『ユダの地、ベツレヘムよ、あなたはユダの指導者たちの中で、決して最も小さいものではない。あなたから指導者が出て、私の民イスラエルを牧するからだ』」。

2:7そこでヘロデは学者たちをひそかに呼び、星が現れた時期を正確に聞き出した。

2:8そして、ベツレヘムへ送り出して言った。「行って、その子について詳しく調べなさい。見つかったら知らせてほしい。私も行って礼拝したいのだ」。

2:9彼らは王の話を聞いて出発した。すると、昇るのを見たあの星が彼らの先に立って進み、ついにその子のいる場所の上まで来て止まった。

2:10星を見た彼らは、非常に大きな喜びに満たされた。

2:11家に入り、母マリアと共にいるその子を見て、ひれ伏して礼拝した。そして宝の箱を開き、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた。

2:12彼らは夢の中で、ヘロデのもとに戻らないようにと告げられ、別の道を通って自分たちの国へ帰った。

2:13彼らが帰った後、主の天使が夢でヨセフに現れ、言った。「起きて、その子と母親を連れ、エジプトへ逃げなさい。私が知らせるまで、そこにいなさい。ヘロデがその子を捜して殺そうとしているからです」。

2:14ヨセフは起き、夜のうちにその子と母親を連れてエジプトへ退いた。

2:15そしてヘロデが死ぬまで、そこにいた。主が預言者を通して語られた、「私はエジプトから私の子を呼び出した」という言葉が実現するためだった。

2:16ヘロデは、学者たちに欺かれたと分かると激しく怒り、人を遣わして、ベツレヘムとその周辺一帯にいる二歳以下の男の子をすべて殺させた。学者たちから正確に聞き出しておいた時期に基づいてのことだった。

2:17そのとき、預言者エレミヤを通して語られた、次の言葉が実現した。

2:18「ラマで声が聞こえた。泣き声と激しい嘆き。ラケルが子どもたちのために泣き、慰められることを拒んだ。子どもたちはもういないからだ」。

2:19ヘロデが死ぬと、エジプトにいるヨセフの夢に主の天使が現れ、

2:20言った。「起きて、その子と母親を連れ、イスラエルの地へ行きなさい。その子の命を狙っていた者たちは死にました」。

2:21ヨセフは起き、その子と母親を連れて、イスラエルの地に入った。

2:22しかし、アルケラオが父ヘロデに代わってユダヤを治めていると聞き、そこへ行くのを恐れた。さらに夢で告げられ、ガリラヤ地方へ退いた。

2:23そして、ナザレという町に来て住んだ。預言者たちを通して語られた、「彼はナザレ人と呼ばれる」という言葉が実現するためだった。11

第3章

3:1そのころ、洗礼者ヨハネが現れ、ユダヤの荒れ野で宣べ伝えていた。

3:2「悔い改めなさい。天の王国が近づいたからだ」。12

3:3この人について、預言者イザヤを通して次のように語られていたのである。「荒れ野で叫ぶ者の声。『主の道を整えよ。その通り道をまっすぐにせよ』」。

3:4ヨハネ自身は、らくだの毛の衣を着て腰に革の帯を締め、いなごと野生の蜂蜜を食べていた。

3:5エルサレム、ユダヤ全土、ヨルダン周辺の全域から、人々が彼のもとへ出て行き、

3:6自分の罪を告白し、ヨルダン川で彼から洗礼を受けていた。

3:7ヨハネは、多くのファリサイ派とサドカイ派の人々が自分の洗礼の場に来るのを見て、言った。「毒蛇の子らよ、迫り来る怒りから逃れるようにと、誰がお前たちに示したのか。

3:8それなら、悔い改めにふさわしい実を結べ。

3:9『私たちには父アブラハムがいる』などと、自分たちの中で言えると思うな。言っておく。神は、この石からでもアブラハムの子らを起こすことがおできになる。

3:10斧はすでに木の根元に置かれている。だから、良い実を結ばない木は、すべて切り倒され、火に投げ込まれる。

3:11私は、悔い改めのために水でお前たちに洗礼を授けている。しかし、私の後に来る方は私より力があり、私はその履物を運ぶにも値しない。その方は、聖霊と火でお前たちに洗礼を授ける。13

3:12その手には、穀物をより分ける箕がある。ご自分の脱穀場をすっかり清め、ご自分の麦を倉に集めるが、もみ殻は消えることのない火で焼き尽くす」。

3:13そのとき、イエスがガリラヤからヨルダン川のヨハネのもとへ来て、彼から洗礼を受けようとされた。

3:14ヨハネはそれを思いとどまらせようとして言った。「私こそ、あなたから洗礼を受ける必要があるのに、あなたが私のもとへ来られるのですか」。

3:15イエスは答えられた。「今はそうさせてください。このようにして、あらゆる正しさを満たすことが、私たちにはふさわしいのです」。そこでヨハネはイエスにそうさせた。14

3:16イエスは洗礼を受けると、すぐに水から上がられた。すると天が開き、神の霊が鳩のように降り、ご自分の上に来るのをご覧になった。

3:17そして天から声があった。「これは私の愛する子、私の喜びとする者である」。

第4章

4:1その後、イエスは悪魔から試みを受けるため、霊によって荒れ野へ導かれた。

4:2四十日四十夜、断食した後、空腹を覚えられた。

4:3試みる者が近寄って言った。「神の子なら、この石がパンになるよう命じてみろ」。

4:4イエスは答えられた。「『人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出るすべての言葉によって生きる』と書いてある」。

4:5すると悪魔はイエスを聖なる都へ連れて行き、神殿の高い縁に立たせ、

4:6言った。「神の子なら、下へ身を投げてみろ。こう書いてあるではないか。『神は、ご自分の天使たちにあなたのことを命じられる。そして、彼らはその手であなたを支え、あなたの足が石に打ち当たらないようにする』」。

4:7イエスは言われた。「『あなたの神である主を試してはならない』とも書いてある」。

4:8悪魔はさらにイエスを非常に高い山へ連れて行き、この世のすべての王国とその栄華を見せ、

4:9言った。「ひれ伏して私を礼拝するなら、これをすべてお前にやろう」。

4:10そこでイエスは言われた。「去れ、サタン。『あなたの神である主を礼拝し、ただその方だけに仕えよ』と書いてある」。

4:11すると悪魔は離れ去り、天使たちが来てイエスの世話をしていた。

4:12イエスは、ヨハネが引き渡されたと聞いて、ガリラヤへ退かれた。

4:13ナザレを去り、ゼブルンとナフタリの地域にある、湖畔のカファルナウムに来て住まわれた。

4:14預言者イザヤを通して語られた、次の言葉が実現するためだった。

4:15「ゼブルンの地、ナフタリの地、海の道、ヨルダンの向こう、異邦人のガリラヤ。15

4:16闇の中に座っていた民は、大きな光を見た。死の陰の地に座っていた者たちに、光が昇った」。

4:17そのときから、イエスは宣べ伝え始められた。「悔い改めなさい。天の王国が近づいたからです」。

4:18イエスはガリラヤ湖のほとりを歩いておられたとき、二人の兄弟、ペトロと呼ばれるシモンとその兄弟アンデレが、湖に投網を打っているのをご覧になった。二人は漁師だった。

4:19イエスは言われた。「私について来なさい。あなたがたを、人間を捕る漁師にしよう」。

4:20二人はすぐに網を残し、イエスに従った。

4:21そこから進んで、別の二人の兄弟、ゼベダイの子ヤコブと、その兄弟ヨハネが、父ゼベダイと共に舟の中で網を繕っているのをご覧になり、二人を呼ばれた。

4:22二人はすぐに舟と父を残し、イエスに従った。

4:23イエスはガリラヤ全域を巡り、人々の会堂で教え、王国の福音を宣べ伝え、民のあらゆる病気とあらゆる患いを癒やしておられた。

4:24その評判はシリア全土に広まった。人々は、さまざまな病気や苦痛にさいなまれている病人たち、悪霊に取りつかれた者、発作を起こす者、体の麻痺した者を皆連れて来た。イエスは彼らを癒やされた。16

4:25ガリラヤ、デカポリス、エルサレム、ユダヤ、ヨルダンの向こうから、大勢の群衆がイエスに従った。

第5章

5:1イエスは群衆を見ると山に上り、腰を下ろされた。弟子たちがそばに来ると、

5:2口を開いて、彼らにこう教えられた。

5:3「霊において貧しい人々は幸いです。天の王国は、その人たちのものだからです。17

5:4悲しむ人々は幸いです。その人たちは慰められるからです。

5:5柔和な人々は幸いです。その人たちは地を受け継ぐからです。

5:6正しさに飢え渇く人々は幸いです。その人たちは満たされるからです。

5:7憐れみ深い人々は幸いです。その人たちは憐れみを受けるからです。

5:8心の清い人々は幸いです。その人たちは神を見るからです。

5:9平和をつくる人々は幸いです。その人たちは神の子らと呼ばれるからです。

5:10正しさのために迫害されてきた人々は幸いです。天の王国は、その人たちのものだからです。

5:11人々が私のためにあなたがたをののしり、迫害し、偽ってあらゆる悪口を言うとき、あなたがたは幸いです。

5:12喜び、大いに喜びなさい。天にあるあなたがたの報いは大きいからです。あなたがたより前の預言者たちも、そのように迫害されたからです。

5:13あなたがたは地の塩です。しかし、塩が塩気を失ったら、何で塩気を取り戻せるでしょう。もう何の役にも立たず、外に捨てられ、人々に踏まれるだけです。

5:14あなたがたは世の光です。山の上にある町は隠れることができません。

5:15灯火をともして、升の下に置く人はいません。燭台の上に置きます。そうすれば、家の中のすべての人を照らします。

5:16そのように、あなたがたの光を人々の前に輝かせなさい。人々があなたがたの良い行いを見て、天におられるあなたがたの父をあがめるためです。

5:17私が律法や預言者を廃止するために来たと思ってはなりません。廃止するためではなく、満たすために来たのです。18

5:18というのも、確かに言っておきます。天と地が過ぎ去るまで、すべてが実現するまで、律法からは一点も一画も決して過ぎ去りません。19

5:19ですから、これらの最も小さい戒めの一つでも破り、そうするよう人々に教える者は、天の王国で最も小さい者と呼ばれます。しかし、行い、教える者は、天の王国で大きい者と呼ばれます。

5:20というのも、言っておきます。あなたがたの正しさが律法学者やファリサイ派の人々の正しさを上回らなければ、決して天の王国に入れません。

5:21昔の人々に、『殺すな。殺した者は裁きを受けるべき者となる』と言われたことを、あなたがたは聞いています。

5:22しかし、私は言います。自分の兄弟に怒る者は皆、裁きを受けるべき者となります。兄弟に『役立たず』と言う者は最高法院の裁きを受けるべき者となり、『愚か者』と言う者は火のゲヘナの罰を受けるべき者となります。20

5:23ですから、祭壇に供え物を献げるとき、兄弟があなたに対して何か言い分を持っていると思い出したなら、

5:24供え物を祭壇の前に置いたまま、まず兄弟と和解しに行きなさい。その後で戻り、供え物を献げなさい。

5:25あなたを訴える相手と道を行く間に、早く折り合いをつけなさい。さもないと、相手があなたを裁判官に引き渡し、裁判官は役人に引き渡して、あなたは牢に投げ込まれます。

5:26確かに言っておきます。最後の一コドラントを払い終えるまで、決してそこから出られません。21

5:27『姦通するな』と言われたことを、あなたがたは聞いています。

5:28しかし、私は言います。女を欲するために見る者は皆、すでに心の中でその女と姦通したのです。

5:29右の目があなたをつまずかせるなら、えぐり出して投げ捨てなさい。体の一部分を失うほうが、全身をゲヘナに投げ込まれるより、あなたのためになるからです。

5:30右手があなたをつまずかせるなら、切り落として投げ捨てなさい。体の一部分を失うほうが、全身がゲヘナに行くより、あなたのためになるからです。22

5:31また、『妻を離縁する者は、離縁状を渡せ』と言われました。

5:32しかし、私は言います。淫らな関係という理由以外で妻を離縁する者は皆、妻を姦通に陥らせることになります。また、離縁された女と結婚する者は姦通するのです。23

5:33さらに、昔の人々に、『偽りの誓いを立てるな。主に立てた誓いは果たせ』と言われたことを、あなたがたは聞いています。

5:34しかし、私は言います。いっさい誓ってはなりません。天を指しても誓ってはなりません。そこは神の王座だからです。

5:35地を指してもいけません。それは神の足台だからです。エルサレムを指してもいけません。そこは偉大な王の都だからです。

5:36自分の頭を指しても誓ってはなりません。あなたには、髪一本さえ白くも黒くもできないからです。

5:37あなたがたの言葉は、『はい』は『はい』、『いいえ』は『いいえ』であるようにしなさい。それ以上のことは、悪い者から出るのです。24

5:38『目には目を、歯には歯を』と言われたことを、あなたがたは聞いています。

5:39しかし、私は言います。悪い者に手向かってはなりません。あなたの右の頬を打つ者には、もう一方の頬も向けなさい。

5:40あなたを訴えて下着を取ろうとする者には、上着も渡しなさい。

5:41一ミリオンの道を無理に行かせる者がいたら、その人と二ミリオン行きなさい。25

5:42求める者には与え、あなたから借りようとする者を拒んではなりません。

5:43『隣人を愛し、敵を憎め』と言われたことを、あなたがたは聞いています。

5:44しかし、私は言います。敵を愛し、あなたがたを迫害する者のために祈りなさい。

5:45天におられるあなたがたの父の子らとなるためです。父は悪い者にも良い者にもご自分の太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降らせてくださるからです。

5:46あなたがたを愛する人を愛したところで、何の報いがあるでしょう。徴税人も同じことをしているではありませんか。

5:47自分の兄弟たちにだけ挨拶をするなら、何か人よりまさったことをしているでしょうか。異邦人も同じことをしているではありませんか。

5:48ですから、あなたがたの天の父が完全であるように、あなたがたも完全でありなさい。26

第6章

6:1自分の正しい行いを、人に見てもらうために人々の前でしないよう、気をつけなさい。そうでなければ、天におられるあなたがたの父から報いを受けられません。27

6:2施しをするときは、偽善者たちが人々から褒められようとして会堂や通りでするように、自分の前でラッパを吹き鳴らしてはなりません。確かに言っておきます。彼らはすでに報いを受け取っています。

6:3あなたが施しをするときには、右手のしていることを左手に知らせてはなりません。

6:4施しが隠れて行われるためです。そうすれば、隠れたところをご覧になるあなたの父が報いてくださいます。

6:5あなたがたは祈るとき、偽善者のようであってはなりません。彼らは人々に見えるように、会堂や大通りの角に立って祈るのを好みます。確かに言っておきます。彼らはすでに報いを受け取っています。

6:6あなたは祈るとき、自分の奥の部屋に入り、戸を閉めて、隠れたところにおられるあなたの父に祈りなさい。そうすれば、隠れたところをご覧になるあなたの父が報いてくださいます。

6:7祈るとき、異邦人のように言葉をむやみに重ねてはなりません。彼らは、多く語れば聞き入れられると思っています。

6:8彼らに倣ってはなりません。あなたがたが願う前から、あなたがたの父はあなたがたに必要なものをご存じだからです。

6:9ですから、あなたがたはこう祈りなさい。『天におられる私たちの父よ、あなたの名が聖なるものとされますように。

6:10あなたの王国が来ますように。あなたの御心が、天におけるように、地上でも行われますように。

6:11私たちに必要なパンを、今日お与えください。28

6:12私たちも自分に負い目のある人たちを赦したように、私たちの負い目をお赦しください。

6:13私たちを試みに陥らせず、悪い者から救い出してください』。29

6:14あなたがたが人々の過ちを赦すなら、あなたがたの天の父もあなたがたを赦してくださるからです。

6:15しかし、人々を赦さないなら、あなたがたの父もあなたがたの過ちを赦してくださいません。

6:16あなたがたは断食するとき、偽善者のように暗い顔をしてはなりません。彼らは断食していることが人に見えるよう、顔を見苦しくするからです。確かに言っておきます。彼らはすでに報いを受け取っています。30

6:17あなたは断食するとき、頭に油を塗り、顔を洗いなさい。

6:18断食が人々にではなく、隠れたところにおられるあなたの父に見えるためです。そうすれば、隠れたところをご覧になるあなたの父が報いてくださいます。

6:19自分のために地上に宝を蓄えてはなりません。そこでは虫や腐食が物を損ない、盗人が壁を破って盗みます。

6:20自分のために天に宝を蓄えなさい。そこでは虫も腐食も物を損なわず、盗人が壁を破って盗むこともありません。

6:21あなたの宝のあるところに、あなたの心もあるからです。

6:22体の灯火は目です。ですから、あなたの目が澄んでいれば、体全体が明るくなります。31

6:23しかし、あなたの目が悪ければ、体全体が暗くなります。あなたの内にある光が闇であるなら、その闇はどれほど深いことでしょう。

6:24誰も二人の主人に仕えることはできません。一方を憎んで他方を愛するか、一方に心を寄せて他方を軽んじることになるからです。あなたがたは、神と富との両方に仕えることはできません。

6:25だから言っておきます。何を食べようかと自分の命のことで、何を着ようかと体のことで、思い悩んではなりません。命は食べ物より、体は衣服より大切ではありませんか。

6:26空の鳥を見なさい。種を蒔かず、刈り入れず、倉に集めることもしません。それでも、あなたがたの天の父が養ってくださいます。あなたがたは鳥よりも、はるかに大切ではありませんか。

6:27あなたがたの誰が、思い悩んだところで、自分の寿命をわずかでも延ばせるでしょうか。32

6:28なぜ衣服のことで思い悩むのですか。野の花がどのように育つか、よく見なさい。働きもせず、糸を紡ぐこともしません。

6:29それでも言っておきます。栄華を極めたソロモンさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいませんでした。

6:30今日生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草さえ、神はこう装ってくださいます。まして、あなたがたには、なおさらではありませんか。信仰の薄い人たち。

6:31ですから、『何を食べよう』『何を飲もう』『何を着よう』と、思い悩んではなりません。

6:32これらはすべて、異邦の人々が追い求めるものです。あなたがたの天の父は、あなたがたにそれらすべてが必要なことをご存じだからです。

6:33まず王国と、その方の正しさを求めなさい。そうすれば、これらのものもすべて加えて与えられます。33

6:34ですから、明日のことを思い悩んではなりません。明日は明日自身のことを思い悩むからです。その日の苦労は、その日だけで十分です。

第7章

7:1裁いてはなりません。あなたがたが裁かれないためです。

7:2あなたがたが裁くその裁きで、あなたがたも裁かれ、量るその量りで、あなたがたに量り与えられるからです。

7:3なぜ兄弟の目の中の小さな木くずは見えるのに、自分の目の中の梁には気づかないのですか。

7:4自分の目に梁があるのに、どうして兄弟に『あなたの目の木くずを取らせてください』と言えるのですか。

7:5偽善者よ、まず自分の目から梁を取り除きなさい。そうすれば、はっきり見えるようになり、兄弟の目から木くずを取り除けます。

7:6聖なるものを犬に与えず、あなたがたの真珠を豚の前に投げてはなりません。それを足で踏みつけ、向き直ってあなたがたを引き裂くかもしれません。

7:7求めなさい。そうすれば与えられます。捜しなさい。そうすれば見つかります。たたきなさい。そうすれば開かれます。

7:8求める人は皆受け、捜す人は見つけ、たたく人には開かれるからです。

7:9あなたがたの中に、息子がパンを求めるのに石を渡す人がいるでしょうか。

7:10魚を求めるのに蛇を渡すでしょうか。

7:11あなたがたは悪い者でありながら、自分の子どもには良い贈り物をすることを心得ています。まして、天におられるあなたがたの父は、ご自分に求める人々に、どれほど良いものをくださることでしょう。

7:12ですから、人からしてほしいと思うことはすべて、あなたがたも人にしなさい。これこそ律法と預言者です。

7:13狭い門から入りなさい。門は広く、滅びへと導く道はゆったりしていて、そこから入る者は多いからです。

7:14門は狭く、命へと導く道は細く、それを見いだす者は少ないからです。

7:15偽預言者に気をつけなさい。羊の衣をまとって近づいて来ますが、内側は獲物をむさぼる狼です。

7:16その実によって、彼らを見分けられます。茨からぶどうを、あざみからいちじくを採るでしょうか。

7:17同じように、良い木はすべて良い実を結び、腐った木は悪い実を結びます。

7:18良い木は悪い実を結ぶことができず、腐った木は良い実を結ぶことができません。

7:19良い実を結ばない木は、すべて切り倒されて火に投げ込まれます。

7:20だから、その実によって彼らを見分けられるのです。

7:21私に『主よ、主よ』と言う者が皆、天の王国に入るのではありません。天におられる私の父の御心を行う者が入るのです。

7:22その日には、多くの者が私に言うでしょう。『主よ、主よ、私たちはあなたの名によって預言し、あなたの名によって悪霊を追い出し、あなたの名によって数多くの力ある業を行ったではありませんか』。

7:23そのとき私は、彼らにはっきり告げます。『私はあなたがたを一度も知ったことがない。不法を行う者たち、私から離れ去れ』。

7:24ですから、私のこれらの言葉を聞いて行う人は皆、岩の上に家を建てた賢い人にたとえられるでしょう。

7:25雨が降り、川があふれ、風が吹いてその家に打ちつけましたが、倒れませんでした。岩を土台にしていたからです。

7:26私のこれらの言葉を聞いても行わない人は皆、砂の上に家を建てた愚かな人にたとえられるでしょう。

7:27雨が降り、川があふれ、風が吹いてその家に襲いかかると、家は倒れました。その崩壊はひどいものでした」。

7:28イエスがこれらの言葉を語り終えると、群衆はその教えに驚嘆した。

7:29自分たちの律法学者とは違い、権威を持つ者として彼らを教えておられたからである。

第8章

8:1イエスが山から下りると、大勢の群衆が従った。

8:2すると、重い皮膚病の人が近づいてひれ伏し、言った。「主よ、お望みなら、私を清くすることがおできになります」。34

8:3イエスは手を伸ばして彼に触れ、「そう望む。清くなりなさい」と言われた。すると、たちまちその皮膚病は清められた。

8:4イエスは言われた。「誰にも話さないように気をつけなさい。ただ行って、祭司に体を見せ、モーセが命じた供え物を献げなさい。彼らへの証しとなるためです」。35

8:5イエスがカファルナウムに入られると、百人隊長が近づいて願い、

8:6言った。「主よ、私のしもべが家で麻痺して寝込んでおり、ひどく苦しんでいます」。36

8:7イエスは言われた。「私が行って癒やしましょう」。

8:8百人隊長は答えた。「主よ、あなたを屋根の下にお迎えする資格は私にはありません。ただ、ひと言おっしゃってください。そうすれば、しもべは癒やされます。

8:9と申しますのも、私も権威の下にある者で、自分の下に兵士を持っています。この者に『行け』と言えば行き、別の者に『来い』と言えば来ます。自分の奴隷に『これをしろ』と言えば、そのとおりにします」。

8:10イエスはこれを聞いて驚き、従って来た人々に言われた。「確かに言っておきます。イスラエルの誰にも、これほどの信仰を見たことはありません。

8:11言っておきます。多くの人が東や西から来て、天の王国で、アブラハム、イサク、ヤコブと共に食卓に着きます。

8:12しかし、王国の子らは外の闇に投げ出されます。そこでは泣き叫びと歯ぎしりがあるのです」。

8:13そして百人隊長に言われた。「帰りなさい。あなたが信じたとおりになりますように」。しもべは、ちょうどその時に癒やされた。

8:14イエスはペトロの家に入り、そのしゅうとめが熱を出して寝ているのをご覧になった。

8:15その手に触れると、熱は去り、彼女は起きてイエスに仕えた。

8:16夕方になると、人々は悪霊に取りつかれた人を大勢連れて来た。イエスは言葉によって霊を追い出し、具合の悪い人を皆癒やされた。

8:17預言者イザヤを通して語られた、「彼は私たちの弱さを引き受け、病を担った」という言葉が実現するためだった。

8:18イエスは、ご自分を囲む大勢の群衆を見て、向こう岸へ渡るよう命じられた。

8:19一人の律法学者が近づいて言った。「先生、どこへ行かれても、私はあなたに従います」。

8:20イエスは言われた。「狐には穴があり、空の鳥には巣があります。しかし、人の子には、頭を横たえる場所もありません」。37

8:21弟子のもう一人が言った。「主よ、まず帰って、父を葬ることをお許しください」。

8:22イエスは言われた。「私に従いなさい。死んだ者たちに、自分たちの死者を葬らせておきなさい」。

8:23イエスが舟に乗られると、弟子たちも従った。

8:24すると湖が激しく荒れ、舟が波に覆われるほどになった。しかし、イエスは眠っておられた。

8:25弟子たちは近づいて起こし、「主よ、お救いください。私たちは死んでしまいます」と言った。

8:26イエスは言われた。「なぜおびえるのですか、信仰の薄い人たち」。そして起き上がり、風と湖を叱りつけると、すっかり静かになった。

8:27人々は驚き、「この方はどういう方なのだろう。風も湖も従うとは」と言った。

8:28イエスが向こう岸のガダラ人の地方に着かれると、悪霊に取りつかれた二人の者が墓場から出て来て、イエスに出会った。二人はひどく凶暴で、誰もその道を通れないほどだった。

8:29彼らは叫んだ。「神の子よ、私たちとあなたに何の関わりがあるのですか。定められた時より前に、ここへ私たちを苦しめに来たのですか」。

8:30そこから離れた場所で、たくさんの豚の群れが餌を食べていた。

8:31悪霊たちはイエスに願った。「私たちを追い出すなら、豚の群れに送り込んでください」。

8:32イエスが「行け」と言われると、悪霊たちは出て行って豚に入った。すると群れ全体が崖を駆け下りて湖に飛び込み、水の中で死んだ。

8:33豚を飼っていた者たちは逃げ、町に行って一切のことと、悪霊に取りつかれていた人たちのことを知らせた。

8:34すると町中の人がイエスに会いに出て来て、イエスを見ると、自分たちの地方から立ち去ってほしいと願った。

第9章

9:1イエスは舟に乗って湖を渡り、ご自分の町に戻られた。

9:2すると、人々が寝床に横たわった麻痺の人を運んで来た。イエスは彼らの信仰を見て、その人に言われた。「子よ、勇気を出しなさい。今、あなたの罪は赦されます」。

9:3律法学者のうちの何人かは、心の中で言った。「この男は冒瀆している」。

9:4イエスは彼らの考えを知り、言われた。「なぜ心の中で悪いことを考えるのですか。

9:5『今、あなたの罪は赦される』と言うのと、『起きて歩きなさい』と言うのと、どちらがたやすいでしょうか。

9:6しかし、人の子が地上で罪を赦す権威を持っていることを、あなたがたが知るために」。そして、麻痺の人に言われた。「起きなさい。寝床を担いで家に帰りなさい」。

9:7その人は起きて、自分の家へ帰った。

9:8群衆はこれを見て恐れ、このような権威を人間に与えてくださった神をあがめた。

9:9イエスはそこから進むと、マタイという人が徴税所に座っているのをご覧になり、「私に従いなさい」と言われた。彼は立ち上がって従った。

9:10イエスが家で食卓に着いておられると、多くの徴税人や罪人が来て、イエスや弟子たちと共に席に着いた。

9:11ファリサイ派の人々はこれを見て、弟子たちに言った。「なぜあなたがたの先生は、徴税人や罪人と食事をするのですか」。

9:12イエスはそれを聞いて言われた。「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく、具合の悪い人です。

9:13『私が望むのは憐れみであって、いけにえではない』とはどういうことか、行って学びなさい。私が来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためです」。

9:14そのとき、ヨハネの弟子たちが近づいて尋ねた。「私たちやファリサイ派の人々はたびたび断食するのに、なぜあなたの弟子たちは断食しないのですか」。

9:15イエスは言われた。「花婿が一緒にいる間、婚礼の客たちが悲しめるでしょうか。しかし、花婿が彼らから取り去られる日々が来ます。そのときには断食するのです。

9:16縮めていない布の継ぎを、古い衣に当てる人はいません。その継ぎ布が衣を引き裂き、破れがいっそうひどくなるからです。

9:17また、新しいぶどう酒を古い革袋に入れることもしません。そんなことをすれば、革袋は破れ、ぶどう酒は流れ出し、革袋もだめになります。新しいぶどう酒は新しい革袋に入れます。そうすれば両方とも保たれます」。

9:18イエスがこのことを話しておられると、一人の指導者が来てひれ伏し、言った。「娘がたった今死にました。でも、おいでになって娘に手を置いてください。そうすれば生き返ります」。

9:19イエスは立ち上がり、弟子たちと共に彼について行かれた。

9:20すると、十二年間出血の続いている女が後ろから近づき、イエスの衣の房に触れた。

9:21「衣に触れさえすれば救われる」と、心の中で思っていたのである。

9:22イエスは振り向いて彼女を見ると、言われた。「娘よ、勇気を出しなさい。あなたの信仰があなたを救ったのです」。その女は、その時から救われた。38

9:23イエスは指導者の家に着き、笛を吹く者たちと騒ぎ立てる群衆を見ると、

9:24言われた。「退きなさい。少女は死んだのではありません。眠っているのです」。人々はイエスをあざ笑った。

9:25群衆が外へ出されると、イエスは中に入って少女の手を取られた。すると少女は起き上がった。

9:26この評判は、その地方全体に広まった。

9:27イエスがそこから進んで行かれると、目の見えない二人の人が、「ダビデの子よ、私たちを憐れんでください」と叫びながら従った。

9:28イエスが家に入られると、二人が近づいて来た。イエスは尋ねられた。「私にこれができると信じますか」。二人は「はい、主よ」と答えた。

9:29そこでイエスは二人の目に触れ、「あなたがたの信仰に応じて、そうなりますように」と言われた。

9:30すると二人の目が開いた。イエスは、「気をつけなさい。誰にも知られないようにしなさい」と厳しく命じられた。

9:31しかし二人は出て行き、その地方全体にイエスのことを言い広めた。

9:32二人が出て行くと、悪霊に取りつかれて口の利けない人が、イエスのもとに連れて来られた。

9:33悪霊が追い出されると、その人は口を利いた。群衆は驚いて、「イスラエルで、こんなことが見られたためしはない」と言った。

9:34しかし、ファリサイ派の人々は、「悪霊の支配者の力で悪霊を追い出しているのだ」と言っていた。

9:35イエスはすべての町と村を巡り、人々の会堂で教え、王国の福音を宣べ伝え、あらゆる病気とあらゆる患いを癒やしておられた。

9:36群衆をご覧になると、深く憐れまれた。彼らが羊飼いのいない羊のように、疲れ果て、打ち捨てられていたからである。

9:37そこで弟子たちに言われた。「収穫は多いのに、働き手は少ないのです。

9:38ですから、収穫の主に、ご自分の収穫のために働き手を送り出してくださるよう願いなさい」。

第10章

10:1イエスは十二人の弟子を呼び寄せ、汚れた霊を追い出し、あらゆる病気とあらゆる患いを癒やす権威を授けられた。

10:2十二人の使徒の名は次のとおりである。第一に、ペトロと呼ばれるシモンとその兄弟アンデレ。ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネ。

10:3フィリポとバルトロマイ。トマスと徴税人マタイ。アルファイの子ヤコブとタダイ。

10:4熱心な者シモン。そして、イエスを引き渡したイスカリオテのユダである。39

10:5イエスはこの十二人を遣わすに当たり、こう命じられた。「異邦人のもとへ通じる道に行かず、サマリア人の町に入ってはなりません。

10:6むしろ、イスラエルの家の失われた羊たちのもとへ行きなさい。

10:7行って、『天の王国が近づいた』と宣べ伝えなさい。

10:8病人を癒やし、死者を起こし、重い皮膚病の人を清め、悪霊を追い出しなさい。無償で受けたのです。無償で与えなさい。

10:9帯の中に金貨も銀貨も銅貨も用意してはなりません。

10:10旅の袋も、二枚の下着も、履物も、杖も用意してはなりません。働き手は食べ物を受けるに値するからです。

10:11どの町や村に入っても、そこで誰がふさわしいかを調べ、立ち去るまで、その人のところにとどまりなさい。

10:12家に入るとき、その家に挨拶をしなさい。

10:13その家がふさわしければ、あなたがたの平和がそこに来るようにしなさい。ふさわしくなければ、その平和があなたがたに戻るようにしなさい。

10:14あなたがたを迎えず、言葉に耳も貸さない者がいたら、その家や町から出るときに、足の埃を払い落としなさい。

10:15確かに言っておきます。裁きの日には、その町よりも、ソドムとゴモラの地のほうが、まだ耐えやすいでしょう。

10:16見なさい。私はあなたがたを、狼の群れの中に羊を送り込むように遣わします。ですから、蛇のように賢く、鳩のように純真でありなさい。

10:17人々に気をつけなさい。彼らはあなたがたを議会に引き渡し、自分たちの会堂で鞭打つからです。

10:18また、私のために、総督や王の前に引き出されます。彼らと異邦人への証しとなるためです。

10:19引き渡されたとき、どのように、何を話そうかと思い悩んではなりません。その時に、話すべきことが与えられるからです。

10:20話すのはあなたがたではなく、あなたがたの内で語られる、あなたがたの父の霊です。

10:21兄弟は兄弟を、父は子を死に引き渡し、子どもたちは親に逆らって立ち上がり、死に至らせます。

10:22あなたがたは、私の名のためにすべての人に憎まれます。しかし、最後まで耐え抜いた者が救われます。

10:23この町で迫害されたら、別の町に逃げなさい。というのも、確かに言っておきます。人の子が来るまでに、あなたがたがイスラエルの町々を回り終えることは決してないのです。40

10:24弟子は師にまさらず、奴隷は主人にまさりません。

10:25弟子は師のように、奴隷は主人のようになれば十分です。家の主人をベルゼブルと呼んだのなら、まして、その家の者たちはなおさらそう呼ばれるでしょう。

10:26ですから、彼らを恐れてはなりません。覆われているもので現されないものはなく、隠されているもので知られないものはないからです。

10:27私が暗闇であなたがたに語ることを、明るいところで話しなさい。耳元で聞くことを、屋根の上から宣べ伝えなさい。

10:28体を殺しても、魂を殺せない者たちを恐れてはなりません。むしろ、魂も体もゲヘナで滅ぼすことのできる方を恐れなさい。41

10:29雀二羽は一アサリオンで売られているではありませんか。その一羽も、あなたがたの父を離れて地に落ちることはありません。42

10:30あなたがたの頭の髪の毛さえ、すべて数えられています。

10:31ですから恐れてはなりません。あなたがたは、たくさんの雀よりも大切なのです。

10:32人々の前で私を認める者は誰でも、私も天におられる私の父の前で、その人を認めます。

10:33しかし、人々の前で私を否む者は、私も天におられる私の父の前で、その人を否みます。

10:34私が地上に平和を投じるために来たと思ってはなりません。平和ではなく、剣を投じるために来たのです。43

10:35私が来たのは、息子を父と、娘を母と、嫁をしゅうとめと、仲たがいさせるためです。

10:36その人の敵は、自分の家の者たちとなります。

10:37私よりも父や母を愛する者は、私にふさわしくありません。私よりも息子や娘を愛する者は、私にふさわしくありません。

10:38自分の十字架を引き受けて私に従わない者は、私にふさわしくありません。

10:39自分の命を手に入れた者はそれを失い、私のために自分の命を失った者は、それを手に入れます。

10:40あなたがたを迎える者は私を迎え、私を迎える者は、私を遣わされた方を迎えるのです。

10:41預言者を預言者として迎える者は預言者の報いを受け、正しい人を正しい人として迎える者は正しい人の報いを受けます。

10:42この小さな者たちの一人に、弟子として、冷たい水を一杯だけでも飲ませる者は、確かに言っておきます。決してその報いを失いません」。

第11章

11:1イエスは十二人の弟子への指示を終えると、彼らの町々で教え、宣べ伝えるために、そこを去られた。

11:2ヨハネは牢の中でキリストの業について聞き、弟子たちを遣わして、

11:3尋ねた。「あなたが来るべき方なのですか。それとも、私たちは別の方を待つべきでしょうか」。

11:4イエスは答えられた。「行って、あなたがたが聞いていること、見ていることをヨハネに知らせなさい。

11:5目の見えない人が見えるようになり、足の不自由な人が歩き、重い皮膚病の人が清められ、耳の聞こえない人が聞き、死者が起こされ、貧しい人々に福音が告げられています。

11:6私につまずかない人は幸いです」。

11:7ヨハネの弟子たちが帰って行くと、イエスは群衆にヨハネのことを話し始められた。「あなたがたは何を見に荒れ野へ出て行ったのですか。風に揺れる葦ですか。

11:8それでは、何を見に行ったのですか。柔らかな衣をまとった人ですか。そういう衣を着る人は、王の宮殿にいます。

11:9それでは、なぜ出て行ったのですか。預言者を見るためですか。そうです。言っておきます。預言者以上の者を見るためです。

11:10この人について、こう書いてあります。『見よ、私はあなたに先立って私の使者を遣わす。彼はあなたの前に、あなたの道を整える』。

11:11確かに言っておきます。女から生まれた者の中で、洗礼者ヨハネより大きい者は起こされませんでした。しかし、天の王国で最も小さい者も、彼より大きいのです。44

11:12洗礼者ヨハネの時代から今に至るまで、天の王国は暴力を受け、暴力を振るう者たちがそれを奪い取っています。45

11:13すべての預言者と律法が預言したのは、ヨハネまでだからです。

11:14あなたがたが受け入れる気があるなら、この人こそ、来ることになっているエリヤです。

11:15耳のある者は聞きなさい。

11:16この世代を何にたとえればよいでしょう。広場に座った子どもたちが、ほかの子どもたちに呼びかけ、

11:17こう言っているようなものです。『笛を吹いてあげたのに、踊ってくれなかった。嘆きの歌を歌ったのに、胸を打って悲しんでくれなかった』。

11:18というのも、ヨハネが来て、食べも飲みもしないと、人々は『悪霊に取りつかれている』と言います。

11:19人の子が来て、食べたり飲んだりすると、『見ろ、大食いの酒飲みだ。徴税人や罪人の仲間だ』と言います。しかし、知恵の正しさは、その業によって示されました」。46

11:20それからイエスは、ご自分の力ある業が最も多く行われた町々を、悔い改めなかったことで責め始められた。

11:21「災いです、コラジンよ。災いです、ベトサイダよ。というのも、あなたがたの間で行われた力ある業が、ティルスとシドンで行われていたなら、彼らはとうの昔に粗布をまとい、灰の中で悔い改めたでしょう。

11:22しかし言っておきます。裁きの日には、あなたがたよりティルスとシドンのほうが、まだ耐えやすいでしょう。

11:23カファルナウムよ、あなたは天まで高く上げられるとでもいうのですか。死者の国まで下るのです。というのも、あなたの中で行われた力ある業がソドムで行われていたなら、ソドムは今日まで残ったでしょう。

11:24しかし言っておきます。裁きの日には、あなたよりソドムの地のほうが、まだ耐えやすいでしょう」。

11:25そのとき、イエスはこう言われた。「父よ、天と地の主よ、あなたをたたえます。あなたはこれらのことを、知恵ある者や賢い者から隠し、幼子たちに現してくださいました。

11:26そうです、父よ。これが、あなたのお喜びになることだったのです。

11:27すべては、私の父から私に委ねられています。父のほかに子を知る者はなく、子と、子が現そうと望む者のほかに、父を知る者はいません。

11:28疲れ、重荷を負わされている人は皆、私のもとへ来なさい。私があなたがたを休ませます。

11:29私の軛を負い、私から学びなさい。私は柔和で、心のへりくだった者だからです。そうすれば、あなたがたの魂は休みを見いだします。

11:30私の軛は負いやすく、私の荷は軽いのです」。47

第12章

12:1そのころ、イエスは安息日に麦畑を通っておられた。弟子たちは空腹になり、穂を摘んで食べ始めた。

12:2ファリサイ派の人々はこれを見て、イエスに言った。「見てください。あなたの弟子たちは、安息日にしてはならないことをしています」。

12:3イエスは言われた。「ダビデとその仲間たちが空腹になったとき、ダビデが何をしたか、読んだことがないのですか。

12:4神の家に入り、供えのパンを皆で食べたことを。そのパンは、彼も仲間たちも食べてはならず、祭司だけに許されたものでした。

12:5また、安息日には神殿で祭司たちが安息日を汚しても罪がないと、律法で読んだことがないのですか。

12:6言っておきます。ここには神殿より大きなものがあります。

12:7『私が望むのは憐れみであって、いけにえではない』という意味を知っていたなら、あなたがたは罪のない者たちを罪に定めなかったでしょう。

12:8人の子は安息日の主だからです」。

12:9イエスはそこを去って、彼らの会堂に入られた。

12:10そこには、片手が萎えた人がいた。人々はイエスを訴えようとして、「安息日に癒やすことは許されていますか」と尋ねた。

12:11イエスは言われた。「あなたがたのうち、自分の羊が一匹いて、安息日に穴に落ちたら、つかんで引き上げない人がいるでしょうか。

12:12人間は羊よりも、どれほど大切でしょう。ですから、安息日に良いことをするのは許されています」。

12:13そしてその人に、「手を伸ばしなさい」と言われた。手を伸ばすと元どおりになり、もう一方の手と同じく健やかになった。

12:14ファリサイ派の人々は出て行き、イエスを殺すにはどうしたらよいか、相談した。

12:15イエスはそれを知って、そこから退かれた。多くの人が従って来たので、皆を癒やし、

12:16ご自分のことを言い広めないよう厳しく命じられた。

12:17預言者イザヤを通して語られた、次の言葉が実現するためだった。

12:18「見よ、私の選んだ僕、私の愛する者、私の心が喜ぶ者。私は彼の上に私の霊を置く。彼は諸民族に公正を告げる。48

12:19争わず、叫ばず、大通りでその声を聞く者もいない。

12:20傷ついた葦を折らず、くすぶる灯芯を消さない。公正を勝利へと導くまで。

12:21諸民族は彼の名に望みを置く」。

12:22そのとき、悪霊に取りつかれ、目が見えず口も利けない人が連れて来られた。イエスが癒やされると、その人は口を利き、目も見えるようになった。

12:23群衆は皆驚き、「この方がダビデの子なのだろうか」と言った。

12:24しかし、ファリサイ派の人々はそれを聞いて、「この男が悪霊を追い出すのは、悪霊の支配者ベルゼブルの力によるのだ」と言った。

12:25イエスは彼らの考えを知り、言われた。「どんな王国も内輪で分裂すれば荒れ果て、どんな町や家も内輪で分裂すれば立ち行きません。

12:26サタンがサタンを追い出すなら、内輪で分裂したことになります。それなら、どうしてその王国が立ち行くでしょうか。

12:27私がベルゼブルの力で悪霊を追い出すなら、あなたがたの子らは誰の力で追い出すのですか。だから、彼ら自身があなたがたを裁く者となります。

12:28しかし、私が神の霊によって悪霊を追い出しているのなら、神の王国は、すでにあなたがたのところへ来ているのです。

12:29また、まず強い者を縛らなければ、どうしてその家に入って家財を奪えるでしょうか。縛って初めて、その家を略奪できます。

12:30私と共にいない者は私に敵対し、私と共に集めない者は散らしているのです。

12:31だから言っておきます。人間には、どんな罪も冒瀆も赦されます。しかし、霊に対する冒瀆は赦されません。

12:32人の子に逆らう言葉を口にする者は赦されます。しかし、聖霊に逆らって語る者は、この時代にも来るべき時代にも赦されません。49

12:33木を良いとし、その実も良いとするか、木を悪いとし、その実も悪いとするか、どちらかにしなさい。木は実によって知られるからです。

12:34毒蛇の子らよ、あなたがたは悪い者なのに、どうして良いことを語れるでしょう。心にあふれるものを口が語るのです。

12:35良い人は良い蓄えから良いものを取り出し、悪い人は悪い蓄えから悪いものを取り出します。

12:36言っておきます。人々は、口にした無益な言葉の一つ一つについて、裁きの日に説明を求められます。

12:37あなたは自分の言葉によって正しいとされ、自分の言葉によって罪に定められるからです」。

12:38そのとき、何人かの律法学者とファリサイ派の人々が言った。「先生、あなたからしるしを見せていただきたい」。

12:39イエスは答えられた。「悪く、姦通する世代はしるしを求めます。しかし、預言者ヨナのしるしのほかに、しるしは与えられません。

12:40ヨナが海の大きな生き物の腹の中に三日三夜いたように、人の子も地の奥に三日三夜いることになります。

12:41ニネベの人々は裁きのとき、この世代と共に立ち上がり、この世代を罪に定めます。彼らはヨナの宣教を受けて悔い改めたからです。そして見なさい。ここにはヨナより大きなものがあります。

12:42南の女王は裁きのとき、この世代と共に起こされ、この世代を罪に定めます。彼女はソロモンの知恵を聞くため、地の果てから来たからです。そして見なさい。ここにはソロモンより大きなものがあります。

12:43汚れた霊は人から出て行くと、休み場を求めて水のない所を歩き回りますが、見つかりません。

12:44そこで、『出て来た自分の家に戻ろう』と言います。戻ってみると、家は空いており、掃除がされ、整えられています。

12:45そこで行って、自分より悪い別の七つの霊を連れて来ます。霊たちは入り込み、そこに住みつきます。こうして、その人の後の状態は初めより悪くなります。この悪い世代もそうなるのです」。

12:46イエスがまだ群衆に話しておられると、母と兄弟たちが、話をしたいと外に立っていた。

12:47ある人が言った。「あなたのお母様とご兄弟たちが、話をしたいと外に立っておられます」。

12:48イエスは知らせてくれた人に答えられた。「私の母とは誰ですか。私の兄弟とは誰ですか」。

12:49そして弟子たちのほうへ手を伸ばし、言われた。「見なさい。私の母、私の兄弟はここにいます。

12:50天におられる私の父の御心を行う人は誰でも、私の兄弟、姉妹、母なのです」。

第13章

13:1その日、イエスは家を出て、湖のほとりに座っておられた。

13:2大勢の群衆が集まって来たので、イエスは舟に乗って座られ、群衆は皆、岸辺に立っていた。

13:3イエスはたとえで多くのことを語られた。「さあ、種を蒔く人が、種蒔きに出て行きました。

13:4蒔いていると、ある種は道端に落ち、鳥が来て食べてしまいました。

13:5別の種は、土の少ない石だらけの所に落ちました。土が深くないので、すぐに芽を出しましたが、

13:6日が昇ると焼け、根がないために枯れました。

13:7別の種は茨の中に落ち、茨が伸びて、それをふさいでしまいました。

13:8別の種は良い地に落ちて実を結び、あるものは百倍、あるものは六十倍、あるものは三十倍になりました。

13:9耳のある者は聞きなさい」。

13:10弟子たちが近づいて尋ねた。「なぜあの人たちには、たとえでお話しになるのですか」。

13:11イエスは答えられた。「あなたがたには天の王国の秘められたことを知ることが与えられていますが、あの人たちには与えられていないからです。

13:12持っている者は与えられて豊かになり、持っていない者は、持っているものまで取り上げられます。

13:13私が彼らにたとえで語るのは、彼らが見ても見ず、聞いても聞かず、悟らないからです。

13:14彼らには、イザヤのこの預言が実現しています。『あなたがたはいくら聞いても、決して悟らない。いくら見ても、決して見て取らない。

13:15この民の心は鈍くなり、耳は聞こえにくくなり、彼らは自分の目を閉じたからだ。目で見、耳で聞き、心で悟って立ち帰り、私が彼らを癒やすことのないように』。50

13:16しかし、あなたがたの目は、見ているので幸いです。耳も、聞いているので幸いです。

13:17確かに言っておきます。多くの預言者や正しい人々が、あなたがたの見ているものを見たいと願っても見られず、あなたがたの聞いていることを聞きたいと願っても聞けませんでした。

13:18ですから、あなたがたは種を蒔いた人のたとえを聞きなさい。

13:19王国の言葉を聞いても悟らない人には、悪い者が来て、その心に蒔かれたものを奪います。道端に蒔かれたものとは、この人のことです。

13:20石だらけの所に蒔かれたものとは、言葉を聞くとすぐ喜んで受け入れる人のことです。

13:21しかし、自分の内に根がなく、しばらくだけ続きます。言葉のために苦難や迫害が起こると、すぐにつまずきます。

13:22茨の中に蒔かれたものとは、言葉を聞くものの、この時代の心配事と富の惑わしが言葉をふさぎ、実を結ばなくなる人のことです。

13:23良い地に蒔かれたものとは、言葉を聞いて悟る人のことです。その人は実を結び、百倍、六十倍、三十倍と、それぞれに実を生み出します」。

13:24イエスは別のたとえを示された。「天の王国は、自分の畑に良い種を蒔いた人にたとえられます。

13:25人々が眠っている間にその人の敵が来て、麦の間に毒麦を蒔き足し、去って行きました。

13:26苗が伸びて実を結ぶと、毒麦も姿を現しました。

13:27家の主人の奴隷たちが来て言いました。『ご主人様、ご自分の畑には良い種を蒔かれたのではありませんか。それなら、毒麦はどこから来たのですか』。

13:28主人は言いました。『敵がやったのだ』。奴隷たちは言いました。『では、行って集めましょうか』。

13:29主人は答えました。『いや、毒麦を集めるとき、一緒に麦まで根こそぎにしてしまうかもしれない。

13:30収穫まで、両方とも育つままにしておきなさい。収穫の時、刈り手たちにこう言おう。まず毒麦を集め、焼くために束にしなさい。麦は私の倉に集めなさい』」。

13:31イエスは別のたとえを示された。「天の王国は、からし種一粒に似ています。ある人がそれを取って、自分の畑に蒔きました。

13:32それはすべての種より小さいのに、育つと野菜より大きくなり、木となって、空の鳥が来て枝に宿るほどになります」。

13:33イエスは別のたとえを語られた。「天の王国はパン種に似ています。女がそれを取って三サトンの粉の中に隠すと、ついには全体が発酵しました」。51

13:34イエスはこれらのことをすべて、たとえで群衆に語られ、たとえを用いずには何も語られなかった。

13:35預言者を通して語られた、「私は口を開いてたとえを語り、初めから隠されていたことを告げよう」という言葉が実現するためだった。

13:36それからイエスは群衆を離れ、家に入られた。弟子たちが近づいて、「畑の毒麦のたとえを説明してください」と言った。

13:37イエスは答えられた。「良い種を蒔く者は人の子です。

13:38畑は世界です。良い種は王国の子ら、毒麦は悪い者の子らです。

13:39毒麦を蒔いた敵は悪魔です。収穫は時代の終わり、刈り手は天使たちです。

13:40毒麦を集めて火で焼くように、時代の終わりにもそうなります。

13:41人の子は自分の天使たちを遣わし、その王国から、つまずきの原因となるすべてのものと、不法を行う者たちを集めさせ、

13:42燃える炉に投げ込ませます。そこでは泣き叫びと歯ぎしりがあるのです。

13:43そのとき、正しい人々は彼らの父の王国で太陽のように輝きます。耳のある者は聞きなさい。

13:44天の王国は、畑に隠された宝に似ています。ある人がそれを見つけて隠し、その喜びから、行って持ち物をすべて売り、その畑を買います。

13:45また、天の王国は、良い真珠を探す商人に似ています。

13:46非常に高価な真珠を一つ見つけると、行って持ち物をすべて売り払い、それを買いました。

13:47また、天の王国は、湖に投げ入れられ、あらゆる種類のものを集める網に似ています。

13:48網がいっぱいになると岸に引き上げ、座って、良いものを容器に集め、悪いものを外に捨てます。

13:49時代の終わりにもそうなります。天使たちが出て行き、正しい人々の中から悪い者たちをより分け、

13:50燃える炉に投げ込みます。そこでは泣き叫びと歯ぎしりがあるのです。

13:51これらのことをすべて悟りましたか」。弟子たちは、「はい」と答えた。

13:52イエスは言われた。「だから、天の王国の弟子となった律法学者は皆、自分の宝の蔵から新しいものと古いものを取り出す家の主人に似ているのです」。

13:53イエスはこれらのたとえを語り終えると、そこを去られた。

13:54郷里に来て、人々の会堂で教えられると、人々は驚き、言った。「この人のこの知恵と力ある業は、どこから来たのだろう。

13:55この人は大工の息子ではないか。母はマリアといい、兄弟はヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダではないか。

13:56姉妹たちも皆、私たちのところにいるではないか。それなら、このすべてはどこから来たのだろう」。

13:57そして、イエスにつまずいた。イエスは言われた。「預言者が敬われないのは、自分の郷里と家の中だけです」。

13:58彼らが信じなかったため、そこでは力ある業を多くは行われなかった。

第14章

14:1そのころ、領主ヘロデはイエスの評判を聞き、

14:2家臣たちに言った。「これは洗礼者ヨハネだ。死者の中から起こされたのだ。だから、あのような力が彼の内に働いているのだ」。

14:3ヘロデは、自分の兄弟フィリポの妻ヘロディアのために、ヨハネを捕らえ、縛って牢に入れていた。

14:4ヨハネが、「あなたが彼女を妻にすることは許されない」と言っていたからである。

14:5ヘロデはヨハネを殺そうと思っていたが、群衆を恐れた。彼らがヨハネを預言者と見ていたからである。

14:6ヘロデの誕生日の祝いに、ヘロディアの娘が人々の真ん中で踊り、ヘロデを喜ばせた。

14:7そこで、娘の求めるものは何でも与えようと、誓って約束した。

14:8娘は母にそそのかされ、「洗礼者ヨハネの首を、盆に載せてここでください」と言った。

14:9王は悲しんだが、誓いと同席の客たちのために、与えるよう命じた。

14:10人を遣わし、牢の中でヨハネの首をはねさせた。

14:11首は盆に載せて運ばれ、少女に渡された。少女はそれを母親のところへ持って行った。

14:12ヨハネの弟子たちは来て遺体を引き取り、葬った。そして、イエスに知らせに行った。

14:13イエスはそれを聞くと、人々から離れ、そこから舟で人里離れた所へ退かれた。群衆はそれを聞き、町々から歩いて後を追った。

14:14イエスは出て来て大勢の群衆を見ると、深く憐れみ、彼らの病人を癒やされた。

14:15夕方になり、弟子たちが近づいて言った。「ここは人里離れた場所で、もう時刻も遅くなりました。群衆を解散させ、村々に行って自分の食べ物を買えるようにしてください」。

14:16イエスは言われた。「行く必要はありません。あなたがたが彼らに食べ物を与えなさい」。

14:17弟子たちは言った。「ここにはパン五つと魚二匹しかありません」。

14:18イエスは、「それをここへ持って来なさい」と言われた。

14:19そして、群衆を草の上に座らせ、五つのパンと二匹の魚を取り、天を仰いで賛美の祈りを唱えられた。パンを裂いて弟子たちに渡され、弟子たちは群衆に渡した。

14:20皆が食べて満たされ、余ったパンのかけらを集めると、十二の籠がいっぱいになった。

14:21食べた人は、女と子どもを除いて、およそ五千人の男だった。

14:22イエスはすぐに、群衆を解散させる間、弟子たちが舟に乗ってご自分より先に向こう岸へ行くよう強く促された。

14:23群衆を解散させると、祈るためにひとりで山に上られた。夕方になっても、そこにひとりでおられた。

14:24舟はすでに岸から何スタディオンも離れ、逆風のため波に悩まされていた。

14:25夜の第四の見張りの時、イエスは湖の上を歩いて、弟子たちのところへ来られた。52

14:26弟子たちは、イエスが湖の上を歩かれるのを見て動揺し、「幽霊だ」と言って、恐怖のあまり叫んだ。

14:27イエスはすぐに語りかけられた。「勇気を出しなさい。私です。恐れてはなりません」。

14:28ペトロは答えた。「主よ、あなたでしたら、水の上を歩いてそちらへ行くよう、私にお命じください」。

14:29イエスが「来なさい」と言われると、ペトロは舟を降り、水の上を歩いてイエスのほうへ行った。

14:30しかし、強い風を見ると恐ろしくなり、沈みかけて、「主よ、お救いください」と叫んだ。

14:31イエスはすぐに手を伸ばして彼をつかみ、言われた。「信仰の薄い人よ、なぜ疑ったのですか」。

14:32二人が舟に乗ると、風はやんだ。

14:33舟の中の人々はイエスを礼拝し、「本当に、あなたは神の子です」と言った。

14:34一行は渡り終え、ゲネサレトの地に着いた。

14:35そこの人々はイエスだと分かると、周辺一帯に人を遣わし、具合の悪い人を皆連れて来た。

14:36そして、せめて衣の房だけでも触れさせてほしいと願った。触れた人は皆、すっかり癒やされた。

第15章

15:1そのとき、エルサレムからファリサイ派の人々と律法学者たちがイエスのもとに来て、言った。

15:2「なぜあなたの弟子たちは、長老たちの伝承を破るのですか。食事のとき、手を洗っていません」。

15:3イエスは答えられた。「なぜあなたがたも、自分たちの伝承のために、神の戒めを破るのですか。

15:4神は、『父と母を敬え』、また、『父や母を悪く言う者は、必ず死に処せられよ』と言われました。

15:5それなのに、あなたがたはこう言います。『父や母に、私からあなたの助けとなるはずのものは供え物です、と言う者は、

15:6父を敬わなくても〔よい〕』。こうして、自分たちの伝承のために神の言葉を無効にしたのです。53

15:7偽善者たち、イザヤはあなたがたについて、適切にこう預言しました。

15:8『この民は唇で私を敬うが、その心は私から遠く離れている。

15:9彼らが私を礼拝してもむなしい。人間の命令を教えとして教えているのだから』」。

15:10イエスは群衆を呼び寄せ、言われた。「聞いて悟りなさい。

15:11口に入るものが人を汚すのではありません。口から出るものこそ、人を汚すのです」。

15:12そのとき、弟子たちが近づいて言った。「ファリサイ派の人々が、あの言葉を聞いてつまずいたのをご存じですか」。

15:13イエスは答えられた。「私の天の父が植えなかった植物は、すべて根こそぎにされます。

15:14彼らのことは、そのままにしておきなさい。彼らは、目の見えない人を導く、目の見えない案内人です。目の見えない人が目の見えない人を導けば、二人とも穴に落ちます」。

15:15ペトロが、「そのたとえを私たちに説明してください」と言った。

15:16イエスは言われた。「あなたがたも、まだ悟らないのですか。

15:17口に入るものはすべて腹を通り、便所に出されると分からないのですか。

15:18しかし、口から出るものは心から出て来ます。それが人を汚すのです。

15:19心から出るのは、悪い考え、殺人、姦通、淫らな関係、盗み、偽証、冒瀆だからです。

15:20これらが人を汚すのです。手を洗わずに食べることが、人を汚すのではありません」。

15:21イエスはそこを出て、ティルスとシドンの地方へ退かれた。

15:22すると、その地方出身のカナン人の女が出て来て、叫んだ。「主よ、ダビデの子よ、私を憐れんでください。娘が悪霊に取りつかれ、ひどく苦しんでいます」。

15:23イエスはひと言もお答えにならなかった。弟子たちは近づいて、「この女を帰らせてください。後ろで叫び続けています」と願った。

15:24イエスは答えられた。「私は、イスラエルの家の失われた羊たちのほかには遣わされていません」。

15:25女は来てひれ伏し、「主よ、お助けください」と言った。

15:26イエスは答えられた。「子どもたちのパンを取って、小犬たちに投げるのはよくありません」。

15:27女は言った。「はい、主よ。小犬たちも、主人たちの食卓から落ちるパンくずを食べるのですから」。

15:28そこでイエスは答えられた。「ああ、女よ、あなたの信仰は大きい。望むとおりになりますように」。その時から、娘は癒やされた。54

15:29イエスはそこを去ってガリラヤ湖のほとりに来られ、山に上って、そこに座られた。

15:30大勢の群衆が、口の利けない人、目の見えない人、足の不自由な人、手足の不自由な人、そのほか多くの人を連れて近づき、イエスの足元に投げ出すように置いた。イエスは彼らを癒やされた。

15:31群衆は、口の利けない人が語り、手足の不自由な人が健やかになり、足の不自由な人が歩き、目の見えない人が見えるようになるのを見て驚き、イスラエルの神をあがめた。

15:32イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた。「この群衆がかわいそうです。もう三日も私と一緒にいて、食べるものがありません。空腹のまま帰らせたくありません。途中で力尽きてしまうかもしれません」。

15:33弟子たちは言った。「この人里離れた所で、これほどの群衆を満たすだけのパンを、どこで手に入れられるでしょうか」。

15:34イエスは尋ねられた。「パンはいくつありますか」。弟子たちは、「七つです。それに小魚が少しあります」と答えた。

15:35イエスは群衆に地面に座るよう命じ、

15:36七つのパンと魚を取って感謝の祈りを唱え、裂いて弟子たちに渡された。弟子たちは群衆に渡した。

15:37皆が食べて満たされ、余ったパンのかけらを集めると、七つの大籠がいっぱいになった。

15:38食べた人は、女と子どもを除いて四千人の男だった。

15:39イエスは群衆を解散させ、舟に乗って、マガダン地方へ行かれた。

第16章

16:1ファリサイ派とサドカイ派の人々が近づき、イエスを試すため、天からのしるしを見せてほしいと求めた。

16:2イエスは答えられた。「夕方になると、あなたがたは『晴れる。空が赤いから』と言い、

16:3朝には、『今日は嵐だ。空が赤く、どんよりしているから』と言います。空模様を見分けることは知っているのに、時のしるしを見分けることはできないのです。55

16:4悪く、姦通する世代はしるしを求めます。しかし、ヨナのしるしのほかに、しるしは与えられません」。そして彼らを残して去られた。

16:5弟子たちは向こう岸に来たが、パンを持って来るのを忘れていた。

16:6イエスは言われた。「ファリサイ派とサドカイ派のパン種によく気をつけなさい」。

16:7弟子たちは、「パンを持って来なかったからだ」と、自分たちの間で論じ合った。

16:8イエスはそれを知って言われた。「信仰の薄い人たち、パンを持って来なかったことで、なぜ論じ合うのですか。

16:9まだ分からないのですか。五千人に分けた五つのパンと、集めた籠の数を覚えていないのですか。

16:10四千人に分けた七つのパンと、集めた大籠の数も覚えていないのですか。

16:11私がパンのことを話したのではないと、なぜ分からないのですか。ファリサイ派とサドカイ派のパン種に気をつけなさい」。

16:12そのとき弟子たちは、パンのパン種ではなく、ファリサイ派とサドカイ派の教えに気をつけるよう言われたのだと悟った。

16:13イエスはフィリポ・カイサリア地方に来ると、弟子たちに尋ねられた。「人々は、人の子を誰だと言っていますか」。

16:14弟子たちは答えた。「洗礼者ヨハネだと言う人も、エリヤだと言う人もいます。エレミヤか、預言者の一人だと言う人もいます」。

16:15イエスは言われた。「では、あなたがたは、私を誰だと言いますか」。

16:16シモン・ペトロは答えた。「あなたはキリスト、生ける神の子です」。

16:17イエスは答えられた。「ヨナの子シモン、あなたは幸いです。これをあなたに現したのは血肉ではなく、天におられる私の父だからです。

16:18私もあなたに言います。あなたはペトロ。私はこの岩の上に私の教会を建てます。死者の国の門も、それに打ち勝つことはありません。56

16:19あなたに天の王国の鍵を与えます。あなたが地上で縛るものは、天でも縛られたものとなり、地上で解くものは、天でも解かれたものとなります」。57

16:20そして弟子たちに、ご自分がキリストであることを誰にも言わないよう命じられた。

16:21そのときからイエスは、ご自分がエルサレムへ行き、長老、祭司長、律法学者たちから多くの苦しみを受け、殺され、三日目に起こされなければならないと、弟子たちに示し始められた。

16:22ペトロはイエスを脇へ連れて行き、いさめ始めた。「主よ、とんでもないことです。そんなことは、あなたには決して起こりません」。

16:23イエスは振り向いてペトロに言われた。「私の後ろに退け、サタン。あなたは私をつまずかせる者です。神のことではなく、人間のことを考えているからです」。

16:24それからイエスは弟子たちに言われた。「私の後ろについて来たい者は、自分を捨て、自分の十字架を負って、私に従いなさい。

16:25自分の命を救おうとする者はそれを失い、私のために自分の命を失う者は、それを見いだすからです。

16:26全世界を手に入れても、自分の命を失ったら、何の得になるでしょう。自分の命の代価として、人は何を差し出すでしょうか。

16:27人の子は、自分の父の栄光のうちに、自分の天使たちと共に来ようとしているからです。そのとき、一人一人にその行いに応じて報います。

16:28確かに言っておきます。ここに立っている人々の中には、人の子がその王国を伴って来るのを見るまで、決して死を味わわない者たちがいます」。58

第17章

17:1六日後、イエスはペトロとヤコブとその兄弟ヨハネを連れ、彼らだけを高い山に導かれた。

17:2そして彼らの目の前で姿が変わり、顔は太陽のように輝き、衣は光のように白くなった。

17:3すると、モーセとエリヤが彼らに現れ、イエスと語り合っていた。

17:4ペトロはイエスに言った。「主よ、私たちがここにいるのはすばらしいことです。お望みなら、私がここに幕屋を三つ造ります。あなたのために一つ、モーセのために一つ、エリヤのために一つ」。

17:5彼がまだ話していると、輝く雲が彼らを覆い、雲の中から声があった。「これは私の愛する子、私の喜びとする者である。この者に聞け」。

17:6弟子たちはこれを聞くと、顔を地に伏せて倒れ、ひどく恐れた。

17:7イエスは近づき、彼らに触れて、「起きなさい。恐れてはなりません」と言われた。

17:8彼らが目を上げると、イエスひとりのほかには、誰も見えなかった。

17:9山を下りる途中、イエスは命じられた。「人の子が死者の中から起こされるまで、今見たことを誰にも話してはなりません」。

17:10弟子たちは尋ねた。「それなら、なぜ律法学者たちは、まずエリヤが来なければならないと言うのですか」。

17:11イエスは答えられた。「確かに、エリヤが来て、すべてを立て直します。

17:12しかし言っておきます。エリヤはすでに来たのに、人々はそれがエリヤだとは分からず、好き勝手に扱いました。同じように、人の子も彼らから苦しみを受けることになります」。

17:13そのとき弟子たちは、洗礼者ヨハネのことを話されたのだと悟った。

17:14一行が群衆のところに来ると、一人の人がイエスに近づき、ひざまずいて、

17:15言った。「主よ、息子を憐れんでください。発作を起こして、ひどく苦しんでいます。何度も火の中に倒れ込み、何度も水の中に落ちます。59

17:16お弟子たちのところへ連れて来ましたが、お弟子たちは癒やすことができませんでした」。

17:17イエスは答えられた。「ああ、信仰のない、ゆがんだ世代。いつまであなたがたと共にいなければならないのか。いつまであなたがたを忍ばなければならないのか。その子をここへ連れて来なさい」。

17:18イエスが叱りつけられると、悪霊はその子から出て行き、その時から子どもは癒やされた。

17:19その後、弟子たちはひそかにイエスに近づき、尋ねた。「なぜ私たちには追い出せなかったのですか」。

17:20イエスは言われた。「あなたがたの信仰が薄いからです。確かに言っておきます。からし種一粒ほどの信仰があれば、この山に『ここからあちらへ移れ』と言えば、移ります。あなたがたにできないことは何もありません」。60

17:22ガリラヤで一行が集まっていたとき、イエスは言われた。「人の子は人々の手に引き渡されようとしています。

17:23人々は彼を殺しますが、三日目に彼は起こされます」。弟子たちは深く悲しんだ。

17:24一行がカファルナウムに来ると、二ドラクマを徴収する者たちがペトロに近づき、「あなたがたの先生は二ドラクマを納めないのですか」と尋ねた。61

17:25ペトロは「納めます」と答えた。家に入ると、イエスが先に口を開かれた。「シモン、どう思いますか。地上の王たちは、誰から税や貢ぎ物を取りますか。自分の子らからですか、それとも他人からですか」。

17:26ペトロが「他人からです」と答えると、イエスは言われた。「それなら、子らは免除されるのです。

17:27しかし、彼らをつまずかせないために、湖へ行って釣り針を投げなさい。最初に上がった魚を取り、その口を開けば、一スタテルが見つかります。それを取って、私とあなたの分として渡しなさい」。

第18章

18:1そのとき、弟子たちがイエスに近づいて尋ねた。「それでは、天の王国で最も大きいのは誰ですか」。

18:2イエスは幼子を呼び寄せ、彼らの真ん中に立たせて、

18:3言われた。「確かに言っておきます。向きを変えて幼子のようにならなければ、決して天の王国に入れません。

18:4ですから、この幼子のように自分を低くする者が、天の王国で最も大きいのです。

18:5また、このような幼子の一人を私の名によって迎える者は、私を迎えるのです。

18:6しかし、私を信じるこの小さな者たちの一人をつまずかせる者は、ろばにひかせる大きな石臼を首に掛けられ、海の深みに沈められるほうがましです。

18:7つまずきのために世は災いです。つまずきが起こることは避けられないからです。しかし、それを引き起こす人は災いです。

18:8あなたの手や足があなたをつまずかせるなら、切り落として投げ捨てなさい。両手または両足がそろって永遠の火に投げ込まれるより、片手や片足を失って命に入るほうがよいのです。

18:9あなたの目があなたをつまずかせるなら、えぐり出して投げ捨てなさい。両目がそろって火のゲヘナに投げ込まれるより、片目で命に入るほうがよいのです。

18:10この小さな者たちの一人も軽んじないように気をつけなさい。言っておきます。彼らの天使たちは、天でいつも、天におられる私の父の顔を見ています。62

18:12あなたがたはどう思いますか。ある人に百匹の羊がいて、一匹が迷い出たなら、九十九匹を山に残し、迷っている一匹を捜しに行かないでしょうか。

18:13そして、見つけることができたなら、確かに言っておきます。迷わなかった九十九匹よりも、その一匹のことで喜びます。

18:14同じように、この小さな者たちの一人が滅びることは、天におられるあなたがたの父の御心ではありません。

18:15兄弟があなたに対して罪を犯したなら、行って、二人だけのところで過ちを指摘しなさい。彼が聞き入れるなら、あなたは兄弟を取り戻したのです。

18:16聞き入れないなら、ほかに一人か二人を連れて行きなさい。二人または三人の証人の口によって、すべての事柄が確かめられるためです。

18:17その人たちの言うことを聞かないなら、教会に話しなさい。教会の言うことも聞かないなら、その人を、あなたにとって異邦人や徴税人と同じ者と見なしなさい。63

18:18確かに言っておきます。あなたがたが地上で縛るものは、天でも縛られたものとなり、地上で解くものは、天でも解かれたものとなります。

18:19さらに、確かに言っておきます。地上であなたがたのうち二人が、願い求めるどんな事柄についても心を合わせるなら、天におられる私の父が彼らのためにそれをかなえてくださいます。

18:20二人か三人が私の名のもとに集まっているところには、私がその真ん中にいるからです」。

18:21そのとき、ペトロが近づいて尋ねた。「主よ、兄弟が私に罪を犯したら、何回まで赦すべきですか。七回までですか」。

18:22イエスは言われた。「七回までとは言いません。七十七回までです。64

18:23だから、天の王国は、奴隷たちとの勘定を清算しようとした王にたとえられます。

18:24清算を始めると、王のもとに、一万タラントンの借りがある者が一人、連れて来られました。65

18:25返すものがなかったので、主人は、その者も妻も子どもも持ち物もすべて売って返済するよう命じました。

18:26奴隷はひれ伏し、こう願いました。『どうかお待ちください。すべてお返しします』。

18:27その奴隷の主人は深く憐れみ、解放して、借金を赦してやりました。

18:28ところがその奴隷は、外に出ると、自分に百デナリオンの借りがある仲間の奴隷の一人を見つけ、つかまえて首を絞め、『借りているものを返せ』と言いました。

18:29仲間はひれ伏し、『どうか待ってくれ。返すから』と頼みました。

18:30しかし彼は承知せず、行って、借金を返すまでその仲間を牢に入れました。

18:31ほかの仲間たちは、起こったことを見て深く悲しみ、主人のところへ行って、すべてを詳しく話しました。

18:32そこで主人は彼を呼び寄せ、言いました。『悪い奴隷だ。お前が頼んだので、私はあの借金をすべて赦してやった。

18:33私がお前を憐れんだように、お前も仲間を憐れむべきではなかったか』。

18:34主人は怒り、借金をすべて返すまで、彼を拷問する者たちに引き渡しました。

18:35あなたがたが、それぞれ心から兄弟を赦さないなら、天におられる私の父も、あなたがたに同じようになさいます」。

第19章

19:1イエスはこれらの言葉を語り終えると、ガリラヤを去り、ヨルダンの向こうのユダヤ地方に来られた。

19:2大勢の群衆が従って来た。そして、そこで彼らを癒やされた。

19:3ファリサイ派の人々が近づき、イエスを試そうとして尋ねた。「人が、どんな理由でも、自分の妻を離縁してよいのですか」。

19:4イエスは答えられた。「読んだことがないのですか。初めから創造なさった方は、人間を男と女に造り、

19:5こう言われました。『それゆえ、人は父と母を離れ、妻と結びつき、二人は一つの肉となる』。

19:6こうして、もはや二人ではなく、一つの肉です。ですから、神が結び合わせたものを、人間が引き離してはなりません」。

19:7彼らは言った。「それなら、なぜモーセは、離縁状を渡して離縁するよう命じたのですか」。

19:8イエスは言われた。「モーセがあなたがたに、自分たちの妻を離縁することを許したのは、あなたがたの心が頑なだからです。初めからそうであったのではありません。

19:9しかし、私は言っておきます。淫らな関係を理由とせずに妻を離縁して、別の女と結婚する者は、姦通します。また、離縁された女と結婚する者も、姦通します」。

19:10弟子たちは言った。「夫と妻の間がそういうことなら、結婚しないほうがましです」。

19:11イエスは言われた。「すべての人がこの言葉を受け入れられるのではありません。与えられている人だけです。

19:12というのも、母の胎からそのように生まれた宦官もいれば、人の手で宦官にされた者もいます。また、天の王国のために、自分を宦官にした者もいます。受け入れられる者は受け入れなさい」。66

19:13そのとき、人々が幼子たちを連れて来た。イエスに、幼子たちの上に手を置いて祈っていただくためだった。弟子たちは彼らを叱った。

19:14しかしイエスは言われた。「幼子たちをそのままにして、私のもとへ来るのを妨げてはなりません。天の王国は、このような者たちのものだからです」。

19:15イエスは幼子たちに手を置いてから、そこを去られた。

19:16すると、一人の人が近づいて尋ねた。「先生、永遠の命を得るには、どんな良いことをすればよいのですか」。

19:17イエスは言われた。「なぜ良いことについて私に尋ねるのですか。良い方はおひとりです。命に入りたいのなら、戒めを守りなさい」。67

19:18その人が「どの戒めですか」と尋ねると、イエスは言われた。「殺すな。姦通するな。盗むな。偽証するな。

19:19父と母を敬え。そして、自分自身のように隣人を愛せ」。

19:20青年は言った。「それらはすべて守ってきました。まだ何が足りないのでしょうか」。

19:21イエスは言われた。「完全でありたいのなら、行って持ち物を売り、貧しい人々に与えなさい。そうすれば、天に宝を持つことになります。それから来て、私に従いなさい」。

19:22青年はその言葉を聞くと、悲しみながら去って行った。多くの財産を持っていたからである。

19:23イエスは弟子たちに言われた。「確かに言っておきます。金持ちが天の王国に入るのは難しいことです。

19:24重ねて言います。金持ちが神の王国に入るより、らくだが針の穴を通るほうがたやすいのです」。

19:25弟子たちはこれを聞いてひどく驚き、「それなら、誰が救われるのでしょうか」と言った。

19:26イエスは彼らを見つめて言われた。「人間にはできないことですが、神にはすべてが可能です」。

19:27そこでペトロが答えた。「ご覧ください。私たちはすべてを捨てて、あなたに従いました。それでは、私たちには何があるのでしょうか」。

19:28イエスは言われた。「確かに言っておきます。すべてが新しく生まれるとき、人の子がご自分の栄光の王座に着くときには、私に従ったあなたがたも十二の王座に着き、イスラエルの十二部族を裁きます。68

19:29また、私の名のために家、兄弟、姉妹、父、母、妻、子ども、あるいは畑を捨てた人は皆、その百倍を受け、永遠の命を受け継ぎます。

19:30しかし、先にいる多くの者が後になり、後にいる多くの者が先になります。

第20章

20:1というのも、天の王国は、自分のぶどう園の働き手を雇うため、朝早く出かけた家の主人に似ています。

20:2主人は働き手たちと一日一デナリオンの約束をし、ぶどう園に送り出しました。

20:3第三時ごろに出かけると、ほかにも広場で仕事がなく立っている人々がいました。69

20:4主人は彼らに言いました。『あなたがたもぶどう園に行きなさい。正当な額を支払おう』。

20:5彼らは出かけました。主人は第六時と第九時ごろにも出かけ、同じようにしました。

20:6第十一時ごろに出かけると、ほかの人々が立っているのを見つけ、尋ねました。『なぜ一日中、仕事をせずここに立っているのか』。

20:7彼らは答えました。『誰も雇ってくれないのです』。主人は言いました。『あなたがたもぶどう園に行きなさい』。

20:8夕方になり、ぶどう園の主人は管理人に言いました。『働き手たちを呼び、最後の者から始めて最初の者まで、賃金を払いなさい』。

20:9第十一時ごろの者たちが来て、一デナリオンずつ受け取りました。

20:10最初の者たちが来ると、もっと多くもらえると思いました。しかし彼らも、一デナリオンずつ受け取りました。

20:11受け取ると、家の主人に不平を言い始めました。

20:12『最後のこの者たちは一時間しか働いていません。それなのに、一日中の重い労働と暑さに耐えた私たちと、同じ扱いにしました』。

20:13主人はその一人に答えました。『友よ、私はあなたに不正をしていない。一デナリオンで私と約束したではないか。

20:14自分の分を受け取って帰りなさい。私は、この最後の者にも、あなたと同じだけ与えたいのだ。

20:15自分のものを自分の望むように扱ってはいけないのか。それとも、私が気前よくするので、あなたは妬むのか』。70

20:16このように、後の者が先になり、先の者が後になります」。

20:17エルサレムへ上る途中、イエスは十二人の弟子だけを脇へ連れて行き、道で言われた。

20:18「見なさい。私たちはエルサレムへ上って行きます。人の子は祭司長や律法学者たちに引き渡され、死罪に定められます。

20:19彼らは、あざけり、鞭打ち、十字架につけるために、人の子を異邦人に引き渡します。しかし三日目に、人の子は起こされます」。

20:20そのとき、ゼベダイの息子たちの母が、息子たちと共に近づき、ひれ伏して願い事をした。

20:21イエスが「何を望みますか」と尋ねられると、彼女は言った。「あなたの王国で、この二人の息子が、一人はあなたの右に、一人は左に座れるよう、おっしゃってください」。

20:22イエスは答えられた。「あなたがたは、自分が何を求めているか分かっていません。私がこれから飲む杯を飲めますか」。二人は、「飲めます」と答えた。

20:23イエスは言われた。「確かに、私の杯をあなたがたは飲むことになります。しかし、私の右と左に座ることを与えるのは、私のすることではありません。それは、私の父によって座が備えられている人々に与えられるのです」。

20:24ほかの十人はこれを聞いて、二人の兄弟に憤った。

20:25イエスは彼らを呼び寄せて言われた。「異邦の支配者たちは人々を支配し、偉い者たちは権力を振るっていると、あなたがたは知っています。

20:26あなたがたの間では、そうであってはなりません。あなたがたの間で偉くなりたい者は、あなたがたに仕える者となり、

20:27第一になりたい者は、あなたがたの奴隷となりなさい。

20:28人の子も、仕えられるためではなく、仕えるため、また、多くの人に代わる身代金として自分の命を与えるために来たのです」。71

20:29一行がエリコを出ると、大勢の群衆がイエスに従った。

20:30道端には、目の見えない二人の人が座っていた。イエスが通られると聞くと、「主よ、ダビデの子よ、私たちを憐れんでください」と叫んだ。

20:31群衆は黙るように叱ったが、二人はなおいっそう、「主よ、ダビデの子よ、私たちを憐れんでください」と叫んだ。

20:32イエスは立ち止まって二人を呼び、「何をしてほしいのですか」と尋ねられた。

20:33二人は、「主よ、目を開いていただきたいのです」と答えた。

20:34イエスは深く憐れみ、二人の目に触れられた。すると、すぐに見えるようになり、二人はイエスに従った。

第21章

21:1エルサレムに近づき、オリーブ山のベトファゲに来ると、イエスは二人の弟子を遣わし、

21:2言われた。「向こうに見える村へ行きなさい。すぐに、つながれた雌ろばと、そのそばにいる子ろばが見つかります。ほどいて私のところに連れて来なさい。

21:3誰かが何か言ったら、『主がこのろばたちをお入り用なのです』と言いなさい。すると、すぐに渡してくれます」。

21:4これは、預言者を通して語られた次の言葉が実現するために起こった。

21:5「娘シオンに告げよ。見よ、あなたの王があなたのところへ来る。柔和で、ろばに乗って、荷を負う獣の子である子ろばに乗って」。

21:6弟子たちは行き、イエスに命じられたとおりにして、

21:7雌ろばと子ろばを連れて来た。二頭の上に衣を載せると、イエスはその衣の上に座られた。72

21:8群衆の大部分は自分の衣を道に敷き、ほかの人々は木から枝を切って、道に敷いた。

21:9前を行く群衆も、後に続く群衆も、叫んでいた。「ダビデの子にホサナ。主の名によって来る方に祝福あれ。いと高きところにホサナ」。73

21:10イエスがエルサレムに入られると、都全体が揺れ動き、「この人は誰だ」と言った。

21:11群衆は答えた。「この方は、ガリラヤのナザレから来た預言者イエスです」。

21:12イエスは神殿に入り、そこで売り買いしていた者たちをすべて追い出し、両替人の台や、鳩を売る者の腰掛けを倒された。

21:13そして言われた。「『私の家は祈りの家と呼ばれる』と書いてある。それなのに、あなたがたはこれを強盗の巣にしている」。

21:14神殿で、目の見えない人や足の不自由な人が近づくと、イエスは彼らを癒やされた。

21:15祭司長や律法学者たちは、イエスのなさった驚くべきことと、神殿で「ダビデの子にホサナ」と叫ぶ子どもたちを見て、憤り、

21:16言った。「あの子たちの言っていることが聞こえますか」。イエスは言われた。「はい。『あなたは幼子や乳飲み子の口から、賛美を整えられた』と、読んだことがないのですか」。

21:17そして彼らを残し、都の外のベタニアへ行って、そこで夜を過ごされた。

21:18朝、都へ戻る途中で、空腹を覚えられた。

21:19道端のいちじくの木を見て近寄られたが、葉のほかには何も見つからなかった。そこで、「もうお前には、いつまでも実がならないように」と言われると、いちじくの木はたちまち枯れた。

21:20弟子たちはそれを見て驚き、「どうして、いちじくの木がたちまち枯れたのですか」と尋ねた。

21:21イエスは答えられた。「確かに言っておきます。信仰を持ち、疑わなければ、いちじくの木に起こったことを行えるだけでなく、この山に『持ち上がって海に投げ込まれよ』と言っても、そのとおりになります。

21:22信じて祈り求めるものは、すべて受け取ります」。

21:23イエスが神殿に入り、教えておられると、祭司長と民の長老たちが近づいて尋ねた。「何の権威で、このようなことをするのか。誰がその権威を与えたのか」。

21:24イエスは答えられた。「私も一つ尋ねます。それに答えるなら、私も何の権威でこれらを行うのか答えましょう。

21:25ヨハネの洗礼は、どこから来たのですか。天からですか、人間からですか」。彼らは自分たちの間で論じた。「天からだと言えば、では、なぜ彼を信じなかったのかと言うだろう。

21:26人間からだと言うのも、群衆が怖い。皆、ヨハネを預言者と見ているから」。

21:27そこで、「分からない」と答えた。イエスも言われた。「それなら私も、何の権威でこれらを行うのか、あなたがたには言いません。

21:28あなたがたはどう思いますか。ある人に二人の子がいました。最初の子に近づき、『子よ、今日、ぶどう園に行って働きなさい』と言いました。

21:29その子は『嫌です』と答えましたが、後で思い直して出かけました。

21:30父は二番目の子にも近づき、同じことを言いました。その子は『はい、私が行きます、お父さん』と答えましたが、出かけませんでした。

21:31二人のうち、どちらが父の望みを行いましたか」。彼らは「最初の子だ」と答えた。イエスは言われた。「確かに言っておきます。徴税人や娼婦たちは、あなたがたより先に神の王国に入って行きます。

21:32ヨハネは正しさの道をもってあなたがたのもとに来たのに、あなたがたは信じませんでした。しかし、徴税人や娼婦たちは彼を信じました。あなたがたはそれを見ても、後になって思い直すことさえせず、彼を信じませんでした。

21:33もう一つ、たとえを聞きなさい。ある家の主人がぶどう園を造り、垣を巡らし、搾り場を掘り、見張り塔を建てました。そして、農夫たちに貸して旅に出ました。

21:34実りの時が近づくと、自分の実を受け取るため、奴隷たちを農夫のところへ遣わしました。

21:35農夫たちは奴隷たちを捕らえ、ある者を殴り、ある者を殺し、ある者を石で打ちました。

21:36主人は再び、初めより大勢の別の奴隷たちを遣わしましたが、農夫たちは同じようにしました。

21:37最後に、『息子なら敬ってくれるだろう』と言って、自分の息子を遣わしました。

21:38しかし農夫たちは息子を見ると、話し合いました。『これが跡継ぎだ。さあ、殺して、その相続財産を手に入れよう』。

21:39そして彼を捕らえ、ぶどう園の外に放り出して殺しました。

21:40さて、ぶどう園の主人が帰って来たら、この農夫たちをどうするでしょうか」。

21:41彼らは答えた。「その悪人どもをひどい目に遭わせて滅ぼし、実りの時ごとに主人に実を納める別の農夫たちに、ぶどう園を貸すだろう」。

21:42イエスは言われた。「聖書で読んだことがないのですか。『家を建てる者たちの退けた石が、隅の親石となった。これは主によってなされたこと。私たちの目には驚くべきこと』。

21:43だから言っておきます。神の王国はあなたがたから取り上げられ、王国の実を結ぶ民に与えられます。

21:44この石の上に落ちる者は打ち砕かれ、この石がその上に落ちる者は、粉々にされます」。

21:45祭司長とファリサイ派の人々は、イエスのこれらのたとえを聞いて、自分たちのことを言われていると悟った。

21:46彼らはイエスを捕らえようとしたが、群衆を恐れた。群衆はイエスを預言者と見ていたからである。

第22章

22:1イエスは再び、たとえで彼らに語られた。

22:2「天の王国は、息子のために婚礼の宴を開いた王にたとえられます。

22:3王は、招いておいた人々を婚礼に呼ぶため、奴隷たちを遣わしました。しかし人々は来ようとしませんでした。

22:4王はさらに別の奴隷たちを遣わし、言いました。『招いてある人々にこう告げなさい。さあ、食事を用意しました。牛や肥えた家畜を屠り、すべて整っています。婚礼へおいでください』。

22:5ところが人々は気にも留めず、ある者は自分の畑へ、ある者は商売へ出かけました。

22:6残りの者たちは王の奴隷を捕らえ、辱めて殺しました。

22:7王は怒り、軍隊を送って、その人殺したちを滅ぼし、彼らの町を焼き払いました。

22:8そして奴隷たちに言いました。『婚礼の用意はできているが、招いてあった者たちはふさわしくなかった。

22:9だから、大通りの出口に行き、見つけた者を皆、婚礼に招きなさい』。

22:10奴隷たちは道へ出て行き、見つけた者を、悪い者も良い者もすべて集めました。婚礼の席は客でいっぱいになりました。

22:11王が客たちを見に入ると、婚礼の衣を着ていない人が一人いました。

22:12王は言いました。『友よ、婚礼の衣もなく、どうしてここへ入ったのか』。その人は黙り込みました。

22:13そこで王は給仕たちに言いました。『手足を縛って、外の闇に投げ出せ。そこでは泣き叫びと歯ぎしりがあるのだ』。

22:14招かれる者は多いが、選ばれる者は少ないからです」。

22:15その後、ファリサイ派の人々は出て行き、イエスの言葉尻を捉えて陥れる相談をした。

22:16そして、自分たちの弟子をヘロデ派の人々と共に遣わして、こう言わせた。「先生、あなたは真実な方で、神の道を真実に教え、人の地位に左右されないので誰にも遠慮しない方だと、私たちは知っています。

22:17そこで、ご意見をお聞かせください。皇帝に税を納めるのは許されていますか、いませんか」。

22:18イエスは彼らの悪意を知り、言われた。「偽善者たち、なぜ私を試すのですか。

22:19税に使う貨幣を見せなさい」。彼らは一デナリオンを差し出した。

22:20イエスは尋ねられた。「この肖像と銘は、誰のものですか」。

22:21彼らが「皇帝のものです」と答えると、イエスは言われた。「それなら、皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい」。

22:22彼らはこれを聞いて驚き、イエスを残して去って行った。

22:23その日、復活はないと言っているサドカイ派の人々が近づき、尋ねた。

22:24「先生、モーセは、『ある人が子どもを残さずに死んだら、その兄弟が彼の妻をめとり、死んだ兄弟のために子孫を立てよ』と言いました。

22:25私たちの間に七人の兄弟がいました。最初の者は結婚しましたが、子孫を残さずに死に、妻を兄弟に残しました。

22:26二番目も三番目も、七番目に至るまで、同じようになりました。

22:27皆の死後、その女が死にました。

22:28では、復活のとき、その女は七人のうち誰の妻になるのでしょう。皆が彼女を妻にしたのですから」。

22:29イエスは答えられた。「あなたがたは、聖書も神の力も知らないので、思い違いをしています。

22:30復活のときには、めとることも嫁ぐこともなく、天にいる神の天使たちのようであるからです。

22:31死者の復活については、神があなたがたに語られた言葉を読んだことがないのですか。

22:32『私はアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である』。神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神なのです」。

22:33群衆はこれを聞き、その教えに驚嘆した。

22:34ファリサイ派の人々は、イエスがサドカイ派を黙らせたと聞き、一緒に集まった。

22:35そのうち一人の律法の専門家が、イエスを試そうとして尋ねた。

22:36「先生、律法の中で、どの戒めが最も重要ですか」。

22:37イエスは言われた。「心を尽くし、魂を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛せ。

22:38これが最も重要な、第一の戒めです。

22:39第二の戒めは、これに似ています。自分自身のように隣人を愛せ。

22:40律法全体と預言者は、この二つの戒めにかかっています」。

22:41ファリサイ派の人々が集まっているとき、イエスは尋ねられた。

22:42「あなたがたは、キリストについてどう思いますか。誰の子ですか」。彼らは、「ダビデの子です」と答えた。

22:43イエスは言われた。「それなら、なぜダビデは霊において彼を主と呼び、こう言うのですか。

22:44『主は私の主に言われた。私の右に座れ。私があなたの敵を、あなたの足の下に置くまで』。

22:45ダビデが彼を主と呼ぶのなら、どうして彼はダビデの子なのですか」。

22:46誰もひと言も答えられず、その日からは、もはや誰も、あえてイエスに質問しようとはしなかった。

第23章

23:1それからイエスは、群衆と弟子たちに語られた。

23:2「律法学者とファリサイ派の人々は、モーセの座に着いています。

23:3ですから、彼らがあなたがたに言うことは、すべて行い、守りなさい。しかし、その行いに倣ってはなりません。彼らは言うだけで、行わないからです。

23:4重い荷をまとめて人々の肩に載せながら、自分では指一本でそれを動かそうともしません。

23:5することはすべて、人々に見てもらうためです。聖句を納める小箱を大きくし、衣の房を長くしています。74

23:6宴会では上席を、会堂では上座を好み、

23:7広場で挨拶されることや、人々から『ラビ』と呼ばれることを好みます。

23:8しかし、あなたがたは『ラビ』と呼ばれてはなりません。あなたがたの師はおひとりで、あなたがたは皆、兄弟だからです。

23:9地上の誰をも、自分たちの父と呼んではなりません。あなたがたの父は、天におられるおひとりだからです。

23:10また、『指導者』と呼ばれてはなりません。あなたがたの指導者は、キリストおひとりだからです。

23:11あなたがたのうちで最も大きい者は、あなたがたに仕える者となりなさい。

23:12自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされます。

23:13ああ、あなたがたは災いだ。律法学者とファリサイ派の人々、偽善者たちよ。人々の前で天の王国を閉ざしているからです。自分たちが入らず、入ろうとする人々を入らせもしません。75

23:15ああ、あなたがたは災いだ。律法学者とファリサイ派の人々、偽善者たちよ。一人を改宗させるために海も陸も巡り歩き、改宗すると、自分たちの倍もひどいゲヘナの子にしてしまうからです。

23:16ああ、あなたがたは災いだ。目の見えない案内人たち。『聖所を指して誓っても何でもないが、聖所の金を指して誓ったら、果たす義務がある』と言っています。

23:17愚かで、目の見えない者たち。金と、その金を聖なるものとした聖所と、どちらが大きいのですか。

23:18また、『祭壇を指して誓っても何でもないが、その上の供え物を指して誓ったら、果たす義務がある』と言っています。

23:19目の見えない者たち。供え物と、その供え物を聖なるものとする祭壇と、どちらが大きいのですか。

23:20ですから、祭壇を指して誓う者は、祭壇と、その上にあるすべてのものを指して誓うのです。

23:21聖所を指して誓う者は、聖所と、そこに住まわれる方を指して誓うのです。

23:22天を指して誓う者は、神の王座と、その上に座っておられる方を指して誓うのです。

23:23ああ、あなたがたは災いだ。律法学者とファリサイ派の人々、偽善者たちよ。薄荷、いのんど、クミンの十分の一を納めながら、律法でより重いもの、公正、憐れみ、誠実さを捨てているからです。これらこそ行うべきであったし、あれらも捨てるべきではなかったのです。76

23:24目の見えない案内人たち。ぶよは濾して取り除くのに、らくだは飲み込んでいます。

23:25ああ、あなたがたは災いだ。律法学者とファリサイ派の人々、偽善者たちよ。杯や皿の外側を清めながら、その内側は強奪と放縦で満ちているからです。

23:26目の見えないファリサイ派の人よ、まず杯と皿の内側を清めなさい。そうすれば外側も清くなります。

23:27ああ、あなたがたは災いだ。律法学者とファリサイ派の人々、偽善者たちよ。あなたがたは白く塗った墓に似ているからです。墓は、外側は美しく見えますが、内側は死者の骨とあらゆる汚れで満ちています。

23:28あなたがたも同じです。外側は人々に正しく見えますが、内側は偽善と不法で満ちています。

23:29ああ、あなたがたは災いだ。律法学者とファリサイ派の人々、偽善者たちよ。預言者たちの墓を建て、正しい人々の記念碑を飾り、

23:30こう言うからです。『私たちの先祖の時代に自分たちが生きていたなら、彼らの仲間となって預言者たちの血を流すことはなかっただろう』。

23:31こうしてあなたがたは、預言者たちを殺した者の子であると、自分自身について証言しているのです。

23:32あなたがたも、あなたがたの先祖の升をいっぱいにしなさい。

23:33蛇よ、毒蛇の子らよ、どうしてゲヘナの裁きから逃れられるでしょうか。

23:34だから見なさい。私はあなたがたに、預言者、知恵ある者、律法学者を遣わします。あなたがたは、そのうちのある者を殺し、十字架につけ、ある者をあなたがたの会堂で鞭打ち、町から町へと迫害します。

23:35それは、地上で流されてきた正しい血がすべて、あなたがたに降りかかるためです。正しいアベルの血から、あなたがたが聖所と祭壇の間で殺した、バラキヤの子ゼカルヤの血まで。77

23:36確かに言っておきます。これらのことはすべて、この世代に降りかかります。

23:37エルサレム、エルサレム。預言者たちを殺し、自分に遣わされた者たちを石で打つ都。めんどりが雛を翼の下に集めるように、私は何度、あなたの子らを集めたいと望んだことでしょう。しかし、あなたがたは望みませんでした。

23:38見なさい。あなたがたの家は荒れ果てたまま、あなたがたに残されます。

23:39言っておきます。あなたがたが『主の名によって来る方に祝福あれ』と言うときまで、今から後、決して私を見ることはありません」。

第24章

24:1イエスが神殿を出て歩いて行かれると、弟子たちが近づき、神殿の建物を見せようとした。

24:2イエスは答えられた。「これらすべてが見えるでしょう。確かに言っておきます。ここでは、石が石の上に残ることはなく、すべて崩されます」。

24:3イエスがオリーブ山で座っておられると、弟子たちだけが近づいて尋ねた。「教えてください。これらのことはいつ起こるのでしょう。あなたの到来と時代の終わりには、どんなしるしがありますか」。78

24:4イエスは答えられた。「誰にも惑わされないよう、気をつけなさい。

24:5多くの者が私の名を帯びて来て、『私がキリストだ』と言い、多くの人を惑わすからです。

24:6戦争や戦争の噂を聞くことになりますが、うろたえないよう気をつけなさい。それは必ず起こることだからです。しかし、まだ終わりではありません。

24:7民族は民族に、王国は王国に逆らって立ち上がり、あちこちで飢饉や地震が起こります。

24:8しかし、これらはすべて産みの苦しみの始まりです。

24:9そのとき、人々はあなたがたを苦難に引き渡し、殺します。あなたがたは、私の名のためにすべての民族から憎まれます。

24:10そのとき、多くの者がつまずき、互いに引き渡し合い、憎み合います。

24:11多くの偽預言者が起こり、多くの人を惑わします。

24:12不法が増すため、多くの人の愛は冷えます。

24:13しかし、終わりまで耐え抜いた者が救われます。

24:14王国のこの福音は、すべての民族への証しとして全世界に宣べ伝えられます。それから、終わりが来ます。

24:15ですから、預言者ダニエルを通して語られた『荒廃をもたらす忌まわしいもの』が聖なる場所に立つのを見たら――読む者は悟りなさい――、79

24:16そのとき、ユダヤにいる者たちは山へ逃げなさい。

24:17屋根の上にいる者は、家の中のものを取りに下りてはなりません。

24:18畑にいる者は、上着を取りに戻ってはなりません。

24:19ああ、その日々に身ごもっている女たち、乳を飲ませている女たちは、どれほど苦しいことでしょう。

24:20逃げるのが冬や安息日にならないよう、祈りなさい。

24:21そのとき、世界の初めから今までになく、今後も決してないほどの大きな苦難があるからです。

24:22その日々が短くされなければ、誰一人救われないでしょう。しかし、選ばれた者たちのために、その日々は短くされます。80

24:23そのとき、誰かが『見よ、キリストはここだ』『ここだ』と言っても、信じてはなりません。

24:24偽キリストや偽預言者が起こり、大きなしるしや不思議を示して、できることなら選ばれた者たちをも惑わそうとするからです。

24:25見なさい。私は前もってあなたがたに話しました。

24:26ですから、『見よ、荒れ野にいる』と言われても、出かけてはなりません。『見よ、奥の部屋にいる』と言われても、信じてはなりません。

24:27稲妻が東から走り出て西まで輝くように、人の子の到来はそのようになるからです。

24:28死骸のあるところには、はげわしが集まります。81

24:29その日々の苦難のすぐ後、太陽は暗くなり、月は光を放たず、星は天から落ち、天の諸力は揺り動かされます。

24:30そのとき、人の子のしるしが天に現れます。そのとき、地上のすべての部族が胸を打って嘆き、人の子が力と大いなる栄光を帯びて、天の雲に乗って来るのを見ます。

24:31人の子は大きなラッパと共に、自分の天使たちを遣わします。天使たちは、人の子の選ばれた者たちを四方の風から、天の果てから果てまで集めます。

24:32いちじくの木からたとえを学びなさい。枝がもう柔らかくなって葉が出ると、夏が近いと分かります。

24:33同じように、あなたがたも、これらすべてを見たら、すぐ戸口にまで近づいていると知りなさい。

24:34確かに言っておきます。これらすべてが起こるまで、この世代は決して過ぎ去りません。82

24:35天と地は過ぎ去ります。しかし、私の言葉は決して過ぎ去りません。

24:36しかし、その日と時は、誰も知りません。天の天使たちも子も知らず、父だけがご存じです。

24:37ノアの時代のように、人の子の到来もそうなります。

24:38というのも、洪水の前の日々、ノアが箱舟に入るその日まで、人々は食べ、飲み、めとり、嫁がせていました。

24:39そして、洪水が来て皆をさらうまで、何も気づきませんでした。人の子の到来もそうなります。

24:40そのとき、二人の男が畑にいると、一人は連れて行かれ、一人は残されます。

24:41二人の女が臼をひいていると、一人は連れて行かれ、一人は残されます。

24:42ですから、目を覚ましていなさい。あなたがたの主が、どの日に来るか分からないからです。

24:43このことは知っておきなさい。家の主人は、夜のどの見張りの時に盗人が来るか知っていたなら、目を覚まして、家の壁を破らせなかったでしょう。

24:44ですから、あなたがたも備えていなさい。思いがけない時に、人の子が来るからです。

24:45主人が家の者たちの上に立て、時に応じて食べ物を与えさせる、忠実で賢い奴隷とは誰でしょうか。

24:46主人が帰って来て、そのようにしているところを見いだす、その奴隷は幸いです。

24:47確かに言っておきます。主人はその者を、自分の全財産の上に立てます。

24:48しかし、その悪い奴隷が『主人の帰りは遅い』と心の中で思い、

24:49仲間の奴隷たちを殴り始め、酒に酔う者たちと飲み食いするなら、

24:50その奴隷の主人は、思いもかけない日、知らない時に帰って来て、

24:51その者を真っ二つにし、偽善者たちと同じ分け前を与えます。そこでは泣き叫びと歯ぎしりがあるのです。

第25章

25:1そのとき、天の王国は、ともし火を持って花婿を迎えに出た十人の乙女にたとえられます。

25:2そのうち五人は愚かで、五人は賢い者でした。

25:3愚かな者たちは、ともし火を持っても、油を携えませんでした。

25:4賢い者たちは、ともし火と共に、容器に油を入れて携えました。

25:5花婿の到着が遅れたので、皆、眠気を催して眠り込んでしまいました。

25:6真夜中に叫び声がしました。『さあ、花婿だ。迎えに出なさい』。

25:7乙女たちは皆起きて、ともし火を整えました。

25:8愚かな者たちは賢い者たちに言いました。『油を少し分けてください。私たちのともし火が消えそうです』。

25:9賢い者たちは答えました。『私たちとあなたがたの分には足りないかもしれません。むしろ、売っている人のところへ行って、自分の分を買ってください』。

25:10彼女たちが買いに行っている間に、花婿が来ました。備えのできていた者たちは、花婿と共に婚礼の席に入り、戸が閉められました。

25:11後で、残りの乙女たちも来て言いました。『主よ、主よ、私たちに開けてください』。

25:12しかし花婿は答えました。『確かに言っておく。私はあなたがたを知らない』。

25:13ですから、目を覚ましていなさい。その日も時も、あなたがたは知らないからです。

25:14また、旅に出るある人が、自分の奴隷たちを呼び、財産を委ねたようなものです。

25:15一人には五タラントン、一人には二タラントン、一人には一タラントンと、それぞれの力に応じて与え、旅に出ました。

25:16五タラントンを受けた者は、すぐに出かけ、それを使って働き、さらに五タラントンをもうけました。

25:17同じように、二タラントンの者も、さらに二タラントンをもうけました。

25:18しかし、一タラントンを受けた者は、出かけて地面を掘り、主人のお金を隠しました。

25:19長い時が過ぎた後、その奴隷たちの主人が帰り、彼らと勘定を清算しました。

25:20五タラントンを受けた者は近づき、さらに五タラントンを差し出して言いました。『ご主人様、五タラントンをお預けになりました。ご覧ください。さらに五タラントンもうけました』。

25:21主人は言いました。『よくやった。良い、忠実な奴隷だ。わずかなものに忠実だった。多くのものを任せよう。主人の喜びに加わりなさい』。

25:22二タラントンの者も近づいて言いました。『ご主人様、二タラントンをお預けになりました。ご覧ください。さらに二タラントンもうけました』。

25:23主人は言いました。『よくやった。良い、忠実な奴隷だ。わずかなものに忠実だった。多くのものを任せよう。主人の喜びに加わりなさい』。

25:24一タラントンを受けた者も近づいて言いました。『ご主人様、あなたは厳しい方で、蒔かなかった所で刈り入れ、散らさなかった所から集める方だと知っていました。

25:25それで恐ろしくなり、出かけて、あなたのタラントンを地面に隠しました。ご覧ください。ここにあなたのものがあります』。

25:26主人は答えました。『悪い、怠け者の奴隷だ。私が蒔かなかった所で刈り入れ、散らさなかった所から集めると知っていたのか。

25:27それなら、私のお金を銀行業者に預けるべきだった。そうすれば、帰ったとき、私は利息と共に自分のものを受け取れたのだ。

25:28だから、その者から一タラントンを取り上げ、十タラントンを持つ者に渡しなさい。

25:29持っている者は皆、与えられて豊かになり、持っていない者は、持っているものまで取り上げられるのだ。

25:30この役に立たない奴隷を、外の闇に投げ出しなさい。そこでは泣き叫びと歯ぎしりがあるのだ』。

25:31人の子が、自分の栄光のうちに、すべての天使たちを伴って来るとき、栄光の王座に着きます。

25:32すべての民族がその前に集められ、人の子は、羊飼いが羊と山羊をより分けるように、人々をより分けます。

25:33羊を右に、山羊を左に置きます。

25:34そして王は右側の者たちに言います。『来なさい。私の父に祝福された者たち。世界の基が据えられたときから、あなたがたのために備えられた王国を受け継ぎなさい。

25:35あなたがたは、私が飢えていたときに食べさせ、渇いていたときに飲ませ、よそ者であったときに迎え入れ、

25:36裸であったときに着せ、病気であったときに世話をし、牢にいたときに訪ねてくれたからだ』。

25:37そのとき、正しい人々は答えます。『主よ、いつあなたが飢えているのを見て食べさせ、渇いているのを見て飲ませたでしょうか。

25:38いつあなたがよそ者であるのを見て迎え入れ、裸であるのを見て着せたでしょうか。

25:39いつあなたが病気であったり、牢にいたりするのを見て、訪ねたでしょうか』。

25:40王は答えます。『確かに言っておく。この最も小さい私の兄弟たちの一人にしたことは、私にしたのだ』。83

25:41それから、左側の者たちにも言います。『私から離れ去れ、呪われた者たち。悪魔とその天使たちのために備えられた永遠の火へ行け。

25:42あなたがたは、私が飢えていたときに食べさせず、渇いていたときに飲ませず、

25:43よそ者であったときに迎え入れず、裸であったときに着せず、病気のときや牢にいたときに世話をしなかったからだ』。

25:44そのとき、彼らも答えます。『主よ、いつあなたが飢えたり、渇いたり、よそ者であったり、裸であったり、病気であったり、牢にいたりするのを見て、お仕えしなかったでしょうか』。

25:45そのとき、王は答えます。『確かに言っておく。この最も小さい者たちの一人にしなかったことは、私にもしなかったのだ』。

25:46そして、これらの者は永遠の刑罰へ、正しい人々は永遠の命へと去って行きます」。84

第26章

26:1イエスはこれらの言葉をすべて語り終えると、弟子たちに言われた。

26:2「知っているとおり、二日後には過越祭が来て、人の子は十字架につけられるために引き渡されます」。

26:3そのころ、祭司長と民の長老たちが、カイアファという大祭司の屋敷に集まり、

26:4策を用いてイエスを捕らえ、殺す相談をした。

26:5しかし、「祭りの間はやめよう。民の中に騒ぎが起こらないように」と言っていた。

26:6イエスがベタニアの、重い皮膚病のシモンの家におられたとき、

26:7非常に高価な香油の入った雪花石膏の壺を持つ女が近づき、食卓に着いておられるイエスの頭に注ぎかけた。

26:8弟子たちはこれを見て憤り、「何のために、こんな無駄遣いをするのか。

26:9高く売って、貧しい人々に与えることができたのに」と言った。

26:10イエスはそれを知り、言われた。「なぜこの女を困らせるのですか。この人は私に、良いことをしてくれたのです。

26:11貧しい人々はいつもあなたがたと共にいますが、私はいつも共にいるのではありません。

26:12この人が私の体にこの香油を注いだのは、私を葬る備えのためです。

26:13確かに言っておきます。全世界のどこでこの福音が宣べ伝えられても、この人のしたことも、この人の記念として語られます」。

26:14そのとき、十二人の一人、イスカリオテのユダという者が祭司長たちのところへ行き、

26:15言った。「何をくれるつもりですか。そうすれば、私が彼をあなたがたに引き渡しましょう」。彼らは銀貨三十枚を量って渡した。

26:16それからユダは、イエスを引き渡す機会をうかがっていた。

26:17種なしパンの祭りの第一日、弟子たちはイエスに近づき、尋ねた。「過越の食事をなさるために、どこに用意することをお望みですか」。

26:18イエスは言われた。「都にいる、ある人のところへ行って、こう言いなさい。『先生は「私の時は近い。あなたのところで弟子たちと過越を祝う」とおっしゃっています』」。

26:19弟子たちはイエスに命じられたとおりにし、過越の用意をした。

26:20夕方になると、イエスは十二人の弟子と共に食卓に着かれた。

26:21食べているとき、言われた。「確かに言っておきます。あなたがたの一人が、私を引き渡します」。

26:22弟子たちは深く悲しみ、一人ずつ、「主よ、私ではないでしょうね」と尋ね始めた。

26:23イエスは答えられた。「私と一緒に鉢に手を浸した者が、私を引き渡します。

26:24人の子は、自分について書かれているとおりに去って行きます。しかし、あの人は災いです。人の子は、あの人を通して引き渡されるのです。その人は、生まれなかったほうがよかったのです」。

26:25イエスを引き渡そうとしていたユダが、「ラビ、私ではないでしょうね」と尋ねると、イエスは、「あなたがそう言いました」と答えられた。85

26:26一同が食べているとき、イエスはパンを取り、賛美の祈りを唱えて裂き、弟子たちに渡して言われた。「取って食べなさい。これは私の体です」。

26:27また、杯を取り、感謝の祈りを唱えて彼らに渡し、言われた。「皆、この杯から飲みなさい。

26:28これは、罪の赦しのため、多くの人のために流される、私の血、契約の血だからです。86

26:29言っておきます。私の父の王国であなたがたと共に新たに飲むその日まで、今から後、私はこのぶどうの実から造ったものを決して飲みません」。

26:30一同は賛美の歌を歌ってから、オリーブ山へ出かけた。

26:31そのときイエスは言われた。「今夜、あなたがたは皆、私につまずきます。『私は羊飼いを打つ。すると群れの羊は散らされる』と書いてあるからです。

26:32しかし、起こされた後、私はあなたがたに先立ってガリラヤへ行きます」。

26:33ペトロは答えた。「皆があなたにつまずいても、私は決してつまずきません」。

26:34イエスは言われた。「確かに言っておきます。今夜、鶏が鳴く前に、あなたは三度、私を知らないと言います」。

26:35ペトロは言った。「あなたと一緒に死ななければならなくても、決してあなたを知らないとは言いません」。弟子たちも皆、同じように言った。

26:36それからイエスは、彼らと共にゲツセマネという所に来て、弟子たちに言われた。「私が向こうへ行って祈る間、ここに座っていなさい」。

26:37ペトロとゼベダイの二人の息子を連れて行き、悲しみ、苦悶し始められた。

26:38そして言われた。「私の魂は、死ぬほど悲しんでいます。ここにとどまり、私と共に目を覚ましていなさい」。

26:39少し先へ進み、顔を地に伏せて祈られた。「私の父よ、できることなら、この杯を私から過ぎ去らせてください。しかし、私の望むようにではなく、あなたの望まれるように」。

26:40弟子たちのところへ戻ると、彼らは眠っていた。イエスはペトロに言われた。「あなたがたは、一時間さえ私と共に目を覚ましていられなかったのですか。

26:41試みに陥らないよう、目を覚まして祈りなさい。霊には意欲があっても、肉は弱いのです」。

26:42再び離れて行き、二度目に祈られた。「私の父よ、私が飲まない限り、これが過ぎ去ることができないのでしたら、あなたの御心が行われますように」。

26:43戻って来ると、弟子たちはまた眠っていた。まぶたが重くなっていたのである。

26:44イエスは彼らを残して再び離れ、同じ言葉を繰り返して、三度目に祈られた。

26:45それから弟子たちのところへ戻り、言われた。「まだ眠って休んでいるのですか。見なさい。時が近づき、人の子は罪人たちの手に引き渡されます。87

26:46起きなさい。行きましょう。見なさい。私を引き渡す者が近づいて来ました」。

26:47イエスがまだ話しておられると、十二人の一人ユダが来た。祭司長と民の長老たちから送られた大勢の群衆が、剣や棒を持って一緒に来ていた。

26:48イエスを引き渡す者は、あらかじめ彼らに合図を伝えていた。「私が口づけするのがその人だ。捕らえろ」。

26:49ユダはすぐにイエスに近づき、「ご挨拶します、ラビ」と言って、口づけした。

26:50イエスは言われた。「友よ、しに来たこと〔をしなさい〕」。すると人々は近寄り、イエスに手をかけて捕らえた。88

26:51そのとき、イエスと共にいた者の一人が手を伸ばし、剣を抜いて大祭司の奴隷に切りかかり、その耳を切り落とした。

26:52イエスは言われた。「剣を元の場所に戻しなさい。剣を取る者は皆、剣によって滅びるからです。

26:53私の父に願えば、今すぐ十二軍団より多くの天使を備えてくださるのに、それができないとでも思うのですか。

26:54しかしそれでは、このようにならなければならないと書かれた聖書が、どうして実現するでしょうか」。

26:55そのとき、イエスは群衆に言われた。「強盗に向かうように、剣や棒を持って私を捕らえに来たのですか。私は毎日、神殿に座って教えていたのに、あなたがたは捕らえませんでした。

26:56しかし、これらすべてが起こったのは、預言者たちの書が実現するためです」。そのとき、弟子たちは皆、イエスを置き去りにして逃げた。89

26:57イエスを捕らえた者たちは、大祭司カイアファのもとへ連れて行った。そこには、律法学者と長老たちが集まっていた。

26:58ペトロは遠く離れてイエスの後を追い、大祭司の屋敷の中庭まで来た。そして中に入り、成り行きを見ようと、役人たちと一緒に座っていた。

26:59祭司長たちと最高法院全体は、イエスを死に処するため、イエスに不利な偽証を探していた。

26:60多くの偽証人が来たのに、見つからなかった。最後に二人が来て、

26:61言った。「この男は、『私は神の聖所を壊し、三日で建てることができる』と言いました」。

26:62大祭司は立ち上がって尋ねた。「何も答えないのか。この者たちがお前に不利な証言をしているが、どうなのか」。

26:63しかしイエスは黙っておられた。大祭司は言った。「生ける神にかけて命じる。お前がキリスト、神の子なのか、我々に答えよ」。

26:64イエスは言われた。「あなたがそう言いました。しかし、言っておきます。今から後、あなたがたは、人の子が力ある方の右に座り、天の雲に乗って来るのを見ます」。90

26:65すると大祭司は衣を引き裂いて言った。「神を冒瀆した。これ以上、証人が何のために必要だ。今、冒瀆の言葉を聞いたではないか。

26:66どう思うか」。人々は、「死罪に値する」と答えた。

26:67それから、イエスの顔に唾を吐きかけ、拳で殴った。平手で打つ者たちもいて、

26:68言った。「キリストよ、預言してみろ。お前を打ったのは誰だ」。

26:69ペトロは外の中庭に座っていた。すると、一人の女奴隷が近づいて、「あなたも、ガリラヤ人イエスと一緒にいた」と言った。

26:70ペトロは皆の前で否み、「何を言っているのか分からない」と答えた。

26:71門のところへ出て行くと、別の女奴隷が彼を見て、そこにいる人々に、「この人は、ナザレ人イエスと一緒にいた」と言った。

26:72ペトロは再び否み、「その人を知らない」と誓った。

26:73しばらくして、そこに立っていた人々が近づき、ペトロに言った。「確かに、お前もあの仲間だ。言葉遣いで分かる」。

26:74するとペトロは、呪いの言葉を口にし、「その人を知らない」と誓い始めた。その直後、鶏が鳴いた。

26:75ペトロは、「鶏が鳴く前に、あなたは三度、私を知らないと言います」というイエスの言葉を思い出し、外へ出て、激しく泣いた。

第27章

27:1朝になると、すべての祭司長と民の長老たちは、イエスを死に処するために相談した。

27:2そしてイエスを縛って連れ出し、総督ピラトに引き渡した。

27:3イエスを引き渡したユダは、イエスが罪に定められたのを見ると後悔し、銀貨三十枚を祭司長と長老たちに返して、

27:4言った。「罪のない人の血を引き渡して、私は罪を犯した」。彼らは言った。「我々に何の関わりがある。自分で始末しろ」。

27:5ユダは銀貨を聖所に投げ込み、立ち去って、首をつった。

27:6祭司長たちは銀貨を拾い、「血の代価だから、神殿の金庫に入れてはならない」と言った。

27:7相談のうえ、その銀貨で陶工の畑を買い、よそ者たちの墓地にした。

27:8そのため、その畑は今日まで『血の畑』と呼ばれている。

27:9そのとき、預言者エレミヤを通して語られた言葉が実現した。「彼らは銀貨三十枚を取った。それは、イスラエルの子らのうちの者たちが値をつけた、その人の代価である。

27:10そして、それを陶工の畑の代金として渡した。主が私に命じられたとおりに」。91

27:11イエスは総督の前に立たれた。総督が、「お前がユダヤ人の王なのか」と尋ねると、イエスは、「あなたがそう言っています」と答えられた。

27:12しかし、祭司長と長老たちから訴えられても、何もお答えにならなかった。

27:13そこでピラトは言った。「聞こえないのか。こんなにも多くのことを、お前に不利に証言している」。

27:14しかし、イエスは一つの言葉に対してもお答えにならなかったので、総督は非常に驚いた。

27:15祭りのたびに、総督は群衆が望む囚人を一人釈放することを習慣にしていた。

27:16そのころ、イエス・バラバという名の、よく知られた囚人がいた。92

27:17人々が集まると、ピラトは尋ねた。「誰を釈放してほしいのか。イエス・バラバか、それとも、キリストと呼ばれるイエスか」。

27:18祭司長と長老たちが妬みからイエスを引き渡したことを、ピラトは知っていたのである。

27:19ピラトが裁判の席に着いていると、妻が使いを送って言った。「あの正しい人には関わらないでください。今日、あの人のために、夢でたいへん苦しみました」。

27:20しかし、祭司長と長老たちは群衆を説き伏せ、バラバを求め、イエスを殺させるよう仕向けた。

27:21総督は尋ねた。「二人のうち、誰を釈放してほしいのか」。人々は、「バラバだ」と答えた。

27:22ピラトは言った。「それなら、キリストと呼ばれるイエスはどうすればよいのか」。皆が、「十字架につけろ」と言った。

27:23ピラトは言った。「いったい、どんな悪事をしたというのか」。しかし人々は、「十字架につけろ」と、ますます叫んだ。

27:24ピラトは、何の役にも立たず、かえって騒ぎが起こり始めているのを見ると、水を取り、群衆の前で手を洗って言った。「この血について、私は潔白だ。お前たちで始末するがよい」。

27:25民は皆、答えた。「その血の責任は、我々と我々の子らに」。93

27:26そこでピラトは彼らのためにバラバを釈放し、イエスのほうは鞭打たせたうえで、十字架につけるために引き渡した。

27:27総督の兵士たちはイエスを総督官邸へ連れて行き、部隊全体をその周りに集めた。

27:28イエスの衣を脱がせ、緋色の外套を着せ、

27:29茨で冠を編んで頭に載せ、右手に葦を持たせた。そして前にひざまずき、「ご挨拶申し上げます、ユダヤ人の王様」とあざけった。

27:30また、唾を吐きかけ、葦を取って頭をたたいた。

27:31あざけった後、外套を脱がせて元の衣を着せ、十字架につけるために連れ出した。

27:32外へ出ると、シモンというキレネ人に出会い、無理にイエスの十字架を担がせた。

27:33一行はゴルゴタ、すなわち『頭蓋骨の場所』と呼ばれる所に来ると、

27:34イエスに、苦いものを混ぜたぶどう酒を飲み物として与えた。イエスは味を見たが、飲もうとはされなかった。94

27:35兵士たちはイエスを十字架につけると、くじを引いて衣を分け合い、

27:36そこに座って見張っていた。

27:37頭の上には、罪状を書いたものを掲げた。「これはユダヤ人の王イエスである」。

27:38そのとき、二人の強盗が、イエスと共に、一人は右、一人は左に十字架につけられた。

27:39通りかかった者たちは、頭を振りながらイエスをののしり、

27:40言った。「聖所を壊して三日で建てる者よ、自分を救ってみろ。神の子なら、十字架から下りて来い」。

27:41同じように、祭司長たちも律法学者や長老たちと共にあざけって言った。

27:42「ほかの者は救ったが、自分は救えない。イスラエルの王ではないか。今、十字架から下りて来るがよい。そうすれば、我々は彼を信じよう。

27:43神を頼みにしている。神が彼をお望みなら、今、救い出してくださるがよい。『私は神の子だ』と言ったのだから」。

27:44一緒に十字架につけられた強盗たちも、同じようにイエスを侮辱した。

27:45第六時から第九時まで、地全体が闇に覆われた。95

27:46第九時ごろ、イエスは大声で叫ばれた。「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」。これは、「私の神、私の神、なぜ私をお見捨てになったのですか」という意味である。

27:47そこに立っていた者のうち何人かは、これを聞いて、「この男はエリヤを呼んでいる」と言った。

27:48すぐにその一人が走り、海綿を取って酸っぱいぶどう酒を含ませ、葦に付けてイエスに飲ませようとした。

27:49ほかの者たちは言った。「待て。エリヤが彼を救いに来るかどうか、見ていよう」。

27:50イエスは再び大声で叫び、息を引き取られた。

27:51すると、聖所の垂れ幕が上から下まで真っ二つに裂け、地が揺れ、岩が裂け、

27:52墓が開き、眠りについていた多くの聖なる人々の体が起こされた。

27:53その人々は墓から出て、イエスが起こされた後に聖なる都に入り、多くの人に姿を現した。96

27:54百人隊長と、一緒にイエスを見張っていた者たちは、地震と起こったことを見てひどく恐れ、「本当に、この人は神の子だった」と言った。

27:55そこには、多くの女たちが遠くから見ていた。ガリラヤからイエスに従い、仕えてきた人々である。

27:56その中には、マグダラのマリア、ヤコブとヨセフの母マリア、ゼベダイの息子たちの母がいた。

27:57夕方になると、アリマタヤ出身のヨセフという金持ちが来た。この人もイエスの弟子となっていた。

27:58ヨセフはピラトに近づき、イエスの体を引き取りたいと願った。ピラトは渡すよう命じた。

27:59ヨセフは体を受け取り、清潔な亜麻布に包み、

27:60岩に掘った、自分の新しい墓に納めた。そして墓の入り口に大きな石を転がし、立ち去った。

27:61マグダラのマリアと、もう一人のマリアが、墓の向かいに座っていた。

27:62翌日、すなわち準備の日の次の日、祭司長とファリサイ派の人々はピラトのもとに集まり、

27:63言った。「閣下、あの惑わす者が生前、『三日後に私は起こされる』と言ったのを、思い出しました。

27:64ですから、三日目まで墓を厳重に守るよう命じてください。あの者の弟子たちが来て盗み出し、民に『死者の中から起こされた』と言うかもしれません。そうなれば、後の惑わしは初めより悪くなります」。

27:65ピラトは言った。「番兵を使え。行って、心得ているとおりに厳重に守れ」。97

27:66彼らは出かけ、石に封印し、番兵と共に墓を厳重に守った。

第28章

28:1安息日が過ぎ、週の初めの日が明け始めるころ、マグダラのマリアと、もう一人のマリアが、墓を見に来た。98

28:2すると、大きな地震が起こった。主の天使が天から降りて来て近づき、石を転がしてのけ、その上に座ったからである。

28:3その姿は稲妻のようで、衣は雪のように白く、

28:4見張りの者たちは、天使を恐れて震え、死人のようになった。

28:5天使は女たちに言った。「あなたがたは恐れてはなりません。十字架につけられたイエスを捜していることは分かっています。

28:6ここにはおられません。言われたとおり、起こされたのです。来て、横たわっておられた場所を見なさい。

28:7そして急いで行き、弟子たちに告げなさい。『イエスは死者の中から起こされました。見なさい。あなたがたに先立ってガリラヤへ行かれます。そこでその方に会います』。確かに、あなたがたに伝えました」。

28:8女たちは恐れと大きな喜びを抱いて急いで墓を離れ、弟子たちに知らせるために走った。

28:9するとイエスが彼女たちに出会い、「おはよう」と声をかけられた。彼女たちは近づいてその足を抱き、礼拝した。99

28:10イエスは言われた。「恐れてはなりません。行って、私の兄弟たちに、ガリラヤへ行くよう知らせなさい。そこで彼らは私に会います」。

28:11女たちが行く途中、番兵の何人かが都に戻り、起こったことをすべて祭司長たちに知らせた。

28:12祭司長たちは長老たちと集まって相談し、兵士たちに多額の銀貨を渡して、

28:13言った。「『あの者の弟子たちが夜に来て、我々が眠っている間にあの者を盗んで行った』と言え。

28:14このことが総督の耳に入っても、我々が説得し、お前たちに心配のないようにしてやる」。

28:15兵士たちはその銀貨を受け取り、教えられたとおりにした。この話は、今日までユダヤ人の間に言い広められている。

28:16十一人の弟子はガリラヤへ行き、イエスに指定されていた山に登った。

28:17イエスを見ると礼拝したが、ためらう者たちもいた。100

28:18イエスは近づいて語られた。「天と地のすべての権威が、私に与えられました。

28:19ですから、行って、すべての民族を弟子にしなさい。すなわち、父と子と聖霊の名へと、彼らに洗礼を授け、101

28:20私があなたがたに命じたことをすべて守るよう彼らに教えるのです。そして見なさい。私は、時代の終わりまで、いつの日も、あなたがたと共にいます」。

訳注

  1. 「系譜の記録」は biblos geneseōs。「起源の書」「誕生の記録」とも取り得る。直後の系譜を踏まえて訳したが、誕生物語を含む広い射程も排除しない。1:18の「誕生」と同じ語である。「キリスト」は「油を注がれた者」という称号。「子」はここでは子孫を含む。 ↩
  2. SBLGNTは1:7–8で「アサフ」を採る。王名として通例想定される「アサ」へ訂正せず、底本の形を保った。 ↩
  3. SBLGNTは「アモス」を採る。「アモン」に置き換えない。系譜は省略を伴う構成であり、本文の「もうけた」を、すべて例外なく直接の父子関係であるという説明に拡張しない。 ↩
  4. 「移住」は metoikesia。ここではバビロンへの強制移住、いわゆる捕囚を指す。1:11、12、17で同じ語を保つ。 ↩
  5. それまで反復された「AはBをもうけた」という能動形から、「イエスが生まれた」という受動形へ変わる。「このマリアから」の関係代名詞は女性単数で、ヨセフを先行詞としない。 ↩
  6. 「誕生」は genesis で、1:1の「系譜の記録」と同じ語を用い、受胎から命名までの次第を導く。「共に暮らす」は synerchomai で、夫婦関係を持つことを含む読みもある。「聖霊による」は、身ごもっていると分かった内容に含める読みと、語り手の説明とする読みがある。本訳は後者として文を分けた。 ↩
  7. 「イエス」と「救う」の結びつきは、ギリシア語の語呂合わせではなく、名前のセム語的背景による。本文自身が命名理由として救いを説明する。 ↩
  8. 原文は parthenos。「処女」と訳した。引用に存在するこの語を、別の旧約本文の語へ差し替えない。「神は私たちと共におられる」は原文自身の訳解であり、訳者の付加ではない。 ↩
  9. 原文の「知る」ginōskō は性的関係を表す婉曲表現で、本文では「性的な関係を持つ」と意味を訳した。「産むまで」は、その時点までを述べる。出産後の関係については、この接続表現だけから確定しない。 ↩
  10. 「占星術の学者たち」は magoi。星を解釈する東方の専門家としての文脈を訳した。本文は彼らを王とは呼ばず、人数も記していない。2:2、9の「昇る」は en tē anatolē で、「東で」という別解もある。 ↩
  11. 本文は「預言者たち」と複数で述べる。「ナザレ人と呼ばれる」に対応する単独の旧約引用を、ここでは特定しない。引用を導く hoti は預言の内容の要約を導くとも読め、引用符は特定の旧約の一文が存在するとの断定ではない。地名と他のセム語との語呂合わせを、確定した意味として本文に補わない。 ↩
  12. 「悔い改める」は、考えと生き方の向きを変えることを含む。「天の王国」は basileia tōn ouranōn で、天におられる神の王権・統治を含む。死後に行く場所だけを意味する訳語に限定しない。単に「王国」とある箇所、明示的な「神の王国」とも区別する。 ↩
  13. 「洗礼を授ける」は baptizō。水・聖霊・火を同じ動詞で結びつける表現を保った。火の意味は直後の裁きの比喩と関係するが、聖霊と火の関係について一つの神学的説明を本文に足さない。 ↩
  14. 「正しさ」は dikaiosynē。神の望みにかなうあり方を指し、倫理的行為と神との正しい関係を切り離さない。「満たす」は plēroō。3:15、5:17などで、要求を成就する意味を保った。1:22、2:15、2:17、2:23、4:14などの「実現する」も同じ動詞である。 ↩
  15. 4:15の「海」thalassa は、4:18の「湖」(2回)と同じ語である。4:13の「湖畔」parathalassios はその派生語。訳語の差から別の水域と断定しない。 ↩
  16. 「発作を起こす」は selēniazomai。語の形は月との関係を示すが、古代の呼称を現代の特定の診断と同一視せず、17:15で記される発作の様子を踏まえて訳した。悪霊への言及は、物語の記述として別に保つ。 ↩
  17. 「霊において貧しい」は ptōchoi tō pneumati。単なる無知、気弱さ、物質的貧困だけを指すとは断定しない。「自分の力で満ち足りているとはせず、神の前に乏しい者として立つ」という理解が可能だが、その説明は本文に織り込まなかった。 ↩
  18. 「律法や預言者」(7:12では「律法と預言者」)は聖書のまとまりを表す。plēroō を「満たす」と訳して、廃止との対比を残す。 ↩
  19. 「一点も一画も」は、小さな文字 iōta と文字の小さな突起 keraia を表す。 ↩
  20. 「役立たず」は音写された罵語 rhaka の意味訳。語源・語義の詳細は専門資料との照合を要し、ここでは確定した語源説明をしない。「愚か者」は mōros。「ゲヘナ」は geenna で、神の最終的な裁きの場所を表す呼称として音写する。「死者の国」hadēs とは区別する。SBLGNTには「理由もなく怒る」の「理由もなく」に当たる語はない。 ↩
  21. コドラントは小額の貨幣単位。細かな金銭換算よりも、最後のわずかな額まで払い終えるという表現に重点がある。 ↩
  22. 目や手を除く表現は、罪につまずく原因を断つための激しい誇張として読める。身体を損なう行為の実行を勧める訳者の指示ではない。18:8–9も同様。 ↩
  23. 「淫らな関係」は porneia。禁じられた性的関係を広く指し得る語で、「姦通」moicheia と完全に同じ語ではない。「姦通に陥らせることになる」は、使役の poiei と受動不定詞 moicheuthēnai を合わせた訳で、妻が自由に姦通を選ぶとの含意を追加しない。離縁によって姦通とされる関係へ置くという責任が、夫に向けられている。19:9でも例外句の範囲を一つの現代的制度へ固定しない。 ↩
  24. 5:37の「悪い者」の原語は、男性・中性いずれの属格とも取れる同形の語で、人格的な悪い者とも、抽象的な「悪」とも読める。6:13も同様。5:39の与格にも同じ形の重なりがあるが、本文では文脈から人を指すと取った。5:37の反復は、言葉を誓いで補強せず、肯定と否定を真実にするという文脈。 ↩
  25. ミリオンはローマの距離単位で、およそ一マイル。「無理に行かせる」は強制的な徴用を表す。本文の距離の倍加を残した。 ↩
  26. 「完全」は teleios。欠けのない、全き、という意味を持つ。直前の、敵にも向けられる愛という文脈を離れ、あらゆる能力における無欠性だけを意味するとはしない。 ↩
  27. 「正しい行い」は dikaiosynē で、5:20などの「正しさ」と同じ語。ここでは「行う」対象として訳した。 ↩
  28. 「必要な」は epiousios。語義の確定が難しく、「その日に必要な」「来る日のための」などの解釈がある。本訳は必要な糧を求める意味で訳し、明示された「今日」を保った。確実な語源解釈とはしない。 ↩
  29. 「負い目」は opheilēma で、負債の比喩を保った。6:12の「赦した」はSBLGNTの過去形 aphēkamen による。6:13には、比較版RPにある王国・力・栄光の頌栄句を加えない。「試み」は誘惑と試練の両方を含み得る。 ↩
  30. 「見苦しくする」は aphanizō。6:19–20の「損なう」と同じ動詞で、ここでは顔を損なう表現として訳した。続く「見える」phainomai と語の形で対をなすが、その対比を日本語の一語ずつで再現することは難しい。顔の汚し方や身体の変化は本文で特定しない。 ↩
  31. 「澄んでいる」は haplous。単一、分かれていないという基本的意味のほか、惜しみなさとの関連も考えられる。「悪い目」との対比は、貪欲や妬みとも関係し得る。視覚の比喩を残し、単に視力の良否へ限定しない。 ↩
  32. 原文は「自分の hēlikia に一ペキュスを加える」。hēlikia は年齢・寿命とも身長とも取れ、ペキュスは長さの単位。ここでは寿命を延ばす比喩と取ったが、「身長を一ペキュス伸ばす」という別解もある。 ↩
  33. SBLGNTの6:33は「まず王国と、その方の正しさを求めなさい」で、「王国」の直後に「神の」に当たる語はない。後続の「その方」は文脈上、父なる神を指すと取る。「その方」が「王国」と「正しさ」の両方にかかる読みも成り立つ。 ↩
  34. 「重い皮膚病」は lepra、その人は lepros。古代の病と儀礼的清浄の分類を、現代のハンセン病と一律に同定しない。「清める」という原文の語を、すべて「治す」に置き換えない。 ↩
  35. 「彼らへの証し」の autois は複数で、直前の「祭司」は単数。祭司たちを指す読みと、人々を広く指す読みなどがあり、本訳は代名詞のまま残した。 ↩
  36. pais は子ども、しもべなどを指し得る。ここでは百人隊長の家のしもべと取った。8:9の doulos は「奴隷」と訳して区別する。8:7は質問と取る可能性もあるが、ここでは治療を申し出る発言と読んだ。 ↩
  37. 「人の子」は ho huios tou anthrōpou。人間一般という意味の背景も持つが、イエスの自己言及として反復される呼称を保つ。受難と到来の言葉も、同じ呼称でつながる。 ↩
  38. sōzō は「救う」と「癒やす」の両方に用いられる。9:21–22は病からの回復の文脈だが、「信仰があなたを救った」という語の広がりを保った。病気の人の信仰不足を説明する一般論には広げない。 ↩
  39. 「熱心な者」は Kananaios がセム語の「熱心な者」に由来するという語源解釈に基づく意味訳。語源は専門資料との照合を要する。「カナン人」Chananaia(15:22)とは別の語。「イスカリオテ」の語源は本文に補わない。 ↩
  40. 「町々を回り終える」は原文の「町々を終える」の文脈的な訳。「人の子が来る」を、特定の歴史的出来事だけに確定する説明は加えない。16:28、24章と併せて検討すべき解釈上の難所。 ↩
  41. psychē は命、自己、魂などを指し得る。体との対比が明示される10:28では「魂」、10:39や16:25–26では失い、救う対象として「命」とした。別々の原語であるかのように扱わない。 ↩
  42. アサリオンは貨幣の単位。本文では雀二羽の値として挙げられる。専門資料による価値の換算はここでは行わない。 ↩
  43. 「剣」は直後の家庭内の対立と分裂につながる比喩。武力行使を命じる文として補足しない。26:52では、剣を取る行為への警告が語られる。 ↩
  44. 「最も小さい」は比較級 mikroteros の最上級的な用法と取った訳で、「より小さい者」という読みも成り立つ。 ↩
  45. biazetai は「暴力を受ける」という受動にも、「力強く進む」などの中動にも取れる。本訳は続く「暴力を振るう者たちが奪う」と結び、受動で訳した。「熱心な人々が獲得する」という肯定的読解もある。文法と文脈上、判断の分かれる箇所。 ↩
  46. SBLGNTは「知恵の業」erga を採る。「子どもたち」など別の読みへ置き換えない。知恵がその結果によって正しいと示される、という受動形を訳した。 ↩
  47. 「軛」は二頭の家畜などにかける道具で、ここでは教えと服従の比喩。「負いやすい」は chrēstos で、良い、親切な、役立つという意味の広がりを持つ。「苦労が一切なくなる」とは補わない。 ↩
  48. krisis は裁き、公正、正義の実現などを指す。12:18、20の引用内では「公正」とした。12:18、21の「諸民族」は、10:5、18などの「異邦人」と同じ ethnē で、引用の語調に合わせて訳した。12:18の「心」は psychē で、10:28などで「魂」、10:39などで「命」と訳した語と同じである。pais はここでは神が選んだ「僕」。同じ語でも8:6の家のしもべ、17:18の子どもとは文脈が異なる。 ↩
  49. 直前では、神の霊による解放の業が悪霊の力と非難されている。「聖霊に逆らう」を、どのような不安や疑問でも即座に該当するとの説明に広げない。本文の厳しい赦しの否定はそのまま保った。 ↩
  50. 引用の「ないように」は mēpote による難しい目的・結果の表現。目を閉じる人々の側の行為を残し、「見て、聞いて、立ち帰って癒やされるように」という肯定の目的へ言い換えない。後半の「私が癒やす」iasomai は一人称単数の未来直説法で、引用中の「私」の発言である。旧約の別本文との体系的照合は行っていない。 ↩
  51. サトンは粉などを量る容量単位。粉の中に隠されたパン種の働きが全体に及ぶ比喩。特定の現代容量を本文に換算して加えない。 ↩
  52. 14:24–27について。一スタディオンはおよそ185メートル。夜の第四の見張りは、夜を四つに区分した最後の時間帯で、およそ午前三時から夜明けまで。「私です」は egō eimi。自己確認として訳し、ここだけで特定の神名の訳と断定しない。 ↩
  53. 15:5–6の引用は、「親の援助に回るはずのものを供え物と宣言すれば、父を敬う義務から免れる」とする主張として訳した。「よい」に当たる独立した語はないが、文脈の許容を示すため補った。SBLGNTの6節は「父」であり、「母」を加えない。「父を敬わなくても〔よい〕」は、ou mē と未来直説法 timēsei を文脈上の許容として読んだ訳で、「その者は決して父を敬わない」という強い否定の断言とも読める。 ↩
  54. 15:26–27について。「小犬」は kynarion。指小形だが、差別的な対比がなくなると考えて穏当化しない。女は比喩の枠組みを受けつつ、食卓から落ちるものにあずかることを訴える。訳者は民族的な序列を支持する説明を加えない。 ↩
  55. 16:2後半–3の天候のしるしについての言葉は、SBLGNTが採用する本文として訳した。付属校異装置によれば、比較版WHはこの部分を二重括弧で示す。 ↩
  56. 「ペトロ」Petros と「岩」petra は語形と音が近く、本文では語を響き合わせている。「教会」は ekklēsia、集会・会衆を指す語で、ここでは共同体として訳した。現代の建物や特定教派だけを意味するものではない。「この岩」の指示対象に関する教派的結論は、本文へ補わない。「死者の国」は hadēs(ハデス)で、「ゲヘナ」と区別する。 ↩
  57. 「縛る」「解く」は、禁止・許可、共同体に関する判断などを含み得る表現。「天でも縛られたものとなる」は未来の動詞と完了受動分詞による形を残した。天の判断と地上の判断の前後関係について、この形だけから一つの制度論へ確定しない。18:18も同じ。 ↩
  58. 16:28の原文を直訳すると「人の子がその王国において来る」。本文の「その王国を伴って」は、王国・王権を伴う到来としての解釈を示す。領域・状態として「その王国において」と読むことも成り立つ。直後の変容との関係、復活・裁きとの関係は解釈が分かれるため、出来事を本文に同定して補わない。 ↩
  59. 「発作を起こす」は4:24と同じ selēniazomai。火や水に倒れ込むという、この節自身の記述を踏まえた意味訳であり、現代の特定の診断を原語の確定訳とするものではない。 ↩
  60. SBLGNTには17:21の節本文がない。番号を詰めず、20節から22節へ進む。20節の理由は「信仰の薄さ」oligopistia で、「不信仰」という別の読みへ変更しない。 ↩
  61. 二ドラクマは神殿に納める金額としての呼称。一スタテルは二人分に相当する。25–26節では、地上の王とその子らとの比較によって、子の立場と納税が論じられる。 ↩
  62. SBLGNTには18:11の節本文がない。10節の「彼らの天使たち」はそのまま訳し、ここから守護天使についての詳細な体系を付加しない。 ↩
  63. ekklēsia は16:18と同じ「教会」。18:17は共同体の関係・判断の文脈にある。「異邦人や徴税人」の扱いを、民族的憎悪や暴力の許可へ拡張しない。15節の「あなたに対して」はSBLGNT採用本文を訳した。 ↩
  64. hebdomēkontakis hepta は「七十七回」と「七十回の七倍」の両様に解される。本訳は七十七回とした。赦しの限界を計算するための厳密な上限とは読まない。 ↩
  65. タラントンとデナリオンは大きさが著しく異なる貨幣単位。通常の換算では一タラントンは約六千デナリオンに相当するため、一万タラントンと百デナリオンは極端に不釣り合いな額である。20:2の一日の賃金と合わせ、返済困難な巨額の赦しと、小さな借りへの非情さという対照を読む。現代円への換算は行わない。 ↩
  66. 「宦官」は eunouchos。身体的にそうである者、他者によって去勢された者、王国のためにその立場を選んだ者という三つの表現を保った。最後は結婚しない生き方を指す比喩と本訳では解した。身体を損なう行為の勧めとして訳者が支持するものではない。 ↩
  67. 19:9、17、29について。SBLGNTの19:17は「なぜ良いことについて私に尋ねるのか」である。比較版RPなどの「なぜ私を良いと言うのか」という読みへ置き換えない。19:9後半の離縁された女との結婚、19:29の「妻」は、SBLGNTの採用本文にあるため訳す。 ↩
  68. 「すべてが新しく生まれるとき」は palingenesia。ここでは人の子の王座と世界の更新に関係する時を指すと取った。個人の回心や再生だけに限定しない。「裁く」は統治・判断の意味も含み得る。 ↩
  69. 19:30、20:16の「先/後」と、20:8–14の「最初/最後」は同じ語の対で、格言とたとえを結びつける。日中の時刻を日の出から数える。第三時はおよそ午前九時、第六時は正午、第九時は午後三時、第十一時は午後五時。季節による変動があるため厳密な現代時刻ではない。 ↩
  70. 原文は「私が良いので、あなたの目は悪いのか」。主人の惜しみない善意と、それを妬む目の対照として訳した。6:22–23の目の比喩とも関連する。 ↩
  71. 「身代金」は lytron、解放のための代価。「多くの人に代わる」は anti pollōn。身代わり・交換の表現を残したが、誰に支払うのかなど、本文にない贖罪の仕組みは補わない。 ↩
  72. 21:2、7は雌ろばと子ろばの二頭を明示する。21:3後半の主語は持ち主と取ったが、主がろばたちをすぐ送り返すという読みもある。21:5の「ろばに乗って、…子ろばに乗って」は、接続詞 kai を説明的に読む訳。二つの前置詞句を「ろばに、そして子ろばに」と並列に取る読みも成り立つ。7節最後の原文「それらの上」は、直前の「衣」を指すと取った。イエスが二頭へ同時に乗ったという説明も、一頭しかいなかったという修正も加えない。 ↩
  73. 「ホサナ」は救いを願うセム語由来の叫びで、ここでは歓迎と賛美の声として用いられる。「ダビデの子に」向けた与格の形を保つ。 ↩
  74. 「聖句を納める小箱」は phylaktēria。身に着ける聖句の入った箱を指す。批判の焦点は、装具の存在そのものよりも、見せるために大きくするという行いに置かれている。 ↩
  75. SBLGNTには23:14の節本文がない。13節の次を15節とする。本章の攻撃的な修辞は物語の論争として訳し、当時または現在のユダヤ人すべての性質を述べるものへ一般化しない。 ↩
  76. 「公正」は krisis、「誠実さ」は pistis。後者は「信仰」とも訳せるが、ここでは律法の実践における信頼に足るあり方という意味を採った。「これら」は公正・憐れみ・誠実さ、「あれら」は十分の一の献納を指すと解した。 ↩
  77. SBLGNTは「バラキヤの子ゼカルヤ」と記す。他のゼカルヤへの同定によって父名を訂正しない。旧約の人物・殺害記事との関係は追加調査を要する。 ↩
  78. 「到来」は parousia。来ることだけでなく、到着してそこにいることも含む語。「時代の終わり」は synteleia tou aiōnos。必ずしも物理的な世界の消滅だけを意味する訳語に限定しない。 ↩
  79. 「読む者は悟りなさい」は原文にある呼びかけ。ダニエルへの言及も本文自身による。特定の人物、現代の国、年代に対応させる解釈は加えない。 ↩
  80. 前半は過去形による非現実の条件で、直訳すれば「もしその日々が短くされなかったなら、誰一人救われなかっただろう」。後半の「短くされます」は未来形。未来の苦難を語る文脈で、短縮なしには救いが成り立たないという意味を、本文では未来に向けた条件として訳した。短縮がすでに決まっていることを前提とする読みもあり、過去の出来事を報告する文とだけは取らない。 ↩
  81. aetos は鷲と訳されることが多いが、死骸に集まる文脈を踏まえ「はげわし」とした。動物学上の種の同定までは確定しない。 ↩
  82. 「この世代」は hē genea hautē。時間的な「世代」を保ち、解釈上の困難を解くために「民族」や「遠い未来の人々」と置き換えない。33節の「近づいている」の主語は原文では明示されず、本文でも特定の名詞を補っていない。 ↩
  83. 「この最も小さい私の兄弟たち」の範囲には、弟子たちを指す理解と、困窮する人々へ広く及ぶとする理解などがある。本訳は指示語と「私の兄弟」を保ち、対象範囲を本文中で狭めたり広げたりしない。 ↩
  84. 「永遠の」は刑罰と命の両方で同じ aiōnios。来るべき時代との関係もある語だが、ここでは両者の並行を保った。刑罰の具体的な様態や期間を、この注で体系化するものではない。 ↩
  85. 「あなたがそう言いました」は sy eipas。相手の言葉を受ける返答で、単純な否認ではない。ただし、そのすべての意味を無条件に承認する「そのとおりです」へ一律に言い換えない。26:64、27:11も対応する形を保つ。 ↩
  86. SBLGNTは「契約の血」で、「新しい」に当たる語をここに置かない。「罪の赦しのため」はマタイの本文にある。別の最後の晩餐の記事から語句を補わない。 ↩
  87. 「まだ眠って休んでいるのですか」は、原文の二つの動詞を問いとして読んだ訳。「これからは眠って休みなさい」という許可・皮肉の発言と読むこともできる。句読法と語調の判断が必要な箇所。 ↩
  88. 「しに来たこと〔をしなさい〕」は eph’ ho parei。直訳は「そのためにあなたがここにいること」で、文が省略的である。「何のために来たのか」という問いとする別解もある。「をしなさい」は本訳が補った述語であり、明示されたギリシア語の命令形ではない。 ↩
  89. 26:56前半はイエスの発言の続きとして訳したが、語り手の説明と読むこともできる。 ↩
  90. 「力ある方」は原文の「力」dynamis を神への敬意を込めた呼称として訳した。原文の「人の子」「右」「天の雲」の組み合わせを保った。この神への呼称という解釈は、専門資料による体系的照合を済ませた結論ではない。 ↩
  91. 27:9は原文自身が「エレミヤ」と記すため、別の預言者名へ変更しない。銀貨と陶工をめぐる旧約の文言の組み合わせは別途照合を要する。9節の「取った」elabon は形だけでは一人称単数にも三人称複数にもなるが、10節の明示的な三人称複数「彼らは渡した」と結び、本訳は「彼ら」を採った。一方、10節末の「主が私に命じられた」の「私に」moi は、一人称単数で読む手掛かりになる。「イスラエルの子らのうちの者たち」も、値をつけた者たちとして読んだ。統語に難しさがある。 ↩
  92. SBLGNTは27:16–17で「イエス・バラバ」を採用する。キリストと呼ばれるイエスと、同じ名の別の囚人との対比を保持し、「イエス」を削らない。 ↩
  93. 原文は「彼の血が、我々と我々の子らの上に」。血の責任を引き受ける言葉として訳した。これは物語中で「民」laos と呼ばれる人々の発言であり、後世のユダヤ人全体の罪責を訳者が断定するものではない。ローマ総督と兵士たちによる処刑という本文の叙述も保つ。直前までの「群衆」ochlos から、ここで「民」へ語が替わる。 ↩
  94. cholē は胆汁、苦いもの。特定の植物や薬品と確定せず、「苦いもの」と訳した。ここはぶどう酒 oinos、48節は酸っぱいぶどう酒 oxos であり、二つを区別する。 ↩
  95. 第六時はおよそ正午、第九時は午後三時。「地」gē は土地・地域とも大地全体とも取れるので、特定の範囲を本文に補わない。46節のセム語の叫びとその意味の説明は、原文の二段階を保持する。 ↩
  96. 「イエスが起こされた後」は、少なくとも「聖なる都に入った時」を限定する。墓から出た時点もその句に含まれるかは構文上の検討を要する。本訳は原文の叙述順を保ち、52節の出来事を別の時点へ移し替えない。 ↩
  97. 「番兵を使え」は echete を命令と読む訳で、「あなたがたには番兵がいる」という直説法にも取れる。番兵の所属をこの形だけから断定しない。 ↩
  98. 「安息日が過ぎ」は opse sabbatōn。「安息日の遅い時刻」とする可能性もあるが、続く「週の初めの日が明け始める」と結び、安息日後の明け方と読んだ。時刻の難しさを、別の福音書の記述を補うことで解決しない。 ↩
  99. chairete は通常の挨拶で、字義的には「喜びなさい」。朝の場面に即し「おはよう」としたが、原文に朝を表す名詞があるわけではない。26:49、27:29の同系の挨拶は、それぞれの場面の語調に即して訳した。 ↩
  100. distazō は疑う、ためらう。14:31と同じ動詞である。本文では「ためらう者たちもいた」と訳したが、礼拝した者とためらった者を完全に別集団と断定する構文ではない。復活後の弟子たちのためらいを削らない。 ↩
  101. 「名へと」は eis to onoma。「名」は単数で、父・子・聖霊の三つがその下に並ぶ。所属・関係への導入を示す方向を保った。「弟子にしなさい」が中心の命令で、洗礼を授けることと教えることは、この命令の実行を説明する分詞である。本文の「教えるのです」は新しい独立の命令ではなく、その実行の説明として訳した。単に国や民族を政治的に従わせる命令として説明しない。分詞も主命令を受けて命令の含みを帯びると読むことができる。本文の「すなわち」は、洗礼と教えを弟子にする実行の説明とする、本訳の構文理解を示すため補った。 ↩

底本・翻訳について

本文と訳注はAI(Codex)が作成した翻訳原稿です。Claude CodeによるAI校閲・再校閲の指摘を原文と照合し、本文・訳注を改訂しました。人間のギリシア語専門家による校閲は未実施です。

底本は Michael W. Holmes 編『The Greek New Testament: SBL Edition』(2010)、公式配布READMEの版表示 v1.2、Faithlife/SBLGNT のコミット c4d241a9c1c479a55b989ba35a4976c1d0b8052c にある Matt.txt です。本文のSHA-256は 4fa718540cbc6330591b233c99c68bbf52b85afc90016e4188efe5cd9719eeb0。Copyright 2010 Society of Biblical Literature and Logos Bible Software。CC BY 4.0 に基づき利用しています。

本日本語稿は、底本のギリシア語本文を読み、AIによって全篇の独立訳と訳注を作成したものです。変更は日本語への翻訳、章節による整形、校異参照記号の省略、独自訳注の追加です。全28章、底本の全1068節番号を保持し、底本にない17:21、18:11、23:14は補っていません。章節見出しと訳注は編集上のものです。原権利者がこの日本語稿を推奨、公認したことを意味せず、原資料も本稿も正確性などを保証するものではありません。

地の文は、マルコの原稿に合わせて現代日本語の常体(である調)としました。登場人物の発言は、それぞれの語調を基本とし、同じ発言内の不必要な常体・敬体の混在を整えています。引用された戒め、叱責、詰問では常体も用いています。日本語の文法に必要な主語・目的語は文脈から補っています。原文の省略された述語を解釈によって補った15:6、26:50では、補足を〔 〕で示しました。解釈に影響する補足や曖昧さは訳注に記しました。引用内の語句も、本書に存在するギリシア語から訳しています。人名・地名は基本的に日本語で慣用される表記を用い、1:7–8のアサフ、1:10のアモスなど、底本が別の人名の形を採る箇所はその違いを保っています。

既存の近現代語訳を今回閲覧・入力して翻訳の雛形にすることはしていません。ただし、AIの学習済み知識による既訳の影響を完全に排除できたとは主張しません。専門辞書・研究文献・別底本の旧約本文との体系的照合、人間の専門家による校閲、既訳との体系的表現類似監査は未実施です。Claude Codeによる全7群の原典対照AI校閲を受け、その指摘を固定したSBLGNT本文・校異装置と照合して採否を判断し、本文と訳注を修正しました。修正後の全28章・1068節・92注をClaude Codeへ7群に分けて再提出し、全群のAI再校閲報告を取得しました。再校閲の92件の指摘・改善候補も固定した本文・校異装置に照合して採否を判断し、本文と訳注に反映しました。確認範囲に関する報告はAIの自己申告で、人間の専門家による校閲とは区別します。今回の反映後の原稿をさらに外部AIへ再提出する校閲は行っていません。訳注は原文に基づく翻訳判断と限界を示すもので、研究上の難所の解決済み宣言ではありません。

古代の論争、処刑、奴隷制、民族や宗教集団に対する厳しい表現を含みます。翻訳はその支持を意味せず、特定集団全体への評価に一般化しません。